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渡邊二郎著作集(第1巻) の商品レビュー

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2018/01/08

『ハイデッガーの実存思想』と、論文「初期のハイデガー」を収録しています。 『ハイデッガーの実存思想』は、著作集第2巻に収録された『ハイデッガーの存在思想』とともに、著者のハイデガー解釈が詳細に論じられた著作です。新カント派の影響のもとで判断論の研究に着手したハイデガーが、やがて...

『ハイデッガーの実存思想』と、論文「初期のハイデガー」を収録しています。 『ハイデッガーの実存思想』は、著作集第2巻に収録された『ハイデッガーの存在思想』とともに、著者のハイデガー解釈が詳細に論じられた著作です。新カント派の影響のもとで判断論の研究に着手したハイデガーが、やがて実存の問題へと向かっていくことになる経緯を明らかにするとともに、主著『存在と時間』で明らかにされるに至ったハイデガーの思想とその問題点を明快に論じています。 著者のハイデガー哲学に対する不満は、レーヴィットのそれと同じ方向を指しているように思われますが、詳細かつ明晰に議論が展開されています。著者はハイデガーの思索をうちからたどることで、彼が「死への先駆」に基づく本来的実存という枠組みから実存の問題を解明しようとしていたことを鮮やかに示し、そのうえで「本来性と非本来性の弁証法的関係」に対する考察がハイデガーのもとで十分に展開されていなかったことを指摘しています。 著者は、京都学派に属する辻村公一と並んで、ハイデガー研究の両巨頭というべき存在ですが、辻村の晦渋な議論に比較すると、著者の議論の明晰さは際立っているように感じます。ただ、著者の主張している「本来性と非本来性の弁証法」という発想は、存在の歴運に聴従するというハイデガーの後期の思想への道筋を見通しがたくするとともに、ハイデガーの「存在」をふたたび人間学的な事柄に回収してしまうことにならないかという疑問を、最後まで拭い去ることができませんでした。

Posted byブクログ