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管見妄語 大いなる暗愚 の商品レビュー

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2018/11/15

「国家の品格」の著者による、週刊新潮に連載されたエッセイ集。各文章は短く読みやすい。考え方に共感できる箇所が多い。印象的な記述を記す。 「普通使われる意味での国民とは現在この国に住む人々にすぎない。国家とはこれまでの国民、これからのすべての国民のものである。従って政治家の頭には...

「国家の品格」の著者による、週刊新潮に連載されたエッセイ集。各文章は短く読みやすい。考え方に共感できる箇所が多い。印象的な記述を記す。 「普通使われる意味での国民とは現在この国に住む人々にすぎない。国家とはこれまでの国民、これからのすべての国民のものである。従って政治家の頭には国民ばかりでなく国家もなくてはならない」 「近年の我が国の生徒達の学力低下は国際テストに表れている通りだし、大学生のふがいなさはすべての大学教官のこぼすところである」 「世界は利害得失のみで動いていて、友愛で動くのは日本だけである」 「万年野党とは政治批判のプロであり政治運営のアマである。民主党には、政権について初めて見えてくる現実も多々あろう」 「日清戦争で突撃ラッパを吹いている最中に敵弾を浴び絶命してもラッパを口から離さなかった木口小平であり、日露戦争の軍神広瀬武夫中佐、橘周太中佐だ。献身こそは民族の精華だ」 「恩師の年賀状には、「短期間の陸軍生活ではあったが上官にも同輩にもイヤな奴は一人たりともいず、みな暖かく親切な人ばかりでだったことを死ぬ前に君に伝えておく」とあった」 「政治家より官僚の方がしばしば、政策に関する専門知識、経験、そして見識においてさえ上なのである。官僚は、中学、高校、大学、国家公務員試験と試験につぐ試験をくぐり抜けた、日本中のあらゆる階層から選ばれた最優秀の人々と言ってよい。一方最近の政治家の中には、小泉チルドレンや小沢チルドレンに見られるように、議員になるまで国政とは何の関係もない職業に携わっていたズブの素人が多い。政治家は、ポピュリズムとは無縁な官僚を知恵袋として、共に手を携え国に奉仕してほしい。優秀な人材はどの国においえも数が限られており貴重だ」 「中国新幹線は、JR東海が技術流出を警戒し、賢明にも輸出を断念したものを、JR東日本が「ブラックボックスのない完全な技術供与」という恐るべき条件をのんで売ったものであった。しばらくすれば中国による大々的な新幹線輸出が始まるだろう」 「美しい日本がいつの間にか、ヨーロッパのどの町にも負ける、みにくい町ばかりになってしまった」 「世界中の一流を集めほとんどすべての学問分野でアメリカが最先端を切っている」

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2012/09/29
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※このレビューにはネタバレを含みます

「夏彦の写真コラム」 はユーモア、皮肉、パンチの効いた小気味よい文書だった 時代遅れの日本男児 株主至上主義は、少なくともモノ作り作業にはなじまないと思う 数学者にはバランス感覚な者がよく見られる 惻隠、すなわち弱者への涙は武士道の仁や仏教の慈悲にも通ずる日本精神の精華である 

Posted byブクログ

2011/01/13

たいして人気もないのではと高をくくっていたが、図書館で3か月も待ってようやく借りることができた! これは週刊新潮の写真コラムの連載をまとめたものだそうだ。 その写真コラムといえば、著者の尊敬する山本夏彦さんが連載されていたのでは、と思ったら、やはり以前依頼があったものの、山本氏...

たいして人気もないのではと高をくくっていたが、図書館で3か月も待ってようやく借りることができた! これは週刊新潮の写真コラムの連載をまとめたものだそうだ。 その写真コラムといえば、著者の尊敬する山本夏彦さんが連載されていたのでは、と思ったら、やはり以前依頼があったものの、山本氏の後はちょっとおこがましいと断っていたのだそう。 「はじめに」で連載の苦労を(もちろんユーモアたっぷりに)語っておられたが、そこは藤原先生、今の日本の政治に対する鋭い指摘も、各国批判も、奥様やご子息との楽しげな日常も、あの藤原節とともに堪能させてもらった。 著者が子どもの頃、父新田次郎との近所の散策で、児童文学者の塚原健二郎氏と偶然出会うシーンは、そのまま「ヒコベエ」の中でも描かれていた。彼にとって父親との大切なエピソードだったんだなあ。

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2010/11/24

○(P43)モノ作りを滅ぼす株主至上主義  株主至上主義はモノ作りにとって最も大切な技術力、そして魅力ある商品を地道に作り続けるという魂までをも腐食する。株主至上主義の本場である米英でモノ作りがほぼ壊滅したのを見ればそれは明らかであろう。 ○(P55)政治家は迎合せず愚弄せず ...

