社会主義の誤解を解く の商品レビュー
社会主義。人間の生産活動を、私的自由や市場原理にゆだねることを拒絶する。正当な国家権力が公正な生産活動を指導する。生産手段の社会化を目指す。所有一般の廃止ではなく、ブルジョワ的な所有を廃止する。
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主に英仏独ソの社会主義運動の展開を論じた本。理論についてはあまり触れていない。 どの国でも、エリートによって上から作られた運動が挫折、妥協、分裂などを経て広がっていった様がよく理解できた。
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社会主義と聞くと日本人はあまり良いイメージを持たないけれど、その形態は多種多様。 グローバル経済の弊害による不平等が叫ばれるようになった昨今、資本主義に対する代替案の1つとして社会主義的な発想の見直しを、肯定するでも否定するでもなく客観的で中立的な立場で提案しようとしている。
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日本では,「冷戦終了によって社会主義は終った」みたいな誤解があるが,欧州などでは社会主義は健在。19世紀中ごろから20世紀中ごろまでの社会主義の歴史を見ながら,誤解を正し,誤解の原因を探っていく。 筆者は社会主義を「生産活動が私的なカネ儲けの手段と化さないよう、それを理性的な...
日本では,「冷戦終了によって社会主義は終った」みたいな誤解があるが,欧州などでは社会主義は健在。19世紀中ごろから20世紀中ごろまでの社会主義の歴史を見ながら,誤解を正し,誤解の原因を探っていく。 筆者は社会主義を「生産活動が私的なカネ儲けの手段と化さないよう、それを理性的な意思決定の下に統制すること」と説く。私有を制限するのは,あくまでも「生産手段」についてであって,「生活手段」ではないとこがポイント。ポルポト政権による惨劇などはここを誤解したために起こった。 純然たる資本主義は,実際に生産活動を行なう人間を脇役に追いやってしまう。これをマルクスは「疎外」と呼んだ。産業革命後の19世紀欧州では,非熟練の工場労働者がまさにそのような境遇に置かれていた。これを見かねて社会主義の思想が発展してゆく。 1830年代にイギリスやフランスで社会主義思想は生まれた。初期のものはマルクスやエンゲルスから「空想的」と批判されたが,本質的に異なっていたわけではない。別に私有財産制の否定を夢見る共産主義も出てきたが,こちらは物欲を不道徳として糾弾する非現実的なユートピア思想だった。 アメリカの奴隷制は悪名高いが,実はイギリスの工場労働者の方が不遇だったといえなくもない。奴隷は個人の財産であるから大事に使わなくてはならないが,労働者は市場で売り買いされる労働力にすぎない。資本家としては,酷使することが合理的であった。 しかしやはり労働者の貧窮は社会問題となり,資本家に主役を取って代わられていた旧支配層は,工場規制や公的な扶助を画策する。資本家としては国家の介入は好ましくない。そこで哀れな貧乏人たちに施しをしてやろうというチャリティのしくみが生まれ,広がっていく。 慈善・チャリティというと良いイメージしかなかったが,その起源は公権力の介入を防ぐための偽善っぽいとこにあったりするのね…。ともあれ,19世紀半ばには,資本家と労働者の対立関係が成立していくが,労働者も熟練・非熟練・移民など様々で,単一の「労働者階級」ではなかった。 実際の社会主義運動は,決して単純なイデオロギーに基づいて行なわれてきたものではない。現実は複雑で,様々な紆余曲折があった。普仏戦争後のパリコミューンは,マルクスが絶賛して「神話」が作られた。社会主義の大義のために自己を犠牲にした英雄たちという神話。 パリコミューンは,72日間パリを支配するが,結局は政府軍に殲滅されてしまう。初等教育も受けられなかった庶民たちが,学識エリートたちに乗せられて政府に抵抗し,最後には弾圧され殺されてしまったというのが実相に近い。その上偉大な英雄として長い間宣伝材料にされてしまう…。 19世紀後半,社会主義者たちは労働運動を指導したり,次第に影響力を増していく。世紀末までには,イギリスで帝国主義と社会主義的福祉政策が結びついた国の運営が確立してきた。本来の社会主義は,国境を否定するものだが,人々に受け入れられやすい愛国心の方がより現実を動かす。 社会民主主義と共産主義は,前者が穏健なフェビアン流の改良主義,後者が急進的なマルクス流の革命主義と思って大きな間違いではないようだ。そのマルクス主義的革命は,最初に労働問題が起こったイギリスでも,二月革命やパリコミューンのフランスでもなく,遅れたロシアで起こった。 日本はどうか。明治維新から間もない日本にも,社会主義思想が流入してきていたが,やはりその理解は薄っぺらだった。社会主義者も政府側も,社会主義の中身を深く知ることもなく,消化不良の舶来思想に振り回されていただけだった。当然のこと,一般の民衆にはもっとチンプンカンプン。 1922年に日本共産党が発足するが,これも良く事情がわからないので,コミンテルンという権威についておけば良いだろうという考えの産物だったようだ。そしてこういった経緯が敗戦を超えて尾を引き,日本の社会主義勢力は単なる抵抗勢力に堕してしまい,雲散霧消してしまった。 著者は,日本に社会主義が根づかなかったのは,それを消化するだけの土壌がなかったためだと言う。確かにそうかもしれない。ただ,思想というものはそれが生まれた国の環境と密接不可分だから,これは仕方のないことなんだろう。でも今から誤解を正すことはできるし,それは有意義だと思う。
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社会主義を定義から振り返り、それはどのような歴史的意味を果たしてきたか、そしてその変遷とは何であったか、現代も行き続ける左派政党についても書き上げた作品。だが、歴史の資料集みたいなところがあって、ちょっと切れ味が悪いところが難なので、☆3つ。
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経済格差、飢餓、貧困、失業… 今の世の中では、本当に多くの人々が苦しんでいるわけですが、 私たちはこんな世界を作るために懸命に生きているのでしょうか? 決してそうではありませんよね。 では、どうすれば根本的に解決することができるでしょうか? 寄付をしますか? ボランティアを...
