歌集 てんとろり の商品レビュー
笹井宏之の歌集の二冊目を続けて味わった。また付箋だらけになった。刺激されて読んでいる最中に自分の歌も詠んでしまい、なかなか前に進まなかった。しかし溜息が出るほど素敵やわ、ほんま。 かなしみが冬のひなたにおいてある世界にひとり目覚めてしまう 笹井宏之 みずとゆきどけみずであうき...
笹井宏之の歌集の二冊目を続けて味わった。また付箋だらけになった。刺激されて読んでいる最中に自分の歌も詠んでしまい、なかなか前に進まなかった。しかし溜息が出るほど素敵やわ、ほんま。 かなしみが冬のひなたにおいてある世界にひとり目覚めてしまう 笹井宏之 みずとゆきどけみずであうきさらぎの、きさらぎうさぎとぶ交差点 笹井宏之
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『ひとさらい』に続く第二歌集。こちらもとってもとっても素敵でした。 胸がキューっとするのにこころがあったかくなるような、いつまでも哀しくも優しいこの世界に浸っていたい思いでした。 笹井宏之さんの本に出会えたことに感謝です。まことさん、おすすめ下さりありがとうございました! 以下...
『ひとさらい』に続く第二歌集。こちらもとってもとっても素敵でした。 胸がキューっとするのにこころがあったかくなるような、いつまでも哀しくも優しいこの世界に浸っていたい思いでした。 笹井宏之さんの本に出会えたことに感謝です。まことさん、おすすめ下さりありがとうございました! 以下、こころに響いた歌です。 ○大人には見えないものを渡されてひとり、優しいバス停に立つ ○ほしのふるおとを録音しました、と庭師がもってくるフロッピー ○本棚に戻されたなら本としてあらゆるゆびを待つのでしょうね ○本当は誰かにきいてほしかった悲鳴をハンカチにつつみこむ ○切らないでおいたたくあんくるしそう ほんらいのすがたじゃないものね ○かなしみにふれているのにあたたかい わたしもう壊れているのかも ○きんいろのきりん あなたの平原で私がふれた唯一のもの ○千年の眠りののちに語られる世界がやさしくあるための嘘
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書肆侃侃房に笹井宏之短歌賞の募集があるのを見て、笹井宏之とはどういった短歌を詠む人なのかと気になって読み始めました。 初めに第二歌集を手にしたのは間違いだったのかもしれないと思いました。歌人の背景を知って読む短歌が、純粋な鑑賞と言えるのか。読み終わった今でも少し後悔しています。 ...
書肆侃侃房に笹井宏之短歌賞の募集があるのを見て、笹井宏之とはどういった短歌を詠む人なのかと気になって読み始めました。 初めに第二歌集を手にしたのは間違いだったのかもしれないと思いました。歌人の背景を知って読む短歌が、純粋な鑑賞と言えるのか。読み終わった今でも少し後悔しています。 今度から歌集を買うときは第一歌集からにしようと思います。 それはそれとして、肌に触れるような短歌がとても多く、現代短歌の中でも裸に近いような感覚で読むことができました。 生ぬるい人間の肌が、鮮明に蘇ります。まさに生というか。 力強く生きているということではなく、本当に、ただそこに在る、生きているのです。夏の太陽のように輝きすぎる生命でもなく、冬の月のように寂しいわけでもなく、本当に心地よい温度で、湿度で読むことができる短歌ばかりでした。 等身大というのはこういうことを言うのだと思います。笹井宏之さんと会ったことがある訳ではないから、本当の等身大は知らないけれど。 決められた音の数の中で精一杯生きる、たまにはみ出して、足りなくて。そういうものがあるからなのか。 なんにせよ私はこの歌集に出会えてよかったです。 そして第一歌集を読んでしまったとき、もう二度とこの方の新しい短歌を鑑賞することができないであろうことが悲しいです。
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笹井宏之さんの第一歌集『ひとさらい』に続く第二歌集。 すごくすごくよかったです。好きな歌に付箋を付けながら読んでいったら付箋だらけです。 美しいことばの海にさらわれたかのようでした。 ことばの使い方のセンスがなんていいのだろうと思いました。 お父様の筒井孝司さんが序文で「私に...
