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もういちど村上春樹にご用心 の商品レビュー

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22件のお客様レビュー

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2011/11/25

村上春樹さんに対してはうまく言葉にできない感じをずっと持っている。その文章は大好きだ。もう生理的快感といっていいくらいに。読んでいると陶然とする。筆者もしばしば語っているように「私に向かって私のために書かれたのではないか」と思わせるものがある。 なのに。これまで読んだ彼の小説で...

村上春樹さんに対してはうまく言葉にできない感じをずっと持っている。その文章は大好きだ。もう生理的快感といっていいくらいに。読んでいると陶然とする。筆者もしばしば語っているように「私に向かって私のために書かれたのではないか」と思わせるものがある。 なのに。これまで読んだ彼の小説で心からいいと思ったのは「ノルウェイの森」「風の歌を聴け」の二作だけ。おそらくコアなハルキストにとってこの二作は村上春樹の本質ではないと見なされているだろう。でも「羊をめぐる冒険」が読み通せなかったのを皮切りに、読めば読むほどつのる違和感。その世界がわからない。 他の作家だったらきっとあっさり「守備範囲じゃないや」とか「エッセイの方が面白いよね」とか言ってすませていると思う。ところがこと村上春樹に関してはこれが言えない。 おそらくその理由は二つ。一つは「本好き」を自認するならば「村上春樹がわからん」とは言いにくいこと。彼をどう評価するかが一つの立場表明になったりしてるのに「読めませんでした」なんて言えない! 更に困ったことに、繰り返すけど文章は大好きなのである。エッセイは、軽いのもそうでないのも、もうみんな大好きだ。文体も彼の考え方も熱烈支持!と言っていい。「遠い太鼓」なんか何遍読んだかわからない。どこらへんのページに何が書いてあるか覚えているくらいだ。「村上朝日堂」シリーズも繰り返し繰り返し飴玉のように味わっている。 これが第二の理由。それだけ好きな文章をなぜ読めないのか。深く混乱してしまう。だから「1Q84」にも手が出ない。怖くて。前の「ご用心」を読み、これも読み、まだ答は出ない。 本書の中では「『父』からの離脱の方位」と題されたものがとても面白かった。以下、いつもの通り抜粋。 「『父』とは世界の意味の担保者のことである」 「その世界で起きていることは(善きにつけ悪しきにつけ)何かが専一的に『マニピュレイト』しているという信憑を持つ社会集団はその事実によって『父権性社会』である。どれほど善意であっても、弱者や非迫害者に同情的であっても、『この世の悪はマニュピレイターが操作している』という枠組みを採用する社会理論は『父権性イデオロギー』である」 「なぜ、私たちは『父』を要請するのか?それは、私たちが『世界には秩序の制定者などいない』という真実に容易には耐えることができないからである」 「(カミュの言葉の引用として)私が関心を持っているのは、人間はどのようにふるまうべきか知ることです。もっと厳密に言えば、神も理性も信じずに、人がなお何ごとかをなしうるとしたら、それはどのようにしてかを知ることです」 「システム抜きで人間はやり遂げることができるか。ふるまい方を指示するマニュアルも教典も存在しない世界でも、人は人としてふるまうことができるか。もし、それができるのだとしたら、何が人の行動の規矩となるのか」 「ほとんどの人はこれからどうするかを決めるとき、あるいはすでに何かをしてしまった後にその理由を説明するために、『父』を呼び出す。それは必ずしも『父』の指導や保護や弁疏を期待してではない。むしろ多くの場合、『父』の抑圧的で教化的な『暴力』によって『私は今あるような人間になった』という説明をもたらすものとして『父』は呼び出されるのである。『父』の教化によって、あるいは教化の放棄によって、私は今あるような人間になった。そういう話型で私たちのほとんどは自分の今を説明する。それは弱い人間にとってある種の救いである」 「私が今あるような人間になったことについて、私は誰にもその責任を求めない。そう断言できる人間が出てくるまで、『父の支配』は終わらない」 オマケ。著者と柴田元幸さんの対談で「紛争世代のキーワードは『威張る』だ」とあって、笑いながら納得。

Posted byブクログ

2010/12/11

村上春樹の魅力がもっと近くにやってくる本。 だからわたしはこんなに夢中になっていたのか、と思うような的を得た内容です。 壁と卵のスピーチや、それぞれの作品の一部分が抜き出されていて、そうそれイイよねって思いながら読める。 なにより内田樹と村上春樹が好きな人にはたまらないです。

Posted byブクログ