つばさものがたり の商品レビュー
人が生きるということ、人生の充実感や幸せとは
26歳のパティシエール「小麦」が、家族の助力を得て夢だった洋菓子店を開店し、皆に長く愛される美味しいケーキ作りに正に命をかける、優しくも切ないメルヘンチックな家族小説である。中でも不思議な能力を持つ幼い甥っ子「叶夢」が、小麦に生きる希望と力を与えてくれる存在となり、一見物語にそぐ...
26歳のパティシエール「小麦」が、家族の助力を得て夢だった洋菓子店を開店し、皆に長く愛される美味しいケーキ作りに正に命をかける、優しくも切ないメルヘンチックな家族小説である。中でも不思議な能力を持つ幼い甥っ子「叶夢」が、小麦に生きる希望と力を与えてくれる存在となり、一見物語にそぐわない表題の秘密の鍵も握っている。小麦の、降りかかる困難にめげそうになりながらも、自分の生を全うしようと奮闘する明るくひたむきな姿に愛おしさを覚え、いつしか奇跡を信じたくなる。小麦を支える家族や周囲の人々の思いやりや温かさにも胸が熱くなる。人が生きるということ、人生の充実感や幸せとはどういうことなのか、改めて考えさせてくれる。
fugyogyo
雫井脩介さんは 『火の粉』『望み』に続き3作目 『つばさものがたり』 今回は既読の2作と全く趣の違った作品だった。 【あらすじ】 亡き父との約束を果たすべく、パティシエを目指す26歳の小麦。だが夢を追いかける道半ばにして乳癌が見つかり、転移、再発と病魔が襲う。 一方、小麦の兄...
雫井脩介さんは 『火の粉』『望み』に続き3作目 『つばさものがたり』 今回は既読の2作と全く趣の違った作品だった。 【あらすじ】 亡き父との約束を果たすべく、パティシエを目指す26歳の小麦。だが夢を追いかける道半ばにして乳癌が見つかり、転移、再発と病魔が襲う。 一方、小麦の兄である代二郎の息子 叶夢は一風変わった子供で、彼にはレイという名の天使が見えるというのだが・・・ 【感想】 雫井脩介さんは社会派ミステリーのイメージだったので、のっけから天使登場というまさかのファンタジー要素に驚愕・・・ きっとこれも重要な伏線なんだろうと展開を期待して読み進めたが、案外シンプルに纏まったお涙ホロリの感動小説だった。 あれ?とっても温かいお話なんだけど、 求めている感じと何かが違う。 雫井脩介さんの既読作品に比べインパクトが弱めで、なんだか物足りなさを感じる作品だった。 例えば、レイの存在が唯一見える叶夢くんだが、彼自身の心の内側が隠されたままで、あまり精神的な成長も感じられない。父代二郎が感じる目に見える成長ではなく、叶夢くん目線での展開や描写が欲しかった。それを期待し過ぎたからか、何度も出てくる叶夢くんとレイとのやり取りには、中弛み感を覚えた。 また、小麦が病状をひた隠しに孤軍奮闘する姿が見ていて痛々しく、独りよがりにも感じてしまった。家族に隠し通せる筈がないのに病状を打ち明けずにいることが、自分を追い込み、その結果が大切な家族にも辛い思いをさせるとは思い至らなかったのだろうか。 同情は出来るが、共感が難しかった。 余談だが、ラストは出来れば再出発した店舗に新たに迎えられたメンバーが活躍している姿で終えて欲しかった。レイが迎えに来たのは予想通り過ぎて、やはり物足りなさを感じた。 本作は雫井脩介さんの初読みには、素直に感動する心温かい作品だと思う。ただ、他作品とのテイストが違い過ぎて、期待値をあげ過ぎたからか、私にはやや消化不良だった。
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ファンタジー要素強めだが、あたたかい空気感が良かった。前半で中々苦しい状況からの、後半での巻き返しにどんどんのめり込んでいった。ラストは感動して涙が出た。
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パティシエの小麦は病を患い、実家に戻り小さな洋菓子店を開く。甥の叶夢くんの成長など絡め、小麦の残された日々の全力疾走が始まる。登場人物がみな優しくて家族の絆が温かかった。
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メルヘンなんじゃないかと半信半疑で読み進めましたが、正直面白かったです。 信じられない奇跡が起きたりしないかと、ヒヤヒヤしながら、でもそんな事を期待したりして、感情移入出来る世界観。 確か犯人に告ぐ、は10年以上前に読んだはずだけど、全然作風が違うんだなぁ、と。 物語に出て来る人...
