半分のぼった黄色い太陽 の商品レビュー
1960年代のナイジェリア内乱を舞台にした作品。 恥ずかしながらナイジェリアのことをほとんど知らないまま読んだけど、主人公のひとり・ウグウはまさに何も知らない田舎育ちの少年で、彼の目を通して語られる描写ですんなりと作品に入っていける。 作中で白人は黒人を差別しているけど、黒人も...
1960年代のナイジェリア内乱を舞台にした作品。 恥ずかしながらナイジェリアのことをほとんど知らないまま読んだけど、主人公のひとり・ウグウはまさに何も知らない田舎育ちの少年で、彼の目を通して語られる描写ですんなりと作品に入っていける。 作中で白人は黒人を差別しているけど、黒人も白人を差別しており、黒人の中でもまた民族差別がある。民族差別こそが内乱の一因。 戦争が進むにつれ、リベラルなインテリだったはずのウグウの主人・オデニボでさえ差別的な発言をする場面があり、衝撃だったが、長引く戦争で登場人物たちの精神状態が少しずつ少しずつおかしくなっていくのがよくわかった。 日本の戦争文学を読んでもいつも思うことだけど、戦争が激化して、空襲と飢えで追いつめられ、次々と死んでいく民間人たちの描写がただ辛い。
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少し早いですが、今年一番の読み応えある作品だったかも、です。2段組みで、厚みもあり、体力を消耗するようなどっしりとした読後感。 1967年ナイジェリアで起こった内戦、ビアフラ戦争を背景に姉妹、家族、男女の愛憎といった普遍的ともいえる人間ドラマを肉厚に描いた作品です。 アフリカとい...
少し早いですが、今年一番の読み応えある作品だったかも、です。2段組みで、厚みもあり、体力を消耗するようなどっしりとした読後感。 1967年ナイジェリアで起こった内戦、ビアフラ戦争を背景に姉妹、家族、男女の愛憎といった普遍的ともいえる人間ドラマを肉厚に描いた作品です。 アフリカといえば、サバンナや野生動物、陽気な人々、といったあまりにステレオタイプな見方をしてしまいがちで恥ずかしいばかりですが、この本を通じ、アフリカ大陸の数え切れないほどの民族や文化のうねり、また、列強による支配や戦争を経て、未だにその影響をひきずり内戦や政情不安が絶えないことを改めて知ることができました。 この戦争については、ナイジェリア本国でも未だに多く語られていないということで、若い作者の勇気と努力、才能に頭が下がる思いです。 それとは別に、登場人物たちの人間ドラマがまた迫力満点でおもしろかったです。特に双子の娘オランナとカイネネの生き様、田舎出の新米ハウスボーイ、ウグウの成長に目が離せませんでした。 また、かたや裕福で、イギリスへ留学をしたりといったインテリ層と、茅葺き土壁の家で育ち、呪術や祈祷師の存在する暮らしをしている貧しい人々との対比が興味深かったです。戦争下の暮らしは悲惨で残酷ですが、世界中のあらゆる戦争で同じようなことが繰り返されている訳で、やるせない思いです。朝出かけていった家族がいなくなってしまう恐ろしさに今更ながら戦慄を覚えました。
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3人の視点から語られる、愛であり、一族の歴史であり、戦争であり、貧困、搾取、あらゆるものが大きな流れの中に組み込まれている。言葉も的確で、風景が広がるような感じがあった。 ことさらに、ビアフラ戦争を非難している訳ではないが、世界中で起きている戦争も大なり小なりこのような図式である...
3人の視点から語られる、愛であり、一族の歴史であり、戦争であり、貧困、搾取、あらゆるものが大きな流れの中に組み込まれている。言葉も的確で、風景が広がるような感じがあった。 ことさらに、ビアフラ戦争を非難している訳ではないが、世界中で起きている戦争も大なり小なりこのような図式であることが、本当によく分かる。そして、何より大切なことは、生き延びることだ。
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冬休みに読むのを楽しみにしてた本。お腹の膨れた子どもたちのイメージを世界に流通させた1960年代のビアフラ戦争を背景に、2組のカップルとひとりの少年の、約10年にわたる関係を描く。 ウグウがやがて綴ることになる本のタイトル「私たちが死んだとき世界は沈黙していた」が示すように、作家...
冬休みに読むのを楽しみにしてた本。お腹の膨れた子どもたちのイメージを世界に流通させた1960年代のビアフラ戦争を背景に、2組のカップルとひとりの少年の、約10年にわたる関係を描く。 ウグウがやがて綴ることになる本のタイトル「私たちが死んだとき世界は沈黙していた」が示すように、作家は、戦争を引き起こし支えた、国際社会の植民地主義と人種主義、民族ナショナリズム、権力者の腐敗、虐殺の対象となったイボ人の側にもあった疑心や差別、暴力に対する鋭い批判と怒りを抱いているが、それは慎重に抑制されて、5人の間の愛憎に焦点をあてた繊細な物語を支える力強い基盤となっている。 5人の中でもっとも魅力的な人物は、皮肉さと大胆さをあわせもった、オランナの双子の姉、カイネネだろう。中産階級の裕福な生活を崩壊させた残虐な戦争の下で、バラバラになった人々をふたたび結びあわせた彼女が突然姿を消したとき、ゆたかな性愛描写で彩られたカップルたちの物語が、それを超える愛と痛みを語っていたことに気づき、深い感動につつまれる。 (ちょっと文句)しかし、いくら作家が歴史的背景より小説の中身の方が大事と言ってるからって、もうすこし中身のある解説書けなかったものか。必要な注もつけてないし、なんか怠慢っぽい。
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