経済格差、飢餓、貧困、失業… 今の世の中では、本当に多くの人々が苦しんでいるわけですが、 私たちはこんな世界を作るために懸命に生きているのでしょうか? 決してそうではありませんよね。 では、どうすれば根本的に解決することができるでしょうか? 寄付をしますか? ボランティアをしますか? NPO・NGOで働いたりしますか? そんな小手先の対応では何も解決できません。 では、どうするか? 社会構造や今の経済体制=資本主義を変えなければいけない。 それこそが根本的な解決方法。 変えるにはどうすればいいですか? 対抗軸=代わりとなる体制、思想が必要ですよね。 それが… 「社会主義」 だけど、社会主義に対する認識、知識が乏しいというのが現状。 ということで、それを歴史を振り返りながら解説しましょう。 というのが、この本の概要です。笑 決して、社会主義を全面的に押し出しているわけではなく、 バランスが大事だという話もしています。 実際、今の資本主義社会も完全なる資本主義社会ではないですからね。 詳しく知りたい方はご一読くださいな。 個人的には、自由主義思想かな~と思うのですが、 ま、それに関しては、また機会があるときに述べるとしまして… 本書を読んで感じたのが、 「言葉の意味の大切さ」。 トルストイの人生論に、こんな一文があります。 「『生命』という言葉はきわめて簡潔で、とても明快であるから、それが何を意味するかは、だれでも理解している。しかし、それが何を意味するかをだれもが理解しているからこそ、われわれは常にその言葉を、だれもが理解できるその意味で用いなければならない。」 普段、私たちは何気なく言葉を発していますが、 一つ一つの言葉の意味をきちんと理解して使用しているのでしょうか? 「社会主義」という言葉も然り。 今まで理解していたと思っていたこの言葉の意味が、本当は違っていたりして…泣 痛い目を見るのも、恥ずかしい思いをするのも自分自身。 読書するなり、人と話すなどして、言葉の意味をきちんと考えたいと思います。 んー、今までは、言葉の定義というのは、各人微妙に違う、と考えていたのですが、 その考え方は間違っているのでしょうか? それでは、本当に正しい言葉の意味というのは誰が知っているのでしょうか? 広辞苑に載っている意味が理解すべき意味なのでしょうか? はてさて、分からなくなってきたぞ…笑 例えば、「知り合い」「友達」「親友」という3つの言葉がありますが、 皆さんが理解している上記3つの言葉の意味は何でしょう? 全員が全員一緒なわけはないですよね? そういった言葉も正しく理解しなくてはいけないということなのか? それとも、共通認識しておくべき言葉とそうでない言葉があるということなのか? http://ameblo.jp/mizuki-nishida/ より抜粋
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「社会主義」という言葉が日本において(そしてアメリカでも)与える漠然たるイメージ、それはひとことでいうと「だめなもの」というイメージだが、それは誤解であるというのが本書のテーマ。とても面白く読めた。 そもそも、ソシアルであるとはどういうことか、という根源的な意味から議論し、その...
「社会主義」という言葉が日本において(そしてアメリカでも)与える漠然たるイメージ、それはひとことでいうと「だめなもの」というイメージだが、それは誤解であるというのが本書のテーマ。とても面白く読めた。 そもそも、ソシアルであるとはどういうことか、という根源的な意味から議論し、その理念と歴史的な変遷を細かく解説していく。社会主義も共産主義も、社会民主主義もその時、その場所において異なる文脈で異なる使われ方をする。一意的なユニバーサルな「社会主義」という平たんな理解をすると、歴史をうまく理解できない。またそれは「今の目」で歴史を評定する、コモンな誤謬の土壌になる。 マルクスの考えた「社会主義」、そして共産主義の解説。それが現実世界でどのような作用を与えたかというリアルな説明。それが後の神話となって「どのように説明されていたか」という誤謬の指摘(例えば、フランス二月革命におけるマルクス)が次々と指摘される。正直、文章と構成がやや煩雑でついていくのは素人の僕には大変だったけど、集中して読めば面白いものであった。ドイツ、フランス、イギリス、そしてロシアにおける「社会主義」をめぐる歴史のクールでリアルな分析と単一的な神話的な見方への批判は厳しい。平坦な二元論で社会主義や「赤」を断罪するアメリカ、そしてその自由市場主義経済に著者は批判的である。ソシアルな価値を認めているのだ、かといって既存の日本共産党と社会民主党にはさらに批判的で「トンチンカン」である、と一刀両断である。著者はソシアルという概念が今の世の中でどのように用いられるべきかに注目しており、そこに党派性や政治が感じられないのが(例えその言葉が厳しいものであったとしても)潔いものに(僕には)感じられる。
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