メルヘンなんじゃないかと半信半疑で読み進めましたが、正直面白かったです。 信じられない奇跡が起きたりしないかと、ヒヤヒヤしながら、でもそんな事を期待したりして、感情移入出来る世界観。 確か犯人に告ぐ、は10年以上前に読んだはずだけど、全然作風が違うんだなぁ、と。 物語に出て来る人が、皆んな素敵な人なんだけど、自分が同じ環境なら、絶対こんなふうには振る舞えないなぁ、と自己嫌悪に陥るのが、自分自身のダメさ加減が思い起こされて、それが残念。
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涙涙でした。 頑張り屋の小麦が、信頼できる仲間たちとケーキ屋を最後まで続けられたこと、五条さんと親友に対する切ない思い、代次郎の妹に対する必死な助け、お母さんが小麦の背中をさする優しい手。。 最後の最後まで夢を追いかけて頑張った小麦に拍手です。
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本当に素敵な本だった。読みと終わって、涙がたくさん出た。 小麦、代二郎、叶夢、レオ、お母さん、道恵、みんな素敵な人たちばかりだった。面白くて読み止まらなかったし、とても胸がいっぱい。 レオのところが面白くて声を出して笑ったし、途中も何度か涙してしまう場面があった。本当に面白かっ...
本当に素敵な本だった。読みと終わって、涙がたくさん出た。 小麦、代二郎、叶夢、レオ、お母さん、道恵、みんな素敵な人たちばかりだった。面白くて読み止まらなかったし、とても胸がいっぱい。 レオのところが面白くて声を出して笑ったし、途中も何度か涙してしまう場面があった。本当に面白かった。小麦の優しい人柄がとても好き。代二郎の口は悪いけど根が温かいような、優しいような人柄もとても好きだし、叶夢くんの優しさというか、優しさがとても好きだった。 天使と妖精のくだりなど、ほんと面白かった!
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パティシエールの小麦は、母と一緒に自身のケーキ屋さんを開くという夢を叶えるため東京で頑張ってきたが、癌に冒されさらに再発の宣告を受けたことで、「このままでは終われない」と一念発起し、故郷でケーキ屋をオープンさせることになる…。経営はうまくいかずまた病魔も確実に小麦の身体を蝕んでい...
パティシエールの小麦は、母と一緒に自身のケーキ屋さんを開くという夢を叶えるため東京で頑張ってきたが、癌に冒されさらに再発の宣告を受けたことで、「このままでは終われない」と一念発起し、故郷でケーキ屋をオープンさせることになる…。経営はうまくいかずまた病魔も確実に小麦の身体を蝕んでいく…また甥の叶夢は、天使になるために頑張っているレイが見えると言いだし…。 ひたむきに頑張る小麦の姿とそれを支える家族や従業員の様子に心打たれました。また天使になりたいと頑張っているとレイのことを話す叶夢…そんなことはないと打ち消さずに一緒に応援するようになる家族の姿にも、あったかい気持ちにさせられました。ラストはなんとも切ない気持ちになりましたが、すごくキレイな情景を思い描くことができました。読めてよかった作品です。
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「私……このまま終わりたくない」主人公・小麦が、天使を呼び寄せた。この一言で、すべてが変わり、動き出した。勿論、天使のレイも小麦のオーラを食べて応援!。 お店の看板の責任と苦悩、恍惚と不安が、伝わる。もし、小麦の最初の店がもし立地がよければ、あのケーキでそこそこ売れ、春田シェフの言葉は残念ながら通じないかもしれない。そして中川洋菓子店のような結末を止められないかも、…。 間に合ううちに再起できてよかった。小麦の魂のようなケーキが間に合ってよかった。最後になってわかる、必要な回り道だったのかも、と。けど、お店の開店時に病気のことを打ち明けていれば、もっと展開は違っていたかもしない。それぞれの気持ちは痛いほど通じるけど、わかってはいるけど、切ない。神さまも天使もいるのに、いじわるだ。ここまでしないと、満足できるケーキができないのかって。 きっと、最期の時まで、病気のことは、五条さんや早佑梨さんには伝えなかった。世界が違うということは、こういうことなのかもしれない。 天使のレイが舞う中で、やはり念う。蝋燭が燃え尽きる前の一瞬の鮮やかさを、ありがとう、と。 最後に、表紙カバーの挿絵に気が付く。天子が羽を休める手頃な平屋の屋根。favori d'ange (ファボリ・ダンジュ)だったんですね。
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小麦の苦悩や夢がとても丁寧に描かれています。叶夢とレイの存在は最初は戸惑いますが、登場人物と同じように読み進めるうちにしっくりきます。とてもいい役割を果たしてくれます。死を前にして果たす夢。難しい問題です。周りにも多大な影響をもたらしますが、この本を読むとこれでいいと思いました。...
小麦の苦悩や夢がとても丁寧に描かれています。叶夢とレイの存在は最初は戸惑いますが、登場人物と同じように読み進めるうちにしっくりきます。とてもいい役割を果たしてくれます。死を前にして果たす夢。難しい問題です。周りにも多大な影響をもたらしますが、この本を読むとこれでいいと思いました。後半は涙が止まらない展開でした。大好き度❤️❤️❤️
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