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卵をめぐる祖父の戦争 の商品レビュー

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86件のお客様レビュー

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2011/09/19

 夜、出歩くのは危険がいっぱい。 気を付けなきゃいけないのは、若い女性だけじゃない。 猫もそうだ。それも雄猫が危ない。 うちの猫、丈夫に育ち、もうすぐ1歳。お年頃。家から出たがるようになってきた。 ある夜、家の隣の空き地で、うちの猫と、知らない猫がいっしょにいる。 知らない猫は、...

 夜、出歩くのは危険がいっぱい。 気を付けなきゃいけないのは、若い女性だけじゃない。 猫もそうだ。それも雄猫が危ない。 うちの猫、丈夫に育ち、もうすぐ1歳。お年頃。家から出たがるようになってきた。 ある夜、家の隣の空き地で、うちの猫と、知らない猫がいっしょにいる。 知らない猫は、人の姿を見ると逃げていった。うちの猫はというと呆然としている。 翌日、元気がない。食欲がない。その翌日も。 これはおかしいと、動物病院に連れて行くと、熱が40度以上もあるとのこと。 雄猫が熱を出す原因の多くは、ケンカということで、体を調べてみると、案の定、しっぽを噛まれている。 化膿止めの注射を打って、薬をもらって帰る。 2週間後、再び、様子がおかしい。 動物病院に連れて行くと、やはり熱がある。また体を調べると…噛まれていた。 猫の世界、家の一歩外は、怖いお兄さんがウロウロしている恐ろしいところなんだ。 『卵をめぐる祖父の戦争』の舞台は、第二次大戦中の物資が絶望的に不足しているレニングラード。人々は極端に少ない配給の食料で飢えに耐えていた。 街はナチスドイツに包囲され、夜毎に空襲があり、人々は明日のパンも命もあるかわからない状況に陥っていた。 そんななか、レフとコーリャの二人は、軍のお偉いさんから命令を受ける。それは、大佐の娘の結婚披露宴で使う卵を調達してくること。 街の中の人間は、自分が生きるのに精一杯。街の外には、ドイツ軍。 敵だらけ。怖いお兄さんウロウロのなんてレベルじゃない。生きるか死ぬか。 戦争のむごたらしさの中、披露宴の卵を調達するというばかばかしさ。臆病なレフと憎めないコーリャ、二人の奇妙な友情。死と隣り合った中での性への妄想。 こんな相反することを見事に著者のベニホフは書ききった。 この人は『25時』で、明日、刑務所に収監される主人公のやりきれなさをただの1日を描くことで表現した。 普通の一日が、明日につながらない。 今作では、さらに物語の奥行きが広がった。 ハリウッド映画的なラストは気になるが、魅力あふれる作品であることは間違いない。

Posted byブクログ

2011/11/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

リニューアルしたポケミス第1作は評判通りとても良かった。戦争物なので「あー面白かった」ではすまない重い読後感はある。戦争は人類最大の愚行だとつくづく思う。愚かでグロテスクで残酷なそのありようが胸に突き刺さる。 しかしそれでもなお、登場する若者のなんと魅力的なことか!主人公レフは実に身近な感じで、その気持ちに寄り添いやすい。ヴィカという女の子の造型も類型的でなくてとても良い。極め付きは、主人公の親友となる金髪碧眼のロシア青年コーリャ。女の子に目がなくて(この言い方は上品すぎるな)口を開けば下ネタ、生命力にあふれている。レフとの掛け合いが実に可笑しい。 (これから読む人は以下をパスして下さい) だから、ラストは哀切きわまりない。そうなるのではないかと思って読んできたのだが、あまりにあっけなくコーリャは死んでしまう。戦争とはこうやって人が無意味に死ぬことなのだとあらためて思う。 それだけに、ヴィカの再登場が胸を打つ。プロローグを読み直して「料理をしない」祖母の姿を思い描いた。とても良かったです。

Posted byブクログ

2010/10/20

コーリャの抱えているほんの小さな秘密が人物の奥行きを深くしている。読み終わった瞬間にまた冒頭から読みたくなるような本。素敵だ。

Posted byブクログ

2011/08/03

1942年、ドイツ包囲下のレニングラードで暮らしていた17歳のレフが、軍から受けた命令は、卵の調達だった。相棒の青年兵コーリャと共に探索の旅に出るが、飢えに苦しむこの町で、卵など見つかるはずはない。邦題からして不思議な、それでいて戦時下の緊迫した雰囲気の中、物語は進んでいきます。...

1942年、ドイツ包囲下のレニングラードで暮らしていた17歳のレフが、軍から受けた命令は、卵の調達だった。相棒の青年兵コーリャと共に探索の旅に出るが、飢えに苦しむこの町で、卵など見つかるはずはない。邦題からして不思議な、それでいて戦時下の緊迫した雰囲気の中、物語は進んでいきます。残酷な描写が、その後の下品な(?)場面でやわらげられたりもします。決して勇猛果敢ではない、でもれっきとした冒険小説としてお勧め。

Posted byブクログ

2010/10/03

本当に題名通りの本です。この題名通りの内容なのにどうしてこんなに深みがあって、心に残るのだろう…。装丁も最高。 終わりまで読んでから、冒頭部分を読み返して、ちょっとハッピーエンド?を二回味わいなおしました。

Posted byブクログ

2010/09/30

訳者あとがきには、反戦メッセージが云々って描いてあるけど、僕には、長生きしたければ長いものには巻かれろ、世の中の不正には目をつむれ、国家権力には個人の抵抗なんて屁みたいなもの、としか読めなかったけど。 ジュブナイルじゃないからこれで良いんだろうけどね。

Posted byブクログ