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若年者就業の経済学 の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2018/11/15

経済学と統計分析の専門家による、若年者就業に関する研究書。極めて、科学的、学術的に書かれており、記述が正確で説得力がある。統計分析手法が専門的なため、分析手法や計算式について理解できないところが多かった。印象的な記述を記す。 「若年期が職業能力の開花にとって大事な時期であること...

経済学と統計分析の専門家による、若年者就業に関する研究書。極めて、科学的、学術的に書かれており、記述が正確で説得力がある。統計分析手法が専門的なため、分析手法や計算式について理解できないところが多かった。印象的な記述を記す。 「若年期が職業能力の開花にとって大事な時期であることを考えると、ニートの期間が将来の稼得能力を低下させる可能性が高い。しかも、比較的低所得の家庭の出身者や不登校経験者がニート状態に陥りやすいことがわかっている」 「中卒及び高卒では、卒業年の失業率が高かった世代ほど、少なくともその後12年にわたって、実質年収が低水準となることが判明した。卒業年の失業率が1ポイント高くなると、中学・高校卒のグループでは、その後12年以上にわたって実質年収は5~7%程度持続的に低くなる」 「一度フリーターになった者は低所得に甘んじる傾向があり、近年ではフリーター状態から脱し難くなっている。そのことはさらに結婚年齢や出産年齢の高まりにつながっている」 「企業が自社内での人材育成を重視する場合には、企業内で形成されるスキルのうちの少なくない部分が、他企業では通用しにくい「企業特殊性」の高いものとなる。自社独自の機械を使って生産している企業では、労働者にとって、その機械に習熟する機会はその企業でしか得られないし、たとえ習熟したとしても、そうしたスキルは他企業に移った場合には通用しない。広く使われている機械設備であっても、ラインの組み方は企業間で大いに異なるし、それぞれの機械のクセも違う。自社内の各部署で誰が意思決定のキーパーソンであるかという情報を把握していることも、当然ながら「企業特殊性」の高い情報である。他社に通用しにくいスキルを労働者に身につけさせるためには、企業が訓練費用の一部を負担しなければならない。そうした費用を回収するためには長期の雇用が必要であり、それゆえに企業は若い労働者の採用を望むようになる。それに加えて、若い方が訓練内容をよりスムーズに吸収できるとするならば、とくに高度なスキルを労働者に身につけさせたい企業にとって、新卒採用はきわめて魅力的となる」 「新卒採用のチャンスからあぶれた若年者は、「他企業から正社員として採用されなかった人」という烙印を押されてしまい、その後の就職活動に不利に働いてしまう」 「主に正社員の解雇について、「解雇権濫用法理」というかたちの判例法理によって、事実上の(解雇)制限が加えられるようになった」 「偏差値の高い銘柄大学を卒業する学生は、狭き門をくぐりぬけてきたという意味で、「選ばれた」人材である。彼らの学歴は、彼らが一定水準の学力を持ち、それを身につけるだけの忍耐力を持ち合わせていたことの証明とみなされる。企業に入れば、多くの仕事を覚えていかなければならないが、銘柄大学の学生は、それをスムーズに身につけ、さらには磨き上げていく素養を持ち合わせている可能性が高いと判断される」 「アンケートには、「1990年代前半と比べて、現在採用できる高卒者の質はいかがですか」という質問が含まれているが、約3分の1の企業が「質が低くなっている」と回答した」 「就職環境の悪い(良い)時期には留年が増える(減る)という関係が見出される。少なくとも国立大学と私立大学では、就職留年の存在を強く示唆する結果が得られた」

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2014/06/11

新規雇用が求められる背景、ニート・フリーター問題、雇用情勢など、若者をとりまく環境は厳しい。日本の将来は大丈夫か。

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2013/04/29

若年者就業問題にかかる論点を網羅的に経済学的な観点から論じている。豊富な実証的分析に基づき論じられており非常に説得力がある。今後、若年社就業問題を考える際の基本書となろう。一点欲を言えば、既存の政策に対する評価や今後とるべき政策についての記述が少し浅く感じた。

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2013/02/09

学術性を損なわない程度に数式抑えめで若年雇用を解説.政策論やべき論がなく記述が中立的でバイアスがかからないのは良い

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2012/11/10

経済学の視点から日本の若年雇用問題を論じている。若年雇用問題は、若年問題であると同時に雇用問題であり、その背景には、供給側の若年者のみならず需要側の企業の論理が強く働いている。日本企業は、人材育成、年齢構成、人材確保のため、新卒者を重視する。長期不況に直面し、投資人材としての若年...

