金閣寺の燃やし方 の商品レビュー
三島の『金閣寺』はずっと読みたいと思っていた。これは三島が好きだからということでは決してなく(むしろ苦手)、本好きなら読んでおかなきゃねという妙な義務感からである。「映画好きなのにクロサワ観てないの?」的な。しかし、どうにも敷居が高い。 積読して10数年、本書の存在を知った。三...
三島の『金閣寺』はずっと読みたいと思っていた。これは三島が好きだからということでは決してなく(むしろ苦手)、本好きなら読んでおかなきゃねという妙な義務感からである。「映画好きなのにクロサワ観てないの?」的な。しかし、どうにも敷居が高い。 積読して10数年、本書の存在を知った。三島の『金閣寺』と、水上勉の『金閣炎上』を読み比べたものである。俄然興味がわいた。水上というと、私は推理小説を数本と小編を何本か読んだ程度。どちらかと言えば好きな作家だったが、恥ずかしながら『金閣炎上』は知らなかった。かくして私は、本書を読むために、三島と水上の金閣を読んだのである。 私は三島の金閣に違和感を覚えたのだが、本書の次のくだりを読み、大いに首肯した。“三島は、自らの思想地図を説くのに最も適当な狂言回しとして、林養賢をピックアップしました。(中略)対して水上は、実在の人物である林養賢の隣に、自分が降りていきました。”作者の酒井さんは三島のファンとのことだが、本書では水上のほうにシンパシーを感じているようにも読める。 酒井さんはただ単に2作品を読み比べるだけでなく、実際に関係する現場に赴き、自らの「読み」を深めていく。読むことの奥深さ、愉しさを本書は存分に教えてくれる。 書評は普通、その本を読ませるために書かれるものだろう。本書を書評に分類してよいかは迷うところだが、私は初めて書評や評論のたぐいを読むために、その俎上に上がった書籍を先に読んだ。楽しい1カ月だった。
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金閣寺小説を続けて読んだので、解説も。 同じ金閣寺放火事件をテーマに、全く違った内容を書いた三島由紀夫と水上勉の、当時の執筆背景を解説。 各小説の解像度が上がる。 三島は、事件のガワだけ借りてみずからの自意識を語る。 一方水上は、下層庶民としての養賢に共感し、禅宗の堕落を嘆いた...
金閣寺小説を続けて読んだので、解説も。 同じ金閣寺放火事件をテーマに、全く違った内容を書いた三島由紀夫と水上勉の、当時の執筆背景を解説。 各小説の解像度が上がる。 三島は、事件のガワだけ借りてみずからの自意識を語る。 一方水上は、下層庶民としての養賢に共感し、禅宗の堕落を嘆いた。 それぞれ事件を通して、自分が人生に見ているものを描く。面白かった。
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三島由紀夫と水上勉、二人の人物と二人の作品「金閣寺」と「五番町夕霧楼」、「金閣炎上」の比較をエッセイで紹介している。そう簡単に対比は難しいかもしれないけれど、「美」という高尚な視点からの三島、生活の苦しい人々からの視点の水上の対比は興味深かった。
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著者の酒井さんは三島由紀夫のファンらしい(「あとがき」参照)。ならば、この本はかなり三島と意識的に距離をとって書かれたのだなあ、と感じた。金閣寺を燃やした林養賢、その事件を題材に『金閣寺』を書いた三島、それを批判的に読み込んだうえで自身の作品を書いた水上勉。この三者の人生と金閣...
著者の酒井さんは三島由紀夫のファンらしい(「あとがき」参照)。ならば、この本はかなり三島と意識的に距離をとって書かれたのだなあ、と感じた。金閣寺を燃やした林養賢、その事件を題材に『金閣寺』を書いた三島、それを批判的に読み込んだうえで自身の作品を書いた水上勉。この三者の人生と金閣寺との関わりを文字で、足でたどりながら、酒井さんは、三島的な心情と水上的な心情が当時も今も我々のなかにあるのではないか、という。「しかし二つの部分は私の中で、決して交わることがないのです」(p255)と、酒井さん自身の内面についても述べられている。私は、どちらかというと水上寄りの心情を持つ人間であり、『潮騒』を中学の課題図書で読まされて以来、三島の作品は敬遠してきた。でもせっかくの機会なので、『金閣寺』を手に取ってみようと思う。
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三島由紀夫と水上勉の対局的な「金閣寺」放火事件の作品を掘り下げた評論。読んでいて、酒井さんが犯人の生地へ行ったり2人の作家の生い立ちを丁寧に調べ対比し、作品に投影されてることを指摘している点に納得。「金閣炎上」はまだ読めていないけど「五番町夕霧楼」を読んでいると、番人心情にフォー...
三島由紀夫と水上勉の対局的な「金閣寺」放火事件の作品を掘り下げた評論。読んでいて、酒井さんが犯人の生地へ行ったり2人の作家の生い立ちを丁寧に調べ対比し、作品に投影されてることを指摘している点に納得。「金閣炎上」はまだ読めていないけど「五番町夕霧楼」を読んでいると、番人心情にフォーカスできているのは水上勉さんなのかなと思う。三島由紀夫の「金閣寺」は炎上事件をモチーフとして文章の美しさを描いたもので主人公に犯人を投影するのは違うのかなと感じた。なかなか手に入らない本だけど復刊しないかな
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とにかく題名にドキッとしました。読んでみて、最初は難しいかなと思いましたが、案外読みやすいので、すすっと頭に入ってきました。三島由紀夫と水上勉、という偉大な作家を金閣寺が燃えた事件を通して見直すとは、なかなか面白い発想でした。文章も私にも理解しやすく、おオススメのエッセイだと感じ...
とにかく題名にドキッとしました。読んでみて、最初は難しいかなと思いましたが、案外読みやすいので、すすっと頭に入ってきました。三島由紀夫と水上勉、という偉大な作家を金閣寺が燃えた事件を通して見直すとは、なかなか面白い発想でした。文章も私にも理解しやすく、おオススメのエッセイだと感じました。
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まずタイトルが良い。バカリズムの「都道府県の持ち方」に通ずるところがあってツボ。金閣寺が全焼していたのは知らなかった。学びの多い本だった。三島版、水上版もそれぞれ読んでみたいな〜
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酒井順子による、三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』『五番町夕霧』の解説書。 『金閣炎上』を読んで金閣寺放火事件に興味をもって、先に『金閣寺』を読んでから……と思っていたらこれがどうにも読み進まず挫折……。 本書を読んでその理由が分かった。 私は三島由紀夫という人物が好きでは...
酒井順子による、三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』『五番町夕霧』の解説書。 『金閣炎上』を読んで金閣寺放火事件に興味をもって、先に『金閣寺』を読んでから……と思っていたらこれがどうにも読み進まず挫折……。 本書を読んでその理由が分かった。 私は三島由紀夫という人物が好きではない。 読み進めながらどうにも辛くて進まなかったのはそういうことかと。 かといって水上の方にそこまで共感するかというとそんなこともないのだけど。 二人の作家の金閣にまつわる作品群を、主に作家論から解明していくエッセイ。
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著者に深さや重さを求めてはいけない。 隠れサブカルのライト感を楽しみつつ、 本書に登場する水上勉、三島由紀夫、林養賢を知るきっかけになればいい。 「裏が、幸せ」へと続くオマージュ的な本。
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三島の"金閣寺"に出会ったのが40年前。読後の朦朧とした状態で、当時の新聞記事を必死に読み漁ったのを、思い出した。 終わりの太宰治との比較は、私も同意見。
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