農業がわかると、社会のしくみが見えてくる の商品レビュー

生源寺眞一【著】

2024/01/07

次は農業に関する本（積読）を読もうと思っていたところ、はるか昔に読んだ入門書を実家の本棚に並んでるのを発見して改めて読んでみた。書かれたのが2010年とかなり時間が経ってるけど、内容が俯瞰的で、農業情勢の入門書としては今でも耐えうる内容、復習にとっても良かったです。

2020/07/22

日本の農業をざっくりと掴める。日頃ふとどうしてだろう？と思うことへの背景がある。食料について、食料自給率について、この先に知っておくことで、日々の暮らし方に変化があるのではないでしょうか？

2018/10/20

●市場経済やその国際版である自由貿易は私たちの暮らしを豊かにしてくれる。何もかも自前で生産するよりも、それぞれが得意なものを集中的に生産して、その成果を互いに売り買いするシステムのほうが全体としての富は増加するに違いない。

　けれども市場経済や自由貿易は万能ではない。食料に代表される絶対的な必需品については仮に市場経済や自由貿易が機能不全に陥った場合であってもミニマムの量が確保されていなければならない。またそのための準備も怠るべきではない。

☆経済学者は市場経済や自由貿易が万能という理屈で理論を構築してくるのかな？でも、例えば脳科学でこれまでは合理的に判断し・行動するとされていた大衆が実は全然合理的ではないということが分かってきたように、経済学も前提を変えるべきではないのか？

●真の問題は、ミニマムの必要量の領域を超えたところにまで及んでいる過剰な農業保護だと考えるべき。
☆なるほど。ミニマムの必要量を決め、そこまでは保護するが、後はご自由にどうぞということか。
　この必要量となるのはどの辺に設定するのが良いだろうか？

●この国は半世紀前と比較して、一人あたりで八倍のものやサービスを生み出す力を手にし、八倍のものやサービスを消費するゆたっかな暮らしを実現したわけだ。
☆経済成長というのはそういう意味なんだ。大きく見ると、生み出した余剰のサービスやものと消費するサービスやものは釣り合っているんだなぁ。今は国内では釣り合わなくなってきたので、余剰のサービスやものは海外に売りつけている状態？あれ？でも給料は国内に入ってくるんだから、国内の消費も伸びるはず？伸びた分は消費せずにため込んでるってこと？余剰のサービスやものが発生しないで、サービスや生産を絞っていくと経済の縮小か。

●土地利用型農業の活路となる三つの工夫
?鳥地用型農業の生産物の価値を高める工夫：環境保全型農業
?土地利用型農業に集約型の農業を組み合わせる
?農産物の加工や流通に取り組む
☆まぁ、そうだろうな。。。

●日本には13万 9千の農村集落があるby農業センサス
農家は285万戸
農地面積469万ha
一つの集落に平均20戸の農家と34haの農地
☆1個の農家の平均は1.7ha。集落一つでもEUの1戸に届かないんだ。少なくとも、集落単位での農業は目指さないとやっていけないなぁ。
ドイツ：４１．２ｈａ(日本の２３倍)
フランス：４５．３ｈａ(日本の２５倍)
イギリス：５７．２ｈａ(日本の３２倍)

●政府には社会全体の利益を増進する観点から、市場経済が考慮できない面について意識的に補正する役割が求められている
☆やはり市場経済で考慮できない面があるということは一般的な概念として良いのか。

●日本に農業が必要な理由
?食料安全保障
?外部経済
　・農村コミュニティの共同の力

●お金に換算できない大切な要素については、人間の生き方の根源にかかわる問題であって経済学には荷が重すぎる。

☆なるほど。しかし、これをどの程度まで税金で面倒を見るのかというのが問題だ。このあたりが政治になるのか？

過去10年ほどを振り返って、日本の農業が技術面で経験した一番大きな変化は何か。私なら農業からの情報発信だと答えたい。

2016/11/14

農業に関する専門知識がわかりやすく解説されていたように思う。

自給率の推移だけに目を奪われるのではなくフード・セキュリティの観点から農業を見る必要があることや，農業に関わる外部経済（特に正の外部経済）があることが特に勉強になった。

2014/09/21

この本では、世界の食料問題と日本の農業について初心者でもわかりやすいように解説されています。著者は東大の農業経済学の先生。
兼業農家の世代交代が進んでいないという点については、まさに自分も田舎から都会に出て行った一人なので耳が痛い一方、都会に出たい若者の気持ちもわかるので難しい問題だと感じました。

2014/07/24

世界の食糧と日本の農業について、授業形式で、高校生にもわかるように書かれています。

高い水準の内容でありながら、簡単な言葉でシンプルに纏められているので、正直めちゃめちゃわかりやすい。

とても大切な社会的テーマだと思うので、若者も大人も是非読んでおきたい一冊。読んでスッキリした。

2014/06/14

世界の食料、日本の農業、毎日の食卓のつながりをわかりやすく伝えるというコンセプトの農業経済学の入門書。高校生向けだが、水準は高く、農業経済学や農業政策の基本を押さえるのに最適な一冊。
「食料危機は本当にやってくるのか？」といった、５時限の授業形式で構成されており、１限目は、世界の食料問題を過去から未来に向かう時間軸のうえで考察、２限目は、先進国と途上国を対比しながらの世界の食料問題の考察、３限目は、食料自給率をキーワードとして、世界の食料問題の中での日本の食料と農業のポジションの考察、４限目は、日本の農業の現状の考察、５限目は、本書のまとめとして食料生産の現場と消費者のさまざまなつながりの考察となっている。
貧困層の食生活の改善と食料価格抑制の間のジレンマの指摘や、食糧安全保障の指標としては、食料自給率より食料自給力が大事だという指摘は目から鱗だった。
ただ、フードセキュリティの観点から農業をすべて市場経済に委ねることには問題があるという指摘や農村コミュニティの面から農業の重要性を説く指摘などには、少し疑問も持った。

2013/09/17

高校生から大学低学年向きということで読みやすかった。著者があとがきで書いていたように政策についてのことはあまり記されず、日本の農業と世界の農業の特徴を比較しながら今後の農業のあり方、食料生産についてわかりやすく述べられていた。ただ、読みやすかったが、新しい考え方や特徴的な考え方のようなものは感じられず、基本的な理論に終始していた気がする。

2012/10/04

農業、食糧問題は経済・農学(化学、生物)・開発学(政策)と多岐にわたって俯瞰しなければ解決しそうにないと実感した。

2012/08/05

さすが生源寺先生と、感嘆せざるを得ない一冊。

食の農に関する根本的な疑問に答えつつ、
グローバルな農産物の流れから日本国内の現状まで概観し、
ご自身の燃え盛る魂のメッセージをちらつかせながら、
大変分かりやすい文体を維持する

という神っぷり。
俺もこんな文章書きたい。

農業経済に興味を持つ方、農と食の不思議なシステムに疑問を持っている方にはオススメ。
はじめの一冊にぜひ！