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電子書籍奮戦記 の商品レビュー

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2010/11/29

電子書籍奮戦記」P. 16  多種多様な内容のものを世に送り出すのが出版本来の役割だと私は考えています。  ただし紙に印刷するにはそれなりの費用がかかります。本を保管する在庫費用もかかる。こうした事情から、人々の多様な超え、貴重な記録が、これまで十分に、世に伝えてきたとは言えませ...

電子書籍奮戦記」P. 16  多種多様な内容のものを世に送り出すのが出版本来の役割だと私は考えています。  ただし紙に印刷するにはそれなりの費用がかかります。本を保管する在庫費用もかかる。こうした事情から、人々の多様な超え、貴重な記録が、これまで十分に、世に伝えてきたとは言えません。出版社が費用に見合わないと判断すれば、自費出版しない限り、それを刊行することはできません。  しかし、電子出版を出版するのに、紙の本のような資金を用意する必要はありません。電子書籍は本質的に、小さなもののためのメディアなのです。私はこれまで電子書籍を、地道な庶民のメディア、また困難な中にあって声を発する手段だと考えてきました。これが私なりの「視点」です。 「小さなもの」とは、著者たちだけではない。出版社もまたそうなのだ。いや、出版社こそそうなのだ。 「電子書籍奮戦記」オビ 奇妙なアメリカ人との出会いから、いつしか始めた電子出版という仕事。儲かり始めたのはここ数年。借金と保険未加入の日々は「貧格」と笑うしかなかった。侮っていた携帯電話に救われ、周囲の物好きな(失礼!)人々に助けられ……ついにインターネット・アーカイブと出会う。大企業の寡占する世の中なんて、つまらない。小さくても、言いたいことある奴の声を拾い上げていこうぜ。 津野海太郎にならって、百年、さらには千年の目盛りによって考えた上で弾言しておく。 出版という行為は、貨幣経済が発展的に解消した後も残る、と。 金というものが今の通信のように、「(プロ以外は)使用量を気にせず使える」時代はいつか来る。「電話かけ放題」と「金かけ放題」との距離はみんなが思っているほど遠くはない。 そして How much が問われなくなった時にこそ、これがあらためて問われるのである。 What do you have to say? だとしたら、電子出版というのは「新しい出版のありかた」というより、「本来の出版のありかた」ではないのだろうか?

Posted byブクログ

2010/11/19

Mr.電子書籍の異名をとる、萩野正昭氏による文字通りの奮戦記。ジャーナリストの視点ではなく、実業として電子書籍に取り組んできた方によるノンフィクションだけに、全編を通して臨場感や必死さが溢れ出ている。おそらく著者にとって今年は、1992年にボイジャー・ジャパン(現・ボイジャー)へ...

Mr.電子書籍の異名をとる、萩野正昭氏による文字通りの奮戦記。ジャーナリストの視点ではなく、実業として電子書籍に取り組んできた方によるノンフィクションだけに、全編を通して臨場感や必死さが溢れ出ている。おそらく著者にとって今年は、1992年にボイジャー・ジャパン(現・ボイジャー)へ転職して以来、「今年こそ!」と思い続けた”19回目の電子書籍元年”ではないだろうか。そんな愛憎入り交じる著者の思いは、下記の一文に集約される。「お前らに電子書籍の一体何がわかるのか。」 ◆自分の視点を持つことの重要性 冒頭、同時多発テロの際、崩壊するビルではなく、その瞬間を見る市民の表情を写した写真の話を題材に、自分の視点を持つことの大切さを訴える。著者自身、レーザーディスクの可能性を模索しているうちに、電子書籍の原型を見い出したという経験を持つ。そこへ導いた独自の視点とは、レーザーディスクを”見る側が時間をコントロールできるメディア”と見立てたこと。出版社の人でもなく、ハード機器メーカーの人でもない著者が、電子書籍の道を切り拓いてこれた要因はここにある。 ◆著者の主張する電子書籍の理念 ・必要性が本を生み出す 電子書籍によって、売れない本でも出せるということは、ある人々にとっては切実な「必要性」をすくいとる力をもっている。本来電子書籍とは、小さなものののためのメディアである。 ・「本」ではなく「読む」を送る 言葉を一定の形式に固定して残すことが本の役割。しかし電子書籍の場合、「読む」ということだけに拘り、形は読み手が再構築できるようにすることが、新しい価値を生み出す。 電子出版を文化として育んでいくためには、最先端の技術に翻弄されたり、巨大プラットフォームによる囲い込みに屈したりせず、「残す」という課題と向き合うことが一番大切なことである。 そんな著者の理念こそ、残していかなければならない。

Posted byブクログ