捕食者なき世界 の商品レビュー
肉食動物の減少が生態系に影響をおぼしているは原因のひとつであろう。それだけは問題は解決しないと思うのだが。尚、原書を読んだ方から誤訳・誤解釈が多いとご指摘を頂いた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
オオカミはヘラジカを殺すのでけしからん、とばかりにオオカミを駆除してしまうとヘラジカが増えすぎて、その餌である森林は食べつくされ死肉をあさる動物や甲虫類も姿を消してしまう、というように、頂上捕食者がいなくなると(可愛い)中間層の動物が助けられるというのは短絡的な考えで自然に任せるのがよいのだ、という目新しくもなんともない内容。実例は豊富で、世界各地の例が次々と出てくるので、関心のある人にはいいのかもしれない。著者は「本来の姿」にあるべきだというが、本来の姿とはどういうものだろうか?ヘラジカが増えすぎて餌がなくなってまた減って、、、という新しい平衡状態ではダメなのだろうか? ・人為的な介入はなかなかうまくいかない。保護区という形で隔絶された地域に囲い込む戦略では近親交配が進んでしまう。捕食者がいなくなってしまった地域では、別の地域からわざわざ捕食者を連れてきたりもしているようだが、、、 ■世界は基本的に競争によって成り立ち、捕食は競争の重要な形態のひとつである。この世界は「あの資源がほしいから、そのために闘う」世界である ■危険のない世界はとても退屈で、そこに学ぶべきものはほとんど存在しない ヒーラット・ヴァーメイ
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捕食者がいなくなって生態系がヤバいよ本。論旨は一文で語れる内容だけど、そこに至るまでの過程が重厚長大。だれがなにを見たのか、何から何を導きだしたのか、どこをどのように調査したのか。発見・フィールドワークのロマンが詰まった一冊。
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文系人間のくせに科学にあこがれて時々こういう本も読む。途中で投げ出すことも珍しくないけど、これは平明でわかりやすい本だった。生態系の頂点に立つ捕食者の役割がどれだけ大切かを説いた本。
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頂点捕食者がいなくなった世界で起こる環境破壊について書かれた本。 「ケルプの森を守るラッコ」の話は知っていたが、その因果関係について考えたことは無かったので新鮮だった。 オオカミなどの頂点捕食者がいなくなって(シカの食害により)荒廃した自然環境を、オオカミを戻す事で復活される話...
頂点捕食者がいなくなった世界で起こる環境破壊について書かれた本。 「ケルプの森を守るラッコ」の話は知っていたが、その因果関係について考えたことは無かったので新鮮だった。 オオカミなどの頂点捕食者がいなくなって(シカの食害により)荒廃した自然環境を、オオカミを戻す事で復活される話には希望があるが、実際にはこれを適用できる場所が少ないのが問題。 先進国では、残された自然環境は分断化されてしまっているので、一群れのオオカミが生きれるだけの数のシカを育てられる大きさの森が存在しない、とか。 この問題を解決するにはヒトは増えすぎてしまったのかもしれないなぁ。 非常に考えされられる本だけど、印象に残ったエピソードとしては * ヒトの飼うネコはホビーとして狩りを行うので、想像以上に多くの鳥たちを殺していて、絶滅の危機に追いやっている * たった4頭のシャチがラッコを餌にし始めたために、4万頭いたラッコが絶滅しかしかかっている * そもそも、シャチは餌となるクジラの数が減ったのでラッコを食べるようになった
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食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨する頂点捕食者(トップ・プレデター)の不在が、実は、生態系を破壊し、多くの種を絶滅の危機に追いやっているとしたら——。 ラッコ(頂点捕食者=肉食動物)がウニ(草食動物)を食べ、ウニがケルプ(海藻)を食べる。人間が毛皮を求めてラッコを乱獲した結果、...
食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨する頂点捕食者(トップ・プレデター)の不在が、実は、生態系を破壊し、多くの種を絶滅の危機に追いやっているとしたら——。 ラッコ(頂点捕食者=肉食動物)がウニ(草食動物)を食べ、ウニがケルプ(海藻)を食べる。人間が毛皮を求めてラッコを乱獲した結果、食べられる危険のなくなったウニが大増殖して、ケルプを食べ尽くす。ケルプのない海には、そこを住処とする多様な生物が集まらない。 オオカミ(頂点捕食者=肉食動物)がシカ(草食動物)を食べ、シカが草木を食べる。人間が危険なオオカミを排除すると、シカが大増殖して、草木が育たない。鬱蒼としていた森はまばらになり、土地はやせ細って、そこを住処としていた多くの生物が絶滅する。 豊かな自然を守るために狩猟が禁止された国立公園では、天敵のいないシカたちが我が物顔でエサを漁り、かえって植生が破壊されている。森林が荒廃し、生物の多様性が失われたのは、大型肉食獣を根絶してしまったからである。 生態系を上からコントロールする巨大で強力な頂点捕食者の存在は、生物が多様な進化を遂げるための駆動力ともなる。 食物連鎖の「食う・食われる」という関係は両者に緊張状態を生み出す。ピラミッドの下位に位置する被食者にとって、上位の捕食者に食べられないための戦略をとることが生き残りの条件になる。「捕食者との軍拡競争」によって、さまざまな形態に進化するのだ。 捕食者は、最も食べやすい相手(=最も弱く劣った個体)から食べるので、結果として、その進化を後押しする。より逃げ足の速い、より防御機能に優れた個体が生き残り、その遺伝子が受け継がれることで、進化のスピードが加速する。 生物の多様性が地球の歴史上かつてないほどのスピードで失われているのはなぜか。気候変動や環境破壊が原因だとする意見が多数を占める中で、人類が食われる存在から食う存在に変わったから、1万2000年前の更新世の終わりに大型肉食獣を駆逐してしまったから、という本書の主張は刺激的。 今年の10月にCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が名古屋で開かれる。ということは、来春の入試の時事問題では「はやぶさ」と並んで「生物多様性」が大きなテーマになるはず。子どもに聞かれて慌てないように(笑)本書で知恵をつけておくのもいいかもしれない。おすすめ。
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