光の指で触れよ の商品レビュー
ちょうどこの本を読む前に、白石一文の「この胸に深く突き刺さった矢を抜け」を読んでおり、それと比べてみて、この本の「小説らしい良さ」を感じた。この本の主人公である家族の冒険を描いたらしい一作目は読んでいないのだが、その知識がなくてもずいぶん面白く読めた。 強い絆で結ばれて信頼関係...
ちょうどこの本を読む前に、白石一文の「この胸に深く突き刺さった矢を抜け」を読んでおり、それと比べてみて、この本の「小説らしい良さ」を感じた。この本の主人公である家族の冒険を描いたらしい一作目は読んでいないのだが、その知識がなくてもずいぶん面白く読めた。 強い絆で結ばれて信頼関係にあるはずの夫婦でも、こうやってどちらかが嵐に巻き込まれるみたいに恋をしてしまったりすることはあると思う。恋だけじゃない、抗えない力が働いて、どこかに行ってしまう感じは、よくわかる。そういう気持ちをコントロールすることもできるし、できないこともあるということも、たしかにそうだと思う。そういう人物の描き方が素晴らしく、妻であるアユミにも夫である林太郎にも、「そうだよねえ」と思ってしまった。 心の中の深い声を聞かないと、私たちは自分の人生を歩むことができない。軌道修正するときも、じっと、自分自身の深いところにある何かを見つめて、聞きとらないといけない。 アユミが幼少期のトラウマを受け止め方はありきたりなようにも感じたが、これが癒しのパターンとしては一般的であるので、仕方ないのかなと思う。 息子である森介の成長と初恋も美しく描かれていた。 そして、パーマカルチャーについては私も興味があって本を買ったくらいだし、家庭菜園もやっていたので(失敗だらけだったが)、土に触れることで生命を感じる、何かに導かれるような気がするという感覚はよくわかる。ヨーロッパのコミューンも早速ネットで検索してしまった。機会があったらぜひ行きたい。チャクラを開く性技もすごかったが、こういう体験ができることは現実にはまあないと思うので、小説の中で感心したりした。 それにしても、私が生活している欧州では、妻がこんな風に子供を連れて出奔するなど論外で(しかも国外)、夫は子供連れ去りで妻を訴えるレベルの話である。こんな風に妻が子供を連れて姿を消したらEU内でも指名手配だ。しかも、日本からビザなしでオランダ、フランス、スコットランドに滞在するのは違法である(たぶん観光ビザは3ヶ月)。シェンゲン条約内の欧州であれば、パスポートコントロールもなく移動は可能だが、駅とかでは警察にIDを見せろと言われることもある。なので、私だったら子供を連れていきなり国外に行くなんて絶対にしない。 そう言う意味でも、小説世界は純粋に主人公たちの人間としての成長を感じられていいものだなと思った。
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前作からの森介の成長。明日子との恋。 なんだか、自分を省みるような、自分の子どもの成長を疑似体験したような、不思議な気持ち。 巻末の角田光代さんの解説がぴったり。私も一番、豪雪の停電のパートが印象に残った。 ちょうどそのあたりを読んでいる時に、トンガの海底火山噴火の影響で、...
前作からの森介の成長。明日子との恋。 なんだか、自分を省みるような、自分の子どもの成長を疑似体験したような、不思議な気持ち。 巻末の角田光代さんの解説がぴったり。私も一番、豪雪の停電のパートが印象に残った。 ちょうどそのあたりを読んでいる時に、トンガの海底火山噴火の影響で、津波警報が日本中を覆った。 久しぶりの緊張。津波と、豪雪と停電。 東日本大地震のころ、大雪の山形の自動車教習所にいて、丸一日ぐらい停電だったことを思い出した。寒さを凌ぐのは毛布にくるまるしかない。ろうそくの火の中で黙々と食べた教習の特典の米沢牛か何かのブランド牛(学生を釣るためのブランド牛だった)。自動ドアが、自動で開かない切なさ。翻って、電気が通った時の、自動ドアが自動で開くことの新鮮さと喜び。 この物語のどうこうはあまりなくて、池澤夏樹の本を読むと、作中のアユミがそうだったように、自分の中の色んな記憶が喚起される。と同時に、池澤の本を通じて、「こんなあり方や世界や考え方があるよ」と、知らない世界を旅しているような気持ちになる。コロナの世の中の気軽だけど貴重な移動手段。 そういう世界や考え方に触れた上で、時差もなく引き戻った現実で、私は今後の生き方や身の振り方に大いに迷う。途方に暮れる。 そしていつのまにか眠りこけ、何も変わらない明日がまた始まる。
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要するに、正直すぎる夫の不倫と家族の在り方の話であまり好きではなかった。アユミの思考は日本人に近いと思った。行動は大胆だけど。文章も独特でいわゆる日本の小説のような書き方じゃないと思う。私はスピリチュアルを信じているし、ナチュラリストのような生活もすごいなと思っているけど、行動しようとは思っていない。私から遠いところにあるお話なんだなと思った。
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素晴らしい新世界に続く物語。登場人物たちが非常に魅力的だったのでまたその世界観に浸れて率直に嬉しい。村上春樹であればきっかけとしての恋愛はなく、ある日前触れもなく女房が出て行った、という始まりになるだろうなと思った。前作は人と自然、今作は人と人にフォーカスした内容。扱う題材は微妙...
