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渡邊二郎著作集(第6巻) の商品レビュー

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2020/01/18

『ニヒリズム―内面性の現象学』(1975年、東京大学出版会)のほか、ニーチェと実存思想にかんする論考を収録しています。 『ニヒリズム―内面性の現象学』は、1972年に著者がおこなった「哲学の根本問題」という講義にもとづいています。この講義は、西洋哲学史の研究ではなく、著者がみず...

『ニヒリズム―内面性の現象学』(1975年、東京大学出版会)のほか、ニーチェと実存思想にかんする論考を収録しています。 『ニヒリズム―内面性の現象学』は、1972年に著者がおこなった「哲学の根本問題」という講義にもとづいています。この講義は、西洋哲学史の研究ではなく、著者がみずからの哲学的思索を開陳したもので、ニーチェをはじめとする哲学者たちの議論への言及もなされていますが、基本的には著者みずからの「実存」についての考えが述べられたものです。 この書のなかで著者は、「哲学の根本問題は、各自自身の根源に潜んでいる、各自自身が主体的に生きるということそのことへと、問いを向けることにある」と述べています。さらに、ハイデガーの「被投性」と「投企」の概念を手がかりに自己の主体的なありかたについての議論が進められたうえで、自己は自己を否定する事態に直面することが避けられないという指摘がおこなわれ、そのなかで自己は自己の意味と無意味の拮抗する状態のもとに置かれることになると著者は主張します。ここに著者は「ニヒリズム」が生じると考えますが、「意味の無意味」は「無意味の意味」へと転じられ、ニヒリズムに直面しつつ創造的な活動へと向かう人間存在のありようが論じられることになります。 ニーチェにかんする論考でも、こうしたニヒリズムを通り抜けてみずからの運命を肯定するという道筋が示されています。本巻の「解題」を執筆しているニーチェ研究者の清水真木は、こうした著者のニーチェ解釈を「人生論的」と形容し、「著者の語るニーチェは、中程度の、ほどよいサイズのニーチェである」と述べています。

Posted byブクログ