新月の夜も