○(P43)モノ作りを滅ぼす株主至上主義  株主至上主義はモノ作りにとって最も大切な技術力、そして魅力ある商品を地道に作り続けるという魂までをも腐食する。株主至上主義の本場である米英でモノ作りがほぼ壊滅したのを見ればそれは明らかであろう。 ○(P55)政治家は迎合せず愚弄せず  国民の歓心を買うような文句ばかりが並んでいるからである。国民のご機嫌とり競争としか映らない。  歓心を集めるスローガンとは賛成が多く反対者がせいぜい一割までのもの、と心得ているようでそういった文句ばかりが並ぶ。  ~中略~  国民の素朴な感情に迎合しないことが真の政治ではないのか。そもそも普通使われる意味での国民とは現在この国に住む人々にすぎない。国家とはこれまでのすべての国民、これからのすべての国民のものでもある。従って政治家の頭には国民ばかりでなく国家もなくてはならない。国家のため国民に耐乏生活を強いることもありうるし、時には嘘をついて国民を欺かなければならないこともありうる。  日本人は戦術にすぐれるが戦略に劣るとよく言われる。士官は世界一だが大将は愚かとも言われる。マニフェストを見ても戦術ばかり、すなわち当面の問題に対する具体策ばかりである。足下を照らすより行く先を明るく照らすような言葉、大局観が欲しい。経済状況で容易に左右される数値目標を掲げたり、「国民の生活が一番」などと無意味なことを言ったり、「これをタダにする、あれをタダにする」などとバラマキばかりではどうしようもない。  ~中略~  つまらぬ甘言で票を得ようとするのは国民を愚弄している。政治家は国民に迎合してもいけないし愚弄してもいけない。 ○(P106)国民の目線  政治が国民の目線に立ったら国は滅んでしまう。国民の判断力は古今東西つねに低く、またその意見は気紛れだからだ。  ~中略~  ヒットラー、ブッシュ、小泉は国民の目線に立った政治を行い国家に災禍をもたらしたのである。  国民の目線とは国民の平均値ということだ。平均値で国を運営するのは余りにも危ない。外交、軍事だって「みんな仲良く」では成り立たない。平均値とかけ離れた歴史観、人間観、世界観、時には高度の権謀術数までが必要となる。経済だって、バラマキを喜んでいるような国民には口出しする資格さえない。  ~中略~  本を読まない国民の目線とはテレビのワイドショーの意見と言ってよい。彼等は視聴率を上げるための国民の安直な正義感に迎合し、また「平和と民主主義」を居丈高にふりかざしその方向に国民を誘導している。国民の軽躁を叱り飛ばすような発言はテレビに存在しない。  政治家の役割は国民の目線に立ったりその意見を拝聴することではない。国民の深い悩みやそこはかとない不安などを洞察し、それらに機敏に手を打ち、また大局観に立って人類の平和を希求し国家と国民を安寧に導くことである。どこもかしこも国民の目線に立つ政治家ばかり、というのは国民の一大不幸と言ってよい。

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2012/06/12

(2010.10.27読了)(2010.10.19借入) 本書は「週刊新潮」の写真コラムに連載したものを集めたものである。掲載期間は、2009年5月~2010年6月である。 似たようなテーマで5つの章に分けてあります。「歴史に何を学んだか」「日本の底力」「政治家の役割」「人間の本...