経済学の視点から日本の若年雇用問題を論じている。若年雇用問題は、若年問題であると同時に雇用問題であり、その背景には、供給側の若年者のみならず需要側の企業の論理が強く働いている。日本企業は、人材育成、年齢構成、人材確保のため、新卒者を重視する。長期不況に直面し、投資人材としての若年正社員人数を減少させている。若年層の安定的な仕事の提供するため、成長戦略を伴った企業の活性化政策が求められる。また、教育訓練の強化を通じて若年層の資質向上に努める必要もある。 安心社会の実現のため、若年者、中高年者の仕事の奪い合いの構図でなく、持続可能な労働市場の確立を求めたい。

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2012/04/21

若者の就職困難化の原因やそ影響について網羅的に説明されており、世間で問題にされていることの大枠が理解できる。 データの説明にかなりのページが割かれているものの、大学生向けに書かれているので、平易で分かりやすい。データ分析・論文執筆の参考にしても良いかもしれない。 が、やはりデータ...

若者の就職困難化の原因やそ影響について網羅的に説明されており、世間で問題にされていることの大枠が理解できる。 データの説明にかなりのページが割かれているものの、大学生向けに書かれているので、平易で分かりやすい。データ分析・論文執筆の参考にしても良いかもしれない。 が、やはりデータの説明が多すぎて、結論が出てくるまで時間がかかり、しっかり読もうとすると退屈するかも。

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2012/02/13

週刊ダイヤモンドの2011年ベスト経済書の第3位入賞作品。若者の失業率の高さの理由を様々な角度から分析しており、納得感がある。最も共感したのは、「企業は学生を大学の銘柄で選び、学生は企業をその規模で選ぶ。それ故にミスマッチが起こりやすく、若年層の失業率が高まる」という一節。まあ誰...

週刊ダイヤモンドの2011年ベスト経済書の第3位入賞作品。若者の失業率の高さの理由を様々な角度から分析しており、納得感がある。最も共感したのは、「企業は学生を大学の銘柄で選び、学生は企業をその規模で選ぶ。それ故にミスマッチが起こりやすく、若年層の失業率が高まる」という一節。まあ誰でも分かっていることではあるんだけど、これを経済学の手法で証明されるとかなり納得感がある。 ちなみに各章の最後にポイントがまとめて書いてあるので、時間がない人はそこだけ読めばOK!という気軽さも良い。

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2012/01/21

章ごとにポイントをまとめてくれているので読みやすい。 細かい分析を理解するには、経済学の知識が必要。 その分野について自分はまだ勉強不足。

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2011/11/26

労働経済の観点から、若年者(15-35歳、主に15-22歳)の就業について考察した本。 戦後からの経済的な変化や、地域差、中高卒と大卒の格差、雇用政策など、多面的に分析している。 経済数学を多く使って分析をしているが、解説がついているので知識が無くても読める。 本書でとりわ...

労働経済の観点から、若年者(15-35歳、主に15-22歳)の就業について考察した本。 戦後からの経済的な変化や、地域差、中高卒と大卒の格差、雇用政策など、多面的に分析している。 経済数学を多く使って分析をしているが、解説がついているので知識が無くても読める。 本書でとりわけ興味深かったのが、「雇用保障が若年者の就業を妨げている」という指摘だ。 そういう意見は、勝間和代氏を筆頭に以前からあるのだが、ちゃんとデータで示されると、理解が深まる。 つまり、「正社員は解雇しにくい」ということが問題なのだ。 第1に、企業は既に中高年の正社員を多数抱えている。 第2に、将来的な見通しが立ちにくい現在の経済状況において、将来にわたって雇用を保障しなければならない正社員の採用は企業にとってリスクが大きい。長期的な教育を必要とする新卒採用はなおさらである。 第3に、法的な問題により、企業が業績不振により解雇を行う際には「解雇する事態を防ぐために行うべき企業努力」として新規採用の停止が必要とされている。採用を行っている場合は、人件費削減のための解雇は無効らしい(もちろん退職金の割増などで本人が納得していれば別だ)。つまり、人材を「入れ替えて」業績を立て直そう、ということは実質的に不可能なのだ。 以上のようなことが、「既得権としての正社員」を生み出し、新規の正社員採用を抑制させ、「使い捨てのバッファとしての非正規社員」にシフトしている、というわけだ。

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2011/01/15

本書は経済学の観点から若年者就業の問題を論じた経済学書。この課題は、社会・教育の観点での分析を試みる良書は多いが、経済学、特に統計学的に実証研究を行っている。300頁とボリュームはあるが、各章にポイントがまとめてあり、時間がない場合には、ここを斜め読みし、気になる場所を読み込むと...

本書は経済学の観点から若年者就業の問題を論じた経済学書。この課題は、社会・教育の観点での分析を試みる良書は多いが、経済学、特に統計学的に実証研究を行っている。300頁とボリュームはあるが、各章にポイントがまとめてあり、時間がない場合には、ここを斜め読みし、気になる場所を読み込むと良い。

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