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わたしは英国王に給仕した の商品レビュー

4.1

21件のお客様レビュー

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2022/10/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

221029*読了 この世界文学全集の中では、一番薄い本なはず。 鈍器?くらい分厚い本も多い中で、一般的な単行本くらいの厚さ。 「わたしは英国王に給仕した」というタイトルをなぜか昔から知っているような気がしていて。 しかも、映画のタイトルだったような気がしていたのだけれど、確かに映画化されているものの、日本では「英国王給仕人に乾杯!」なんだよなぁ。 わたしの勘違いなのだろうか。 イギリス好きのため、このタイトルが気になって、早く読みたかったのだけれど、いざ読んでみると、英国王出てこないやないかーい。笑 主人公自身はエチオピア皇に給仕したのに、師であった給仕長の経験である、「英国王に給仕した」の方をタイトルにするっていうのも、なかなか考えつかないよなぁ。 給仕見習いから給仕人に、ホテルを移って、給仕長になり、ついには自らがホテルの支配人となる。 そんなサクセスストーリーかと思いきや、世情により、というか自ら進んで凋落の道を歩き出す。 最後には山奥深くでひっそりと道路工夫になってしまうという、大きな山を描くような人生。 他の長編に比べるとまとまっていながらも、ガツンと来る。滔々と流れるように語られる人生、人生は流れるけれど合間合間のスパイスが強い。 フラバル氏の著作ってほとんど和訳されていないみたいなので、もったいないなぁ。おもしろいのに。 そして、エロティックな場面も時々あったし、どんな映画になっているのだろう、というのが読みながら気になりました。 映画は見たいような見たくないような。笑

Posted byブクログ

2022/01/11

金持ちになることを夢見る給仕人の少年。英国王ではなくエチオピア皇帝に給仕して貰った勲章を大切にして激動のチェコを生きる。天国館やドイツ人のリーザとの結婚など女性遍歴もそれなりにあって、感受性豊かに彩る。 最後孤独に人生を振り返る主人公の回想という形の物語だが、この難しい時代のチェ...

金持ちになることを夢見る給仕人の少年。英国王ではなくエチオピア皇帝に給仕して貰った勲章を大切にして激動のチェコを生きる。天国館やドイツ人のリーザとの結婚など女性遍歴もそれなりにあって、感受性豊かに彩る。 最後孤独に人生を振り返る主人公の回想という形の物語だが、この難しい時代のチェコスロバキアを描いた物語ともいえて、興味深いシーンが多く中身のギュッと詰まったたくさんの物語を読んだ印象です。

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2021/08/12

一人の人生航路と、チェコの歴史とが重なる絵巻のような物語。これは読書中の実感としては、場面が段々と変わっていくのだが、最後は一人の人生としてまとまりが見えてきた、という感じである。

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2019/04/15

訳がこなれていないせいなのか、面白いのになかなか読み進められないというか、読み進めるのに苦労した。 私にとっては馴染みのない東欧チェコの近代史の断片に触れられたり、チェコの人の気質などが垣間見えて面白かったし、全世界の人間に共通するような普遍的なテーマが裏側を一貫して流れているた...

訳がこなれていないせいなのか、面白いのになかなか読み進められないというか、読み進めるのに苦労した。 私にとっては馴染みのない東欧チェコの近代史の断片に触れられたり、チェコの人の気質などが垣間見えて面白かったし、全世界の人間に共通するような普遍的なテーマが裏側を一貫して流れているため、奥が深くて、時間をかけて考え、一つ一つの言葉を飲み込みながら読みたいと思う本だった。

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2018/03/04

チェコ人の若者給仕のヤンは働き始めた見習いの時に支配人に諭された心得「何も見ないし何も聞かない」でも胸に刻まないといけないのは「ありとあらえることを見なければならないし、ありとあらえることに耳を傾けなければならない」との教えの通りの人生を歩む。いつか百万長者になることを目指しなが...

