いちにち8ミリの。 の商品レビュー
中学3年生のわたしはある日庭の「ゴリづらの木」の上に 男の子がいることに気づいた。姿は見えないけれど声はする。 最初はゴリづらの顔を見てやろうと必死だったけれど、 そのうち学校での悩みや気になる加藤くんについて相談するようになった。 どうもわたしは小さい頃ゴリづらと約束をしたよう...
中学3年生のわたしはある日庭の「ゴリづらの木」の上に 男の子がいることに気づいた。姿は見えないけれど声はする。 最初はゴリづらの顔を見てやろうと必死だったけれど、 そのうち学校での悩みや気になる加藤くんについて相談するようになった。 どうもわたしは小さい頃ゴリづらと約束をしたようだけれど まったく思い出せないでいる。 「ゴリづらの木」 年末に閉演が決まったワールドパークで12年園長を務める俺の前に 林勘助の子孫の復讐を目論む忍者の荒巻が現れた。 本当に子孫でないか見張るのだとつきまとう荒巻に辟易するが 本物の忍者がいると何故か評判になりワールドパークの入園者が急増。 しかし親元から家系図が届いて俺が標的でないことがわかると 荒巻は姿を消し、ついに閉園の日が訪れる。 「手裏剣ゴーラウンド」 美澄を愛する俺は彼女を狙う石や神主の相手をするのに忙しい。 突然動き出した不思議な石の目的は なんと美澄の家を見守れる丘の上に移動すること。 一日8ミリしか動けない彼の努力の積み重ねも 怪しい神主・太田源信の念力ショーのために毎年戻されてしまう。 源信のたくらみを看破しようと 俺は野生時代に一緒にいたカラスのクロコと画策する。 「いちにち8ミリの。」 装丁・装画:大路浩美 故中島らもさんの娘さんだそうです。 童話のような少し不思議な短編集です。 今の社会からはみ出した人(動物、石も含む)の存在によって 当たり前だと思っていたことが別の角度から見えてくる。 「手裏剣ゴーラウンド」が一番わかりやすくて面白いかなあ。
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幼いころに出会った、顔を見せない男の子。彼は絶対に庭のアカガシの木から下りようとせず・・・「ゴリづらの木」 曾祖父の曾祖父の曾祖父の曾祖父の代から、抜け忍を追っている荒巻さん(通称シャケオ)。彼に狙われた廃園間近の遊園地園長の憂鬱・・・「手裏剣ゴーラウンド」 村のご神体と...
幼いころに出会った、顔を見せない男の子。彼は絶対に庭のアカガシの木から下りようとせず・・・「ゴリづらの木」 曾祖父の曾祖父の曾祖父の曾祖父の代から、抜け忍を追っている荒巻さん(通称シャケオ)。彼に狙われた廃園間近の遊園地園長の憂鬱・・・「手裏剣ゴーラウンド」 村のご神体となっている石は、ある目的のために一日8ミリだけ前へ進む。それを知っているのは石の言葉がわかる一匹の猿だけで・・・「いちにち8ミリの。」 故・中島らもさんの娘さんであるところの中島さなえさんが書かれた短編集。 ちょっとおかしくて、そしてちょっぴり哀しくて。 独特の世界を持っている方ですね。 ただ表題作は最初なかなか楽しく読んでいて、半ばで「おや?」と思い始めたのですが、この展開でこのラストに結びつくのかぁとややトーンダウンしてしまいました。 ああいう風に繋がる意味が、ちょっとよくわからなかった・・・。 でもあとの2作品はよかった。 特に、祖父の死期間際に再び現れた不思議な少年が軸となる「ゴリづらの木」は、切ない余韻が残る作品でした(大人になった優が帰ってくるラスト2ページは余計かな~とも思いましたが)。 「新しい約束をしよう。優は、ただ、背筋をのばすだけ」 ゴリづらの、すべてを許し、包み込む優しさに涙。
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郷愁を感じてしまう。特にごりずらの木がよかった。これは考えるとおばけの話しなんだろうけど、清々しい気持ちで読み終えました。一日に8mm動く事が出来る石と猿が恋い焦がれる女性はどんな人だろうと想像するのも楽しいです。
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購入した本。 児童書の雰囲気。穏やかで、淡々としていて、もの悲しい。 どの物語も切ないんだけど、う~ん。 あまり好きではないな。
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現実のような童話のような寓話のようなファンタジー。 この独特な雰囲気はやっぱり中島らものDNAなんだろうなぁ~ 表題作は猿の壮太が主人公であこがれの美澄のために一日8ミリ必死の思いで動く石のお話し。ほのぼのした雰囲気からちょっと残酷なラストが印象的でした。『手裏剣メリーゴーランド...