笹井宏之さんの第一歌集『ひとさらい』に続く第二歌集。 すごくすごくよかったです。好きな歌に付箋を付けながら読んでいったら付箋だらけです。 美しいことばの海にさらわれたかのようでした。 ことばの使い方のセンスがなんていいのだろうと思いました。 お父様の筒井孝司さんが序文で「私には彼の短歌に内在している音が聴こえてきます。キラッとしたガラスの砕けるような研ぎ澄まされた韻が、またあるときはふわっと温かく包み込んでくれるようなやわらかな響きが伝わってきます。彼の短歌の原点は音楽なのでしょう」とおっしゃっています。 好きな歌がたくさんありすぎて、どれを載せようかと迷いに迷った歌を以下に。 ○はじまりのことばがゆびのあいだからひとひらの雪のように落ちた ○バースデイカードをひらくひとときに向日葵畑から風が吹く ○風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける ○きんいろのきりん あなたの平原で私がふれた唯一のもの ○いつかきっとただしく生きて菜の花の和え物などをいただきましょう ○だまし絵に騙されあっていましたね でたらめにうつくしかった日々 ○あなたはもうピアニカケース こんこんといつまでも空色のねむりを ○かなしみが冬のひなたにおいてある世界にひとり目覚めてしまう ○かなしみにふれているのにあたたかい わたしもう壊れているのかも ○雨の日のあなたはとてもやわらかく刃物が役に立ちそうにない ○ゆびさきのきれいなひとにふれられて名前をなくす花びらがある ○思い出がしおれてしまいそうなときあなたが貸してくれた霧吹き ○耳元であなたがすこし終わるときいっせいに降りだす星の雨 ○つきあかりを鞄にいれてしまいます こんなにもこんなにもひとりで ○ふれられたときなにかをうばわれる ここちよいここちよいおはなし ○さようならが機能をしなくなりました あなたが雪であったばかりに
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一様に屈折をする声、言葉、ひかり わたしはゆめをみるみず . 作者自身ではない何か(動物でもモノでもなんでも)を主語にする歌はスタンダードで、そのうしろにいる作者の顔を探っていくのが短歌を読む上での楽しみでもあるが、笹井の歌がこわいのは、笹井自身が、その何かにほぼ"...
一様に屈折をする声、言葉、ひかり わたしはゆめをみるみず . 作者自身ではない何か(動物でもモノでもなんでも)を主語にする歌はスタンダードで、そのうしろにいる作者の顔を探っていくのが短歌を読む上での楽しみでもあるが、笹井の歌がこわいのは、笹井自身が、その何かにほぼ"なっている"ような、あらゆる事象に近づきすぎてそれらと一体化してるような印象を与えるところだと思う。 . さあここであなたは海になりなさい 鞄は持っていてあげるから 手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒 今夜から月がふたつになるような気がしませんか 気がしませんか いつからかあなたが虹でTシャツで椅子でついには私なんです . 笹井宏之の作る歌たちは、作者の経歴が歌に影響、共鳴する最たる例だと思う。このメルヘンチックな世界観が、笹井自身と絡み合って、のしかかってくる。 . からだじゅうすきまだらけのひとなので風の鳴るのがとてもたのしい つめきりが浅く砂浜に刺さっていてこの悲しみには勝てないと思った あなたがあなたであるということの悲しみの、ひたすら餅をついている夜 れんとげん畑でれんとげんを摘む真夏ひとりきりの老詩人 千年の眠りののちに語られる世界がやさしくあるための嘘
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短い歌にやるせなさと祈りのような、多くのイメージが内包されててとてもびっくりする。現代短歌を初めて手にとったけど、息が詰まるほど瑞々しく、卵の殻みたいに割れば容易にヒビが入るほどのかたさの閉じた世界を感じます
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なんと素晴らしい一冊。 加藤治郎氏のあとがきを読んで、笹井宏之さんのことがすごく分ったように思う。 加藤氏が笹井さんに最初に出会ったのは2006年3月11日。 第四回歌葉新人賞の賞状を笹井さんに渡しに博多のホテルに行ったとき。 そのときの賞品が歌集で、加藤氏と笹井さんが「ひとさ...