チェコ人の若者給仕のヤンは働き始めた見習いの時に支配人に諭された心得「何も見ないし何も聞かない」でも胸に刻まないといけないのは「ありとあらえることを見なければならないし、ありとあらえることに耳を傾けなければならない」との教えの通りの人生を歩む。いつか百万長者になることを目指しながら人生でどんな職につき艱難辛苦にあっても喜びを見出してもそのように人を社会をよく見聞きして歩み、しかもどんな得意な体験であったとしても押し黙り語らない。ところがどうだ、彼の心の中ではその瞬間の一部始終をエロティックにグロテスクにコミカルにシュールな世界を弾丸トークしまくっているのだった。それを表現するとしたら、ジンベイザメ級を余裕で不自由なく遊泳させている大型水族館の水槽に満々とたまる「水塊」を愛でていたら、亀裂と同時に中のなみなみ溢れる海水が自身に向かって津波のように襲ってくるようなもの。その「文塊」にのまれたままいつ引くとも解らないのに読み続けてしまうといった感じかな。どんなにシュールでもグロでもエロなシーンでもなぜか私の脳内映像には、チャップリンやバスター・キートンらのようなコミカルなトーキー映画ふうに展開していったので、切実なシーンでもコメディに映った。日本のコメディとは感覚が違うけど私にとって楽しくて面白い本の一冊となり大好きになりました。

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2016/10/08

チェコを舞台にした、低身長の給仕の男の一代記。ホラ話ふうでトンデモナイ事態がつるつると語られていき、楽しい。幻想的なシーンも多く、ティム・バートンやテリー・ギリアムに映画化してほしいな。 そうこうするうち、ナチスが台頭し、人生の残酷さも味わいつつ、時代を俯瞰することに。「石の葬式...

チェコを舞台にした、低身長の給仕の男の一代記。ホラ話ふうでトンデモナイ事態がつるつると語られていき、楽しい。幻想的なシーンも多く、ティム・バートンやテリー・ギリアムに映画化してほしいな。 そうこうするうち、ナチスが台頭し、人生の残酷さも味わいつつ、時代を俯瞰することに。「石の葬式」みたいな小説とか、ガルシアマルケス作品の趣も。意外な収穫だったな。ホテルものには目がないし♡

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2015/11/12

池澤夏樹世界文学全集。 「これからする話を聞いてほしいんだ」 その一言から始まる物語は ソーセージ売りから給仕長、そしてホテルオーナーへ・・・。 めまぐるしくあふれ出る滑稽かつセクシーなエピソードにのって、小さな給仕人が歩むチェコの近現代。 時に笑い、時にセンチに。 人生は...

池澤夏樹世界文学全集。 「これからする話を聞いてほしいんだ」 その一言から始まる物語は ソーセージ売りから給仕長、そしてホテルオーナーへ・・・。 めまぐるしくあふれ出る滑稽かつセクシーなエピソードにのって、小さな給仕人が歩むチェコの近現代。 時に笑い、時にセンチに。 人生はまったく摩訶不思議。

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2014/08/03

フラバルはどれもおもしろいが、初めて出会った作品がこれ。 人生、上がったり下がったりな小市民ぶりが身近でいとおしい。 しかし飲食の店内に入ってきただけで注文するものが本当にわかるものなのか? なんでもかんでも「私は英国王に給仕したからな」という理由付けがイケてる! 小市民の人生に...

フラバルはどれもおもしろいが、初めて出会った作品がこれ。 人生、上がったり下がったりな小市民ぶりが身近でいとおしい。 しかし飲食の店内に入ってきただけで注文するものが本当にわかるものなのか? なんでもかんでも「私は英国王に給仕したからな」という理由付けがイケてる! 小市民の人生において、空が青いのも、昨日から熱っぽいのも、靴下を履き違えたのも、全部「英国王に給仕した」のが理由らしい(笑) 少しおバカっぽくて愛らしい、ストーリーは明るくて楽しい、それでも行間に漂う、しんみり具合が、深さの陰として活きている。

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2022/02/15

これからする話を聞いてほしいんだ。 元ホテルの給仕長の語る半生の物語。 読みながら頭に浮かんだ映像は賑やかなミュージカルでした。(グランドホテルな感じでどうでしょう) ホテルのレストランに集まるセールスマンの繰り広げる喧噪、娼家での取引、個性的なホテルマン達。そんな中をスポット...

