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もういちど村上春樹にご用心 の商品レビュー

3.8

22件のお客様レビュー

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2013/04/09

内田樹による村上春樹論の第二弾。 第一弾でまだリーダブルなものに加えて、1Q84やエルサレムスピーチへのコメントや柴田元幸との対談が収載されています。 「なぜ村上春樹は日本のみならず世界的に読まれているのか?」という疑問を柱にして、時にはいつものレヴィナス先生を引用しながら展開さ...

内田樹による村上春樹論の第二弾。 第一弾でまだリーダブルなものに加えて、1Q84やエルサレムスピーチへのコメントや柴田元幸との対談が収載されています。 「なぜ村上春樹は日本のみならず世界的に読まれているのか?」という疑問を柱にして、時にはいつものレヴィナス先生を引用しながら展開される話に、うんうん納得してしまいます。 「俺はわかってるぜ」というような批評家のような語り口ではなく、「村上春樹のいちファン」として飲み会で話しているような感覚なのでいやらしくなく、好感が持てます。 またしばらく村上春樹にどっぷりつかりたくなりました。

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2013/03/13

愛とリスペクトに溢れた書評集。いわゆる文学評論ではないので、斎藤美奈子が揶揄したような村上文学解読謎解き集みたいなノリではない。まぁ、しかし、内田樹は多才だわ。

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2012/10/03

内田樹のブログに繋がるきっかけとなったのは、彼が春樹についてコメントしていたから。単純に好きというだけでない、独特の理論が展開される。

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2012/06/10

村上春樹を語るとき やっぱり内田春樹の視点はすばらしい。 いちいち納得、うなずきつつ、読み進めます。 村上春樹を読んでいて私の感じたもの (悔しい事に語彙が足りなくて上手く言葉に出来ない)を 的確に表現してくれます。 わかる・わからないの大前提の上に 認める・認めないがあり、好...

村上春樹を語るとき やっぱり内田春樹の視点はすばらしい。 いちいち納得、うなずきつつ、読み進めます。 村上春樹を読んでいて私の感じたもの (悔しい事に語彙が足りなくて上手く言葉に出来ない)を 的確に表現してくれます。 わかる・わからないの大前提の上に 認める・認めないがあり、好き・嫌いがあるのだろうな。 するめみたいです。 おもしろいです。

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2012/03/29

 既刊の『村上春樹にご用心』『邪悪なものの鎮め方』と重複する文章も多い。良心的な著者は、まえがきできちんとそのことを断っている。それらの文章をあらかじめチェックして、飛ばし読みしようとしたが、気が付いたら最初から最後まで全部読んでしまう。やはり、内田センセイの文章は旨い。美味しい...

 既刊の『村上春樹にご用心』『邪悪なものの鎮め方』と重複する文章も多い。良心的な著者は、まえがきできちんとそのことを断っている。それらの文章をあらかじめチェックして、飛ばし読みしようとしたが、気が付いたら最初から最後まで全部読んでしまう。やはり、内田センセイの文章は旨い。美味しい料理は、何度でも食べられる。  そういえば、この本の中に「食欲をそそる批評」という一文がちゃんと入っていて、「ある書物の全体を<謎>を蔵したテクストであるとみなすような読み方」と定義している。村上春樹の小説は、読めば読むほどに謎が深まってくる仕掛けに満ちている。それを著者は様々な角度から、ひとりのファンという謙虚なスタンスで読み解いていく。  司馬遼太郎や太宰治との比較は、目から鱗の鋭い分析だ。村上春樹が世界性を持つのはなぜかという深い問いがこの書物には伏流しているが、「父の不在」「欠如感」という指摘に肯かされる。「村上春樹の小説には激しく欠けているものがある」と早い時期に指摘していた文芸批評家の加藤典洋を、著者は高く評価しているが、謎に満ちた村上春樹の物語を深く楽しく味わうためにも、この二人の批評には目が離せない。  食欲をそそる批評とは、「もう一度、作品を読み直してみよう」と思わせてくれる批評でもある。村上春樹の作品を読み返しながら、新作を待つことにしよう。

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2011/07/07

全編最新版かと思ったら、前回「ご用心」+αってことなんですね。なるほど。 これはこれでいいと思うけど、ちょっと拍子抜けしてしまったです。 まえがきで内田さん自身もそのことを書かれております。 1Q84読み終わってない身なんで、ネタバレ的なところはどうしようか迷いましたが、全...

全編最新版かと思ったら、前回「ご用心」+αってことなんですね。なるほど。 これはこれでいいと思うけど、ちょっと拍子抜けしてしまったです。 まえがきで内田さん自身もそのことを書かれております。 1Q84読み終わってない身なんで、ネタバレ的なところはどうしようか迷いましたが、全編読みました。 エルサレム賞スピーチは最初読んだときから琴線に触れ続けていたけど、内田さんの考察に触れてますます心に響きました。

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2011/06/15

冒頭の内田樹氏の核心をついている文。「村上春樹の物語構造の一つは、ある危機的状況に立ち至った主人公が、自己の中に眠っている潜在的なポテンシャルを開発し、一気に自分の殻を破って、ブレークスルーを遂げ、それによって生き残り、自分の周囲のささやかなセカイを守りぬくもの、物語の枠組みが揺...