なんと素晴らしい一冊。 加藤治郎氏のあとがきを読んで、笹井宏之さんのことがすごく分ったように思う。 加藤氏が笹井さんに最初に出会ったのは2006年3月11日。 第四回歌葉新人賞の賞状を笹井さんに渡しに博多のホテルに行ったとき。 そのときの賞品が歌集で、加藤氏と笹井さんが「ひとさらい」の制作を始めることに。 そして「ひとさらい」が2008年1月に刊行。 さらに「ひとさらい」を語る会が2008年5月24日にひらかれ、ゲストを招待する際、笹井さんの希望で「えーえんとくちから」の解説を書かれている穂村弘さんの希望を伝えると穂村さんも快諾したという。 二次会もあり午後11時まで続いた、たいそう盛り上がった会だったようです。 たましいのやどらなかったことばにもきちんとおとむらいをだしてやる さよならが機能をしなくなりました あなたが雪であったばかりに この歌を送稿して2週間ほどして笹井さんはこの世をさった・・ この本は笹井さんが残した「ひとさらい」の後の歌を、周りの人の協力を得て、作り上げたもの。 その思いがものすごく詰まった一冊になっています。 この本に収録されている歌はどれもよくって、なかなか選ぶことが出来ないぐらい。 でも一番ゾクッとしたのが、 風。そしてあなたがねむる数万の夜へ わたしはシーツをかける この一冊に巡り会えたこと、本当に感謝です。 ありがとうございました、地球っこさん。 これからもよろしくお願いいたします。
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ひとつひとつの歌が、とても印象的で、読み終わるのに、日にちがかかりました。 紹介したい、好きな歌が、沢山あり、好きな歌全部は、選べませんでした。 、、、好きな歌 霊園にただ一度だけ鳴らされた無名作曲家のファンファーレ ともだちを一匹抱いて夕焼けに消えてしまいそうな私のう...
ひとつひとつの歌が、とても印象的で、読み終わるのに、日にちがかかりました。 紹介したい、好きな歌が、沢山あり、好きな歌全部は、選べませんでした。 、、、好きな歌 霊園にただ一度だけ鳴らされた無名作曲家のファンファーレ ともだちを一匹抱いて夕焼けに消えてしまいそうな私のうで 本当は誰かにきいてほしかった悲鳴をハンカチにつつみこむ 告白の途中で炎上してしまうことはわかっていたけれど、した 奪われてゆくのでしょうね 時とともに強い拙いまばゆいちから うつくしいみずのこぼれる左目と遠くの森を見つめる右目 そのゆびが火であることに気づかずに世界をひとつ失くしましたね からだじゅうすきまだらけのひとなので風の鳴るのがとてもたのしい 気のふれたひとの笑顔がこの世界最後の島であるということ 冬を越すことのできない花たちへおゆかけている おゆ あたたかい 人殺しにも幸せの木琴がかすかに鳴り響きますように 愛としかいいようのないものをこぼし夢の川原を去ってゆく鹿 あるときはあなたの声で低く低くふるえるだけの声帯だった 私から風を盗んでゆくなんて 草原らしくない ゆるせない かなしみにふれているのにあたたかい わたしもう壊れているのかも 千の空洞が私にあることを千のひかりでお知らせします 鳥取に鳥を求めるひとなどをほんとうは愛していたかった 手品師のくちに孔雀をおしこんで泣きました ええ、泣きましたとも 虹がないことに気づいた空がまたいちからやりなおすとのことです ぼろぎれにくるまれている猫の目をわたしの目だとおもう、一瞬 空のおおよそ半分ほどを占めているひかりの犬のうすい肉球 木の間より漏れくる光 祖父はさう、 このやうに笑ふひとであった だんだん濃くなってゆく犬を抱く 悲しみすぎてしまったために ひろゆき、と平仮名めきて呼ぶときの祖母の瞳のいつくしき黒 、、、ここまで読んでくださいました皆様、 ありがとうございました、、、 。。。この歌集は、地球っこさんの、レビューを読んで、知りました。地球っこさん、ありがとうございました!。。。 ※ 夜中に、読み返すと、涙が、あふれて、とまらない……。26歳の若さで、突然旅立った、作者の心情を思うと。なぜ…!ひたすら哀しい。素晴らしい作品を、世に遺してくださった事に、感謝いたします。 御冥福を、こころから、お祈りします。 りまの
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行間が丁度よくて、しんどくならない早さで読み進められた。詩は体験したことと何か重なりがあったときに よく心に残るのだけれど、この歌集は、リズムや響きが美しく言葉の新しい捉え方が、爽やかで、くらい言葉も何故か輝いて聞こえた。陰鬱な言葉はなく、優しい響きが残る歌集だった
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●天からのみずに名前をつけている 羽化をしたばかりの妖精は ●私からもっとも遠い駅として初恋の日のあなたはわらう ●うつくしいみずのこぼれる左目と遠くの森を見つめる右目 ●ひらがなであったおとこが夕立とともに漢字に戻りはじめる ●気のふれたひとの笑顔がこの世界最後の島であるという...
●天からのみずに名前をつけている 羽化をしたばかりの妖精は ●私からもっとも遠い駅として初恋の日のあなたはわらう ●うつくしいみずのこぼれる左目と遠くの森を見つめる右目 ●ひらがなであったおとこが夕立とともに漢字に戻りはじめる ●気のふれたひとの笑顔がこの世界最後の島であるということ ●本棚の奥に小さな目があってむこうの窓に虹が出ている
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