これからする話を聞いてほしいんだ。 元ホテルの給仕長の語る半生の物語。 読みながら頭に浮かんだ映像は賑やかなミュージカルでした。(グランドホテルな感じでどうでしょう) ホテルのレストランに集まるセールスマンの繰り広げる喧噪、娼家での取引、個性的なホテルマン達。そんな中をスポットライトを浴びて主人公ヤンが渡っていく。初めに貯めた貯金の元は、ソーセージ売りの料金をごまかしたもの。ホテルを移り給仕長へ。彼の夢は百万長者として認めれホテルを所有する事。第二次世界大戦前後の政治情勢にもまれ、ヤンは確かに本当の望みへと向かう。 なぜそんなことができたかって?なぜなら私は、英国王に給仕したスクシーヴァネク給仕長の真の弟子であり、エチオピア皇帝に給仕して勲章を授かったことがあるのですから。 (↑つまり”わたし”のヤンは英国王に給仕していない!) === 主人公の人生は、事実だけ並べればなかなかグロテスクな面もあるのですが、すいすいと人波を通り抜けるような語り口で、重さも悲惨さも薄れています。 百万長者になるために主人公の撮った手段はつり銭ごまかしから略奪品の取得。それでも上流社会に認められず、どうしても彼らに自分を認めさせたい彼は逆説的な行動に出たり。 そんなこんなを通り抜け、あらゆるものを置いてきて、心の望みへとたどり着きます。 それにしても終盤の文章力はお見事。現実的描写も、主人公の心の中までもが映像として頭に浮かびました。 ≪わたしは自分の墓のことを喜んで説明してあげた。 「もしここで死んで、噛まれずに残った骨が一部しか、頭蓋骨の一部しかなくても、あの小さい丘の上にある墓地に埋葬してほしいと思っています。分水嶺の真上に私の棺を置き、時間がたって棺が崩れ落ちた後、分解された私の残余物が雨で流れだし、世界の二つの方向に流れていくようにして欲しいんです。その水とともに私の体の一部が一方ではチェコの小川に流れていき、もう一方では国境の有刺鉄線を超えてドナウに続く小川に流れ着いてほしいんですよ。つまり死んだ後も世界市民であり続けたいんです。一方がヴルタヴァ川そしてラべ川を経由して北海にたどり着き、他方ではドナウ経由で黒海へ流れていく。その二つの身から太平洋へと注いでいく…」居酒屋の常連客達は静まり返り、私の方をただ眺めるばかりだった≫

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2014/07/11

フラバルの小説はとにかくもう面白い。笑えるのにもの悲しく、時にエロスとタナトスが挨拶を交わす様に交差する。それはフラバルの描く20世紀のチェコという決して一面的な解釈が許されない歴史が持つ複雑さであり、同時にそれを吹き飛ばそうとする生命力の表れでもある。始まって早々に娼婦相手の童...

フラバルの小説はとにかくもう面白い。笑えるのにもの悲しく、時にエロスとタナトスが挨拶を交わす様に交差する。それはフラバルの描く20世紀のチェコという決して一面的な解釈が許されない歴史が持つ複雑さであり、同時にそれを吹き飛ばそうとする生命力の表れでもある。始まって早々に娼婦相手の童貞喪失体験を語り出す給仕人の語りはべらぼうに面白くありながら、語り口にしろ本書のタイトルにしろ見事に対象化が成されており、それは人生の歓喜や悲哀だけでなく時代の荒波すらもうわばみの様に飲み込んだ、一つの数奇なる人生を形作るのだ。

Posted byブクログ