「食料自給率」の罠 の商品レビュー
農学出身ではない筆者(出身は工学/システム系)が究極的にマクロ視点に立ち、食料自給率の無意味さ?に切り込んだ本書。 講演会に行くことになったので予習のため前日に一気に読破。その気になったら本ってけっこうなスピードで読めるもんですね(笑) 食料自給率が何かというのをまず認識し、...
農学出身ではない筆者(出身は工学/システム系)が究極的にマクロ視点に立ち、食料自給率の無意味さ?に切り込んだ本書。 講演会に行くことになったので予習のため前日に一気に読破。その気になったら本ってけっこうなスピードで読めるもんですね(笑) 食料自給率が何かというのをまず認識し、世界の中で日本の農業をどう見るか、ということを行い、最後に筆者なりの処方箋が書かれています。 日本の農業/食料問題を入門的に俯瞰するのに適した一冊じゃないかなと思いました。 この手の本は農業経済の息がかかった人が書くことが多いんですが、この方はそうでないからかけっこう新鮮な目線が多い。twitter/mixiで気になったフレーズは抜き出してつぶやいたのですが、まあそういう事です。 石油ショックは日本社会の大きなトラウマになっている。(中略)多くの国民は、これと似たような事態が食料に関しても起こるのではないかと心配している。p44 我々は、主に贅沢をするために食料を輸入している。p69 貧富の格差が激しく、極端なポピュリズムにより政権を獲得した政府には、そのような合理的な判断(註:アルゼンチンが穀物禁輸措置をしないという選択をすること)ができなかったようだ。p80 食料自給率を食料安保に結びつける議論は、どこかその杞の国の人の心配に似ている。p91 食料危機の歴史を振り返ると、その真の原因は政策の失敗にある。食料危機は天災ではなく、人災である。p92 門外漢だから言える過激なことも、専門家に言わせれば多分、「現実を見てないよね」ということになるんだろうけど、この方はそれをはねのけられる言葉の巧さと強さを持ち合わせてると思いました。 最近この手の言説がぼちぼち出てきて、自給率の非万能性というのが広まってきたみたいです。今後も活発な論説を期待したいです。
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