(2010.10.27読了)(2010.10.19借入) 本書は「週刊新潮」の写真コラムに連載したものを集めたものである。掲載期間は、2009年5月~2010年6月である。 似たようなテーマで5つの章に分けてあります。「歴史に何を学んだか」「日本の底力」「政治家の役割」「人間の本質は変わらない」「文化の力」です。 藤原正彦さんは、「若き数学者のアメリカ」で日本エッセイストクラブ賞を受賞して以来多くのエッセイを書いてきました。最初は藤原さんの身近なものとして、数学や父親の新田次郎のことを書いていたのですが、日本人について考えるようになり、「国家の品格」「祖国とは国語」など、日本人や日本の歴史、教育などに傾斜してきたようです。最近は、人生相談のコーナーを担当したり、なんでも屋になったようです。 藤原さんの著作に付き合ってきた人にとっては、あまり目新しい話はないかもしれませんが、藤原さんの独特の戯画的ユーモアを楽しみにしている人には、それなりに楽しめます。 ●イタリアの変化(16頁) 伝統的にイタリアは欧米諸国へ出稼ぎに出る国だったが、近年は入る方がはるかに多くなっている。経済の好調だったここ数年の増加はすさまじく、北アフリカや東欧からの移民は、不法滞在も含めると九百万人に達するとも言われる。 ●時価会計はグローバル・スタンダード(20頁) 2009年4月にアメリカは、時価会計基準の緩和を決定した。膨大な不良債権により青息吐息と言おうか、事実上死に体となっているいくつもの大手銀行を救うためである。他人が困っている時に押し付け、最大限利用したのに、自らに火の粉がかかるやさっさと変更したのである。 ●剱岳 点の記(32頁) 実はこの映画には、愚妻が浅野忠信さん扮する主人公の上司夫人として、三人の息子たちが陸軍測量部員として、ともに端役だが顔を出している。 ●国民の支持(56頁) 国民の歓心を買うというのは危険をはらむ。国民が政府を熱狂的に支持して10年後に国が潰れてしまうと言ったことさえある。前大戦のドイツや日本はそうだった。どちらの国でも、国民は軍部にだまされたのではなく、政府や軍部と一丸になって戦ったのだ。 ●サッカー(70頁) サッカーファンだが、最近見るのが少々嫌になった。相手選手のシャツや腕をちょこっと引張るものが後を絶たないからである。大多数の選手が常習的に行っているように見える。私がサッカーをしているころ、シャツを引張ったりする行為はまず見られなかった。 ●国民の目線(106頁) 政治が国民の目線に立ったら国は滅んでしまう。国民の判断力は古今東西常に低く、またその意見は気紛れだからだ。ヒットラーは再軍備強化のため1933年に国際連盟を脱退した。1936年に非武装地帯のラインラントに進駐し、1938年にはオーストリアを併合した。いずれの時も95%以上の支持を国民投票で得ていた。 ●カティンの森日本版(135頁) いつの日か突然、東のアメリカと西の中国が不可侵条約を結び、両国に何の脅威も与えず両国の中間に立とうとしていた「友愛」の国日本はその密約で東西に分割され、知識層は収容所に・・・。 ●朝青龍(145頁) 横綱朝青龍はいろいろの不祥事を起こして土俵を去った。横綱としての品格に最も触れると私に思えたのは、彼の粗暴な言動でも仮病でもない。勝った後のガッツポーズ、そして相手を土俵の外に押し出してからさらに一突きを加え土俵の下に転げ落とすだめ押しだった。 ☆藤原 正彦の本(既読) 「若き数学者のアメリカ」藤原正彦著、新潮社、1977.11.20 「数学者の言葉では」藤原正彦著、新潮社、1981.05.20 「父の旅 私の旅」藤原正彦著、新潮社、1987.07.05 「遥かなるケンブリッジ」藤原正彦著、新潮社、1991.10.15 「父の威厳」藤原正彦著、講談社、1994.06.27 「心は孤独な数学者」藤原正彦著、新潮社、1997.10.30 「古風堂々数学者」藤原正彦著、講談社、2000.06.15 「天才の栄光と挫折」藤原正彦著、NHK人間講座、2001.08.01 「世にも美しい数学入門」藤原正彦・小川洋子共著、ちくまプリマー新書、2005.04.10 「国家の品格」藤原正彦著、新潮新書、2005.11.20 「祖国とは国語」藤原正彦著、新潮社、2006.01.01 「世にも美しい日本語入門」安野光雅・藤原正彦共著、ちくまプリマー新書、2006.01.10 「人生に関する72章」藤原正彦著、新潮文庫、2009.02.01 「名著講義」藤原正彦著、文藝春秋、2009.12.10 「大いなる暗愚」藤原正彦著、新潮社、2010.09.15 (2010年10月28日・記)

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