まつりちゃん の商品レビュー
児童向け童話のような体裁で、読んだ後で何かほのぼのした気分になる。それは、「まつりちゃん」という名の小さな女の子が話す詩人のような言葉のせいかもしれない。屈託のない話しぶりと持って生まれた親しみやすさで、誰とでも仲良しになれそうでいながら、とても用心深く生きている「まつりちゃん」...
児童向け童話のような体裁で、読んだ後で何かほのぼのした気分になる。それは、「まつりちゃん」という名の小さな女の子が話す詩人のような言葉のせいかもしれない。屈託のない話しぶりと持って生まれた親しみやすさで、誰とでも仲良しになれそうでいながら、とても用心深く生きている「まつりちゃん」。 全部で8編の物語からなる連作短編集だけれど、ひとつひとつの物語はそれぞれ独立している。どの話も違う語り手が主人公だけれど、誰しもまつりちゃんと知り合うことで、なぜかそれまでとは違う自分へと変わっていく。まつりちゃんはあくまでも脇役だ。でも、閉ざされた家に人目を避けて暮らしている暗さが時おり窺えて、後半に向かうにつれ謎が深まる展開。そして、小さな町の片隅で起きている不幸に次第に焦点が合っていくところはさすが。 架空の町で起きる寓話めいたやり取りの中に、岩瀬さんらしい狙いで現実社会の厳しさを投影させている。いろいろ考えさせる内容で不思議な読後感が残る。
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