冒頭の内田樹氏の核心をついている文。「村上春樹の物語構造の一つは、ある危機的状況に立ち至った主人公が、自己の中に眠っている潜在的なポテンシャルを開発し、一気に自分の殻を破って、ブレークスルーを遂げ、それによって生き残り、自分の周囲のささやかなセカイを守りぬくもの、物語の枠組みが揺るぎなくしっかりしているので、細部の書き込みが官能的と言えるほどに細密になる。枠組みがしっかりしているから、ディテールにはどのような安らぎも許される。構造が神話的にソリッドなので、登場人物の性格付けやふるまいはどれほど放埓でも物語が破綻しない。」 村上春樹 スピーチ抜粋 「今日、皆さんにお伝えしたいことは、たった一つしかありません。それは私たちは国籍も人種も宗教も超えた個としての人間だということです。そして、私たちはみな『システム』と呼ばれる堅牢な壁の前に立っている脆い卵です。どうみても勝ち目はありません。壁はあまりに高く強固で、冷たい。もし、私たちにわずかなりとも勝利の希望があるとしたら、それは自分自身と他者たちの命の完全な代替不能性を信じること、命と命を繋げるときに感じる暖かさを信じることのうちにしか見出せないでしょう。」 批評する人間は、「そこにある未知の要素」にひきつけられ、同時に「そこにある既知の要素」にも感応する

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2011/04/04

 村上春樹論の中で最も腑に落ちる解釈・仮説がまとめてある本。 父なる存在の不在。聖なる天蓋。最後の審判の策定者がいない物語がその特徴であるという。村上春樹文学が世界文学たりえたのは、この特徴故にというのはかなり説得力がある。「システム」という無限を前にしても尚途方にくれることなく...

 村上春樹論の中で最も腑に落ちる解釈・仮説がまとめてある本。 父なる存在の不在。聖なる天蓋。最後の審判の策定者がいない物語がその特徴であるという。村上春樹文学が世界文学たりえたのは、この特徴故にというのはかなり説得力がある。「システム」という無限を前にしても尚途方にくれることなくどう生きていくのかという根源的かつ究極的な問いへと収斂されていく物語は、普遍的・原型的構造をもつため、国境を越えて多くの人に受け入れられているのだ。文明のあるレベルの発展に伴って、村上春樹文学が受け入れられるようになっていくという言説が取りざたされるが、逆なのだ。春樹の作品に触れることによって、まだ経験したことがなかった感覚を知り、過去の自分の経験と照会することで、これは自分のことだと共感するのだ。(あるいは錯覚するのだ。)  そういう意味で、春樹の作品とオウム真理教は紙一重であるという指摘の妥当性が強化されることになるのだろう。

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2011/03/20

各読者に解釈が委ねられる部分が多い小説などを、一義に解説するというのは無粋だと思うので、私は本来好まない。ただ、内田樹さんの書籍を読んだことがなく読んでみたかったので、まず手に入ったこの本を読んだ。 過去にどこかに掲載された短評を切り貼りしてできたものなので、歯ごたえはあまりなか...

各読者に解釈が委ねられる部分が多い小説などを、一義に解説するというのは無粋だと思うので、私は本来好まない。ただ、内田樹さんの書籍を読んだことがなく読んでみたかったので、まず手に入ったこの本を読んだ。 過去にどこかに掲載された短評を切り貼りしてできたものなので、歯ごたえはあまりなかったが、各論的確で、エッセイとして楽しめた。 『日常性と非日常性が気づかないうちに架橋される、その技巧の妙に作家の才能は発揮される。村上春樹はその技術において天才である。 現実的な小説を書く人はたくさんいる。奇想天外な小説を書く人もたくさんいる。しかし、現実的でかつ奇想天外な小説を書く人はまれである。その中でも村上春樹の才能は突出しているといってよいと思う。』ですって。 そうですよ、その通りなんですよ。うまいこと言いやがって、だからやっぱり無粋でイヤなんですよ。

Posted byブクログ

2011/02/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私は、この本を内田樹先生の最終講義を聴き終わった後、梅田での会合までの待ち時間に紀伊国屋梅田本店で購入しました。本人から多きなパスをもらって、単純にすぐにでも講義(読書)を聴きたいと思ったからです。 私は、まっすぐに見上げる視線・態度でファンレターを書くファンです。って、最後まで伝わってきました。まー大抵のファンレターなら“見上げる視線”で「好きです!」って書いてあるものですよね。ですが、「好きです!」だけではファンレターにならないのではないかと思います。なので、そこに著者の技量が関わるわけです。どうすりあわせて、文学を読みとくか。この本を手に取り暫しその技量に酔いしれれば、あなたも村上春樹ファンになってしまうかもしれません。だから、私は“要”ご用心!と念を押してこの一冊をお薦めします。 私は、一読目で付箋を貼るのですが、この本は約40カ所に付箋をするはめになりました。ここから取捨選択しても、八割方はMOLESKINEノートブックに書き写すということをしました。。。(楽しいですよ!!笑)そこから一文ってとっても難しいのですが、一文だけ紹介します。 僕たちの世界には理由もない壮絶な暴力や邪悪なものがたしかに存在する。そういうものに僕たちはほんとうになにげなく角を曲がったとたんに出くわしたりする。それがもたらす被害を最小化するためにも、日常生活の細部で決して手を抜いてはいけないんです。アイロンをきちんとかける。鉛筆を尖らせて削る。適切な塩加減でスパゲッティをゆでる。そういった気配りは少しも表層的なことではなく、生きる上での根本に関わることなんです。                p222 ー村上春樹の労働哲学ー より 正直、今日の夕食の際ぎこちなくなってしまいそうです。笑 ですが、今日、角をまがったところで邪悪なものに出くわす可能性が十分あるのではないかと私は思わずにはいられません。そして、その対策として自分ができることは日常生活の細部、つまり、些細なことでしかないとも思います。ですので、この一文にはゾクっとしました。そういう視点を“意識して”もういちど村上文学にあたったら、もうすこし読み解けるのではないかと思いました。これは私にとっては大きな収穫です。 読み終わった後、“読めていないのではないか”と思う類の本にもう一度あたる際、自らの時間的な変化の他に材料が得られることは嬉しいですね。

Posted byブクログ