素晴らしい新世界に続く物語。登場人物たちが非常に魅力的だったのでまたその世界観に浸れて率直に嬉しい。村上春樹であればきっかけとしての恋愛はなく、ある日前触れもなく女房が出て行った、という始まりになるだろうなと思った。前作は人と自然、今作は人と人にフォーカスした内容。扱う題材は微妙に違うがメッセージは似ているかな。ちょうど金、金といった価値観に縛られ気味だった今の時期に読むことができて幸運だった。
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小説としての出来は普通かもしれないが、自分にとっては小説というものを超えて様々なことへの示唆に満ちた作品。新たに知ること、もともと自分の中にぼんやりとあったもの、自分の周囲にあったが気がつかなかったもの。今読んだことは偶然か必然か。
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久しぶりに一気に読み終わった。 読みやすさと、登場人物それぞれに共感を覚えた。ヨーロッパ、アジア、日本と文化、国境を越える設定も私のスケール感とリンクする。 パートナーの意味、家族、自分の生きる道との兼ね合い、大事にしたいこと、農業、自然エネルギーの問題など、池澤らしいスケールと...
久しぶりに一気に読み終わった。 読みやすさと、登場人物それぞれに共感を覚えた。ヨーロッパ、アジア、日本と文化、国境を越える設定も私のスケール感とリンクする。 パートナーの意味、家族、自分の生きる道との兼ね合い、大事にしたいこと、農業、自然エネルギーの問題など、池澤らしいスケールと地平がよかった。 よい小説だと思う。 でも、光の指、とはなんだったのか、、読み終わってしばらくたっても、今でも考えているが。。
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「力ではなく、しなやかさ。 ぶつかるのではなく、立ちはだかるものの中を素通りして 向こう側に抜けるような、そんな自由。」 今読み返しても、そうありたいと思う引用。 また 『お金に頼らず生きていく。 大量生産・消費に疑問符を突きつける。それも○だと思う。 「え?不可能でしょ...
「力ではなく、しなやかさ。 ぶつかるのではなく、立ちはだかるものの中を素通りして 向こう側に抜けるような、そんな自由。」 今読み返しても、そうありたいと思う引用。 また 『お金に頼らず生きていく。 大量生産・消費に疑問符を突きつける。それも○だと思う。 「え?不可能でしょ」という意見も○だと思う。 要は、「これも○だしあれも○」 色んな考え方や生き方が広く受け入れらたら、 そしてそれを受け入れられる社会の基盤があれば、もっとクリエイティブで平和な社会になるんじゃないかなー』 って当時の私は書いていた。 5年後。社会はそうなっているかな? 少なくとも私は自分の意志の元に人生を選択できている事にバンザイ!
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個人的には,高校生の息子が小岩井農場に旅行(デート?)に行く章に惹かれてしまった。なんだか,うらやましかった。
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林太郎からアユミ視点。アユミも美緒も変なめんどくさい女なので、一つ減点。しかし、コミュニティーの有り様は胸に迫る。彼らしい淡々とした描写なのになぜ、「迫る」という感想になるのだろうか。
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とてもためになった本です。 これは「すばらしき新世界」の続篇です。 私はそれを読んでませんが特に問題はありませんでした。 夫の浮気により一時別離することになった夫婦は、それをきっかけにこれまでの生活を見直し、その不安、不満な点を解消するために、もっと別の良いやり方、新しい生き方はないのかと模索します。色々な要素が出てきます。例えば、(自家)風力発電、パーマカルチャー、レイキ、コミュニティ(同じ方向性をもつ人で集まり、自分の目標達成を目指す場所)、シュタイナー教育など。そして、お金に依存する生活から脱し、本当に必要なものを自給自足する、そういう生活を目指す試みが描かれています。 今はやりのシンプルライフを目指す試みとも近いと思いますし、持続可能というのもキーワードですね。今の自分の生活に生きづらさを感じていて、それをどうにかしたいと思ってる場合には、この本にはヒントになるものがあるかもしれません。私も就活しているこのときに読むことが出来たのは幸運でした。
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