金閣寺の燃やし方 の商品レビュー
著者の酒井さんは三島由紀夫のファンらしい(「あとがき」参照)。ならば、この本はかなり三島と意識的に距離をとって書かれたのだなあ、と感じた。金閣寺を燃やした林養賢、その事件を題材に『金閣寺』を書いた三島、それを批判的に読み込んだうえで自身の作品を書いた水上勉。この三者の人生と金閣...
著者の酒井さんは三島由紀夫のファンらしい(「あとがき」参照)。ならば、この本はかなり三島と意識的に距離をとって書かれたのだなあ、と感じた。金閣寺を燃やした林養賢、その事件を題材に『金閣寺』を書いた三島、それを批判的に読み込んだうえで自身の作品を書いた水上勉。この三者の人生と金閣寺との関わりを文字で、足でたどりながら、酒井さんは、三島的な心情と水上的な心情が当時も今も我々のなかにあるのではないか、という。「しかし二つの部分は私の中で、決して交わることがないのです」(p255)と、酒井さん自身の内面についても述べられている。私は、どちらかというと水上寄りの心情を持つ人間であり、『潮騒』を中学の課題図書で読まされて以来、三島の作品は敬遠してきた。でもせっかくの機会なので、『金閣寺』を手に取ってみようと思う。
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三島由紀夫と水上勉の対局的な「金閣寺」放火事件の作品を掘り下げた評論。読んでいて、酒井さんが犯人の生地へ行ったり2人の作家の生い立ちを丁寧に調べ対比し、作品に投影されてることを指摘している点に納得。「金閣炎上」はまだ読めていないけど「五番町夕霧楼」を読んでいると、番人心情にフォー...
三島由紀夫と水上勉の対局的な「金閣寺」放火事件の作品を掘り下げた評論。読んでいて、酒井さんが犯人の生地へ行ったり2人の作家の生い立ちを丁寧に調べ対比し、作品に投影されてることを指摘している点に納得。「金閣炎上」はまだ読めていないけど「五番町夕霧楼」を読んでいると、番人心情にフォーカスできているのは水上勉さんなのかなと思う。三島由紀夫の「金閣寺」は炎上事件をモチーフとして文章の美しさを描いたもので主人公に犯人を投影するのは違うのかなと感じた。なかなか手に入らない本だけど復刊しないかな
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とにかく題名にドキッとしました。読んでみて、最初は難しいかなと思いましたが、案外読みやすいので、すすっと頭に入ってきました。三島由紀夫と水上勉、という偉大な作家を金閣寺が燃えた事件を通して見直すとは、なかなか面白い発想でした。文章も私にも理解しやすく、おオススメのエッセイだと感じ...
とにかく題名にドキッとしました。読んでみて、最初は難しいかなと思いましたが、案外読みやすいので、すすっと頭に入ってきました。三島由紀夫と水上勉、という偉大な作家を金閣寺が燃えた事件を通して見直すとは、なかなか面白い発想でした。文章も私にも理解しやすく、おオススメのエッセイだと感じました。
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まずタイトルが良い。バカリズムの「都道府県の持ち方」に通ずるところがあってツボ。金閣寺が全焼していたのは知らなかった。学びの多い本だった。三島版、水上版もそれぞれ読んでみたいな〜
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酒井順子による、三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』『五番町夕霧』の解説書。 『金閣炎上』を読んで金閣寺放火事件に興味をもって、先に『金閣寺』を読んでから……と思っていたらこれがどうにも読み進まず挫折……。 本書を読んでその理由が分かった。 私は三島由紀夫という人物が好きでは...
酒井順子による、三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』『五番町夕霧』の解説書。 『金閣炎上』を読んで金閣寺放火事件に興味をもって、先に『金閣寺』を読んでから……と思っていたらこれがどうにも読み進まず挫折……。 本書を読んでその理由が分かった。 私は三島由紀夫という人物が好きではない。 読み進めながらどうにも辛くて進まなかったのはそういうことかと。 かといって水上の方にそこまで共感するかというとそんなこともないのだけど。 二人の作家の金閣にまつわる作品群を、主に作家論から解明していくエッセイ。
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著者に深さや重さを求めてはいけない。 隠れサブカルのライト感を楽しみつつ、 本書に登場する水上勉、三島由紀夫、林養賢を知るきっかけになればいい。 「裏が、幸せ」へと続くオマージュ的な本。
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三島の"金閣寺"に出会ったのが40年前。読後の朦朧とした状態で、当時の新聞記事を必死に読み漁ったのを、思い出した。 終わりの太宰治との比較は、私も同意見。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ショッキングなタイトルだが、「負け犬の遠吠え」のようなユーモラスさや毒性はあまりない。 三島由紀夫と水上勉それぞれの金閣寺炎上に関する小説を比較検討する、けっこうまじめな文芸論。 水上版は未読だが興味惹かれる。 各自の小説に登場したシーンや、三島、水上それぞれの生い立ちをふまえて、ルーツを辿って検証する。金閣寺以外の作家の手記や代表作にも触れ、その思考回路を繙きながら、なぜ三島の、そして水上の「金閣寺」は生まれたのかを探る。 単に文献をいじって羅列しただけの論文ではなく、各地に足を運んで,地域の人となりにも触れつつ、作家をはぐくんだ土壌に迫って分析をしている。結論をなんども言い重ねてくどいところもあるが、両作家作品へのガイドブックともなっており、なかなか読み応えのある一冊。
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タイトルがこうでも、そういう類のHOW TO本ではない。この本、書き下ろしエッセイ、だったんだね。それならこの文体もそれなりに納得。『金閣炎上』を読んですぐ読みたかったのだが事情により一冊間を置き読む。このあとは更に『五番町夕霧楼』へ。
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同じ題材を扱った違う著書を比べてみるという発想はおもしろいかも。三島由紀夫の『金閣寺』を読んだ時は特に違和感は感じなかったけど、たしかに言われてみれば犯人に対して上から目線で、動機もドラマチックすぎるよなー。 『負け犬の遠吠え』から10年ほどたったのかな?わーこの著者成長したなー...
同じ題材を扱った違う著書を比べてみるという発想はおもしろいかも。三島由紀夫の『金閣寺』を読んだ時は特に違和感は感じなかったけど、たしかに言われてみれば犯人に対して上から目線で、動機もドラマチックすぎるよなー。 『負け犬の遠吠え』から10年ほどたったのかな?わーこの著者成長したなー、と年下の私が言ってみる。
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