俺俺 の商品レビュー
携帯電話を盗んだのは、あくまでもその場のなりゆきだった。盗んで何をするというつもりもなかった。たんに、マクドナルドなカウンター席で俺の左側にいた男が、うっかり俺のトレーに自分の携帯を置いただけのことだ。俺がトレーをあまりに左に押しやっていたので、そいつは自分のトレーと勘違いしたの...
携帯電話を盗んだのは、あくまでもその場のなりゆきだった。盗んで何をするというつもりもなかった。たんに、マクドナルドなカウンター席で俺の左側にいた男が、うっかり俺のトレーに自分の携帯を置いただけのことだ。俺がトレーをあまりに左に押しやっていたので、そいつは自分のトレーと勘違いしたのだろう。置いたは席を立とうとするまでその紺色の携帯に気づかず、トレーを持ち上げたときに初めて見つけた。
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今、まさに、俺俺時代なのかもしれない。 私だって、自分以外の他人に会えば、電源をオンにしなくちゃならない。 自分と他人の境目あってないようなものなのか。 でも、自分には結婚とかできないんだよな。
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他者とは結局は分かり合えない、 とはいえ、意外と同じことを考えていたりするもの。 自分は他人とは違う、唯一無二の存在である、 という自我は誰もが多かれ少なかれ持っていて、 その自我を守りたいがために誰かを傷つけてしまったり、 自我が傷つけられたことで自分そのものを亡きものにして...
他者とは結局は分かり合えない、 とはいえ、意外と同じことを考えていたりするもの。 自分は他人とは違う、唯一無二の存在である、 という自我は誰もが多かれ少なかれ持っていて、 その自我を守りたいがために誰かを傷つけてしまったり、 自我が傷つけられたことで自分そのものを亡きものにしてしまったり。 でも「自我」なんて本当はたいしたことなくて、 特別だとおもっている「自分」と同じことをしている人なんて、 ゴマンといるのだ。 著者が込めた思いはもっと色々あるだろうけど、 わたしに残ったのは以上のことで、 自分の思い上がりとか、ぐちぐちと無駄に悩んでしまう 「自我」について、たしなめられたように思う。
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ふとしたはずみで「俺俺詐欺」に手をそめた「俺」は、みるみるうちに存在の確かさを失っていく。文字通り、誰とでも入れ替え可能な自分。星野智幸、今まであまりいいと思ったことがなかったけど、この発想には度肝を抜かれた。 アイデンティティの喪失という、くりかえし書かれてきた陳腐なテーマ...
ふとしたはずみで「俺俺詐欺」に手をそめた「俺」は、みるみるうちに存在の確かさを失っていく。文字通り、誰とでも入れ替え可能な自分。星野智幸、今まであまりいいと思ったことがなかったけど、この発想には度肝を抜かれた。 アイデンティティの喪失という、くりかえし書かれてきた陳腐なテーマに陥りかねないように見えながら、「どうせ他人とはわかりあえない」という絶望と、「自分を完全にわかってくれる誰か」を求める甘さは、たしかに、今この社会にある空気を映し出している。 何も説明する必要がない、完全にわかりあえる「俺」たちのユートピアは、その瞬間から、妙にリアリティのある悪夢へと転じていく。殺人事件の記事が数行の死亡告知のように羅列されている新聞など、すでに存在していそうで怖い。固有の名前がどんどん意味を失う一方で「マック」などのブランド名が頻出するのも面白い。 誰もが自分、だからこそ信用できない。ここに映し出されている他者の否定と鏡合わせになった自己否定は、何か大きいものに抱きすくめられることを望みながら、外国人やホームレスを襲撃するひとたちが抱えているものに通じている気がしてならない。 これほど巧みに、今の社会の底にうごめいている気分を描き出した作品なだけに、最後の終わり方はいささか蛇足では。物語を「今」から切り離すことで、もしかしたら作者は、戦前のファシズムといった歴史を意図的に想起させようとしているのかとも見えるが、それはあえて必要のないことではなかったか。この奇妙な寓話の意味は、もうしばらく「俺」たちの脳内でぐるぐるさせておいた方がよいだろう。
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周りの人間がすべての「俺」になっていく、というのは、共感や理解を信仰のように大切にする現代への風刺かな。背筋が冷んやりとするのは、たぶん、小説や人の話を聞いてるときに「まるで自分のようだ」と思うことがあるから。この共感の意識が極限まで高まった行き着く先を描いたのだと思う。
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ものすごくナンセンスな話かと思いきや、均一化された人間への警鐘とも取れる意外と深い話ですよコレ。「人は人と無意識の領域で繋がっている」とか倫理で昔習ったような気がするんですけども、そんなことを思い出しました。俺らの見た目は全然違う、となってましたが、ついつい同じ顔の大群を想像して...
ものすごくナンセンスな話かと思いきや、均一化された人間への警鐘とも取れる意外と深い話ですよコレ。「人は人と無意識の領域で繋がっている」とか倫理で昔習ったような気がするんですけども、そんなことを思い出しました。俺らの見た目は全然違う、となってましたが、ついつい同じ顔の大群を想像してしまって、立派にホラーだなぁと思った^^; にしても、1日に2回もマクドとか絶対無理!(笑)
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孫だなんて、冗談じゃない。どうせ生まれてくるのは俺じゃないか。俺の子は俺、自分がまた生まれなおすようなもの。何を好きこのんで、こんな白紙の人生を繰り返したいんだ?
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始まりから想像したものとはあまりにかけ離れた展開にちょっとびっくり!言いたいことはわかるんだけどね…
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
類友と自分との境界がなくなっていくサイコ・ホラー的な小説。前半は引き込まれていく面白さ。後半、末期的状況を描く箇所がぶっ飛びすぎて、気味悪くなってしまう。テーマ的に面白いだけに非常に残念。同作者の他の作品をぜひ読んでみたい。
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なんだこれは・・・と思いながら、気づくと夢中で一気読み。 だんだんと‘俺’が蔓延していく(まわりが‘俺’ばかりだと気づかされる)感じとか、微妙にズレていく感じとかがおもしろかった。 終わり方も悪くなかった。
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