現実のような童話のような寓話のようなファンタジー。 この独特な雰囲気はやっぱり中島らものDNAなんだろうなぁ~ 表題作は猿の壮太が主人公であこがれの美澄のために一日8ミリ必死の思いで動く石のお話し。ほのぼのした雰囲気からちょっと残酷なラストが印象的でした。『手裏剣メリーゴーランド』先祖代々抜け忍を追いかける荒巻シャケオが笑える。『ゴリづらの木』はアカガシの木に登ったまま降りてこないゴリづらの男の子をめぐっての祖父と娘の物語。 個人的には、この切なくてあったかでじーんとくる『ゴリづらの木』が一番よかったです。
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※このレビューにはネタバレを含みます
表題作の「いちにち8ミリの。」は独特の雰囲気。現実味が無いようで実は心理をよく見抜いていて、それでいて押し付けがましくなく、猿やカラスや石の気持ちがなんとも童話的。そう、人間と同じ意志があって、それぞれの望みが、想いが切ない。かなえられない想いほどやっかいなものはない。 ーあたりまえだ。誰もが自分のことで手一杯だからな。- ーいいか覚えておけ。お前の問題はお前自身でしかどうすることもできない。―人のためになにかをしたのではなく、お前は目の前のやるべきことをこなしたにすぎない。- 他の「手裏剣ゴーラウンド」「ゴリづらの木」もそれぞれ良かった。
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引きずられてゆくような気分になってしまう小説に出会うと苦しくなる。それが解っているので物語性の高そうな小説は意識して避けてしまっている。エンターテイメント系からは、そんな訳で足が(手が?)遠のく。「だからなんなの」という評が付きそうな小説の方が得てして好きになる。とはいっても物語...
引きずられてゆくような気分になってしまう小説に出会うと苦しくなる。それが解っているので物語性の高そうな小説は意識して避けてしまっている。エンターテイメント系からは、そんな訳で足が(手が?)遠のく。「だからなんなの」という評が付きそうな小説の方が得てして好きになる。とはいっても物語性の全くない小説などと言うものはそうそうある訳ではないし、読んでみて初めて解るものだから、その度に苦しくなったり案外そうでも無かったりというヒヤヒヤとしたものをやり過ごすことになる。それでも時に物語に吸い寄せられていることを意識しつつも苦しくもならずに頁をめくることのできる本に出会うことがある。これはそんな種類の珍しい小説。 これが小説デビューなの?と何度も思い返すほどに、どこかしらこなれた感じのする文章である。言葉の流れが小気味よい。好みでいえば決して好きなタイプの言葉使いではないのだけれど、違和感に締め付けられることはない。そういう気分は一種の抗原抗体反応に似たアレルギー的嫌悪感なのだから、理屈抜きに起こってしまう筈なのだけれど。きっとその反応が起こらないようにしているのは、現実の世界とは不釣り合いな異界のものたちが話の中に登場するために起きる反作用なのだと思う。自分は、蛇が踏まれると母親の姿になって出てくるというような話が好きなのだ、結局。 三篇の中では、表題作の「いちにち8ミリの。」が一番長く、力も入っていて、そして恐らく共感や共鳴といってものを呼び寄せ易い短篇なのだろうと思う。けれど個人的には、さびれたテーマパークに忍者が現れる「手裏剣ゴーラウンド」の読後感が一番好きである。 三篇共に共通すると思うのは「別れ」ということ。しかし「手裏剣ゴーラウンド」には、そこにご都合主義的な再会の兆しがなく、そこが言ってみれば純粋なのだ。そういうエピソードが持ち込まれることも、もちろんアリなのだけれど(例えば自分も中谷美紀の柴田純刑事には生きていて欲しいと思ったクチですけれど)、それが見えると何となくもぞもぞとして居心地が悪くなってしまう。別離は別離としてあればよく、再び会えるというギャランティは不要なのだ、と自分はどうやら考えるらしい。 ギャランティされていないことに向かってゆこうとする生き方には、何故か惹かれる。無駄かもしれない行為には、別離の意味を越えてしまう可能性が内包されている。もちろん、それは単なる可能性である。それでいいじゃないかと思うのだ。可能性こそが生きる意味なんだから。 とにかく、中島さなえという小説家、今後も楽しみです。
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表題作は、自分がぼんやりとしていたせいか、立ち位置がよくわからなくなってしまいました。「ゴリづらの木」は、いいですね。
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+++ 好きな彼女に会いたくて、1日8ミリずつうごく石と、石と話のできるペットの猿を描いた表題作の他、「ゴリづらの木」「手裏剣ゴーラウンド」など、どこかにありそうで、どこにもなかったお話3篇収録。懐かしくて胸の奥底をぎゅっと掴まれるようなこの短編集が小説デビュー作となる。父・中島...
+++ 好きな彼女に会いたくて、1日8ミリずつうごく石と、石と話のできるペットの猿を描いた表題作の他、「ゴリづらの木」「手裏剣ゴーラウンド」など、どこかにありそうで、どこにもなかったお話3篇収録。懐かしくて胸の奥底をぎゅっと掴まれるようなこの短編集が小説デビュー作となる。父・中島らもを超える物語の紡ぎ手の登場! +++ 日々の暮らしにほんの少しだけ不思議が交じるときっとこんな風景になるのだろう。そんな風に思わせてくれる一冊である。知っているはずはないのに、いつかみた景色の中にいるような懐かしさと、哲学的にさえみえる内容がごくごく自然に撚り合わされてやさしさになっているように思う。
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「誰かを心から想う気持ちは限りなく美しくそして哀しい」って、文字にするとあまりにも陳腐で色あせたものではあるけど、それでもなおそう言いたくなる。3つのお話のなかで最初の1章、「ゴリづらの木」に心をワシヅカミ。心の奥深いところからあふれる涙が心地よかった。
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