はじめての宗教論(左巻) の商品レビュー
カトリック教会の腐敗に抗議したルターは免罪符を焼き捨てた、と我々は世界史で学ぶから、何となくカトリックは旧弊で頑迷で、プロテスタントは清新で科学の進歩にも対応した、と思っている。そんな史観は多分半分くらいあたっていて、プロテスタント神学を構築したシュライエルマッハーは19世紀、科...
カトリック教会の腐敗に抗議したルターは免罪符を焼き捨てた、と我々は世界史で学ぶから、何となくカトリックは旧弊で頑迷で、プロテスタントは清新で科学の進歩にも対応した、と思っている。そんな史観は多分半分くらいあたっていて、プロテスタント神学を構築したシュライエルマッハーは19世紀、科学とヒューマニズムの力で目覚めてしまった欧州の人々に対し、宗教の本質は直観と感情である、と説き、後には絶対依存の感情である、とした。神は空の上にはいないかもしれないが、信じるあなたの心の中にある、として近代人の世界観に迎合したわけだ。 この左巻には『ナショナリズムと神学』という副題がついている。今では普通の国民国家も国民意識も、オリンピックでニッポンガンバレと応援する感情も、近代の副産物であって、古代と中世を振り返れば決して普遍的ではない。そしてナショナリズムはシュライエルマッハーの自由主義神学に源流があるという。佐藤優はそこに神のくびきから解放され、無邪気に人間の力を過信した近代人の姿を見、それが第一次世界大戦に行き着いたのだと批判する。 そして20世紀のバルト。神は見えない世界にいる、人間である我々は神について無責任なおしゃべりをしてはいけないという教えは復古的で、特に無宗教の比率の高い日本人には受け入れ難いかもしれない。しかし大事なポイントは、佐藤優は見えない世界を信じている(たぶん)ということ。9ヶ月前の右巻を思い起こせば、近代知の下で人間万能を信じる我々の世界観も、神に対して決して奢らなかった中世人の世界観も、どちらが優位ということはなく相対的ということだった。我々には科学の力があるから救世主イエスを産み出した古代人より優秀である、という命題は成り立たない。神学者たちの知的レベルに追いつけなかったとしても、そこに気づいただけでも本書を読んだ価値があったのだと思った。
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近代という啓蒙主義の時代、宗教(キリスト教)はかつての力を失ったかに見える。しかし地面に降り注いだ雨が地面に吸い込まれて地下水脈として蓄えられるようにキリスト教も天上から人間の心の中への「神の場の転換」というパラダイムシフトにより依然強い影響力を持つ。ナショナリズムやナチスの思想...
近代という啓蒙主義の時代、宗教(キリスト教)はかつての力を失ったかに見える。しかし地面に降り注いだ雨が地面に吸い込まれて地下水脈として蓄えられるようにキリスト教も天上から人間の心の中への「神の場の転換」というパラダイムシフトにより依然強い影響力を持つ。ナショナリズムやナチスの思想的背景に自由主義的神学が関わっていた。近代という現代社会を理解するにはキリスト教の理解が欠かせない。
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一応キリスト教系の大学(院)を出ている人間なのだが,大学内に神学部というのがあるのが,どうにも理解できなかった。 すなわち,神学とは学問なのだろうか,どのように学問を構成するのだろうか,ということについて,全く無知なのである。 この本,上下巻じゃなくて右左巻(うかん・さかん?み...
一応キリスト教系の大学(院)を出ている人間なのだが,大学内に神学部というのがあるのが,どうにも理解できなかった。 すなわち,神学とは学問なのだろうか,どのように学問を構成するのだろうか,ということについて,全く無知なのである。 この本,上下巻じゃなくて右左巻(うかん・さかん?みぎまき・ひだりまき?)という分け方も面白いのだが,そんな私が初めて知った神学の本というわけです。キリスト教の狭義の中で,どのように論理構成を作っていくかという学問があり得るのだなぁ,と納得。 仕事柄,哲学や思想関係の本も読んだりするのだけど,引用するのは体外西洋の人間である。そんな彼らの「意見・主張」の背後にある信条レベルの系譜がわかる,と言う意味では神学についてもある程度の教養がいるなぁと思ったような次第。 文体が時折,急に断定口調になったりするのは,講義・講演をもとにテキスト化したからだろうと思われる。 なので,お話を聞いているような感じになるが,それが嫌じゃなければ大変読みやすい本です。
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神学入門書。左巻は近代自由主義神学、現代に生きるキリスト教の話。難解な神学書を現代人にも分かるようにかみ砕いて解説している。文体はきわめて明快だが、内容に厚みがあって一度では理解しきれない。キリスト教世界理解の一助になるだけでなく、ホンモノの学問の世界に触れることができる一冊であ...
神学入門書。左巻は近代自由主義神学、現代に生きるキリスト教の話。難解な神学書を現代人にも分かるようにかみ砕いて解説している。文体はきわめて明快だが、内容に厚みがあって一度では理解しきれない。キリスト教世界理解の一助になるだけでなく、ホンモノの学問の世界に触れることができる一冊である。高校生のときに読んでいたら今とは違う進路を歩んでいたかもしれないなぁ。/同著者の本で「神学部とは何か」がある。こちらは神学部を志望とする人が参考として読めばいい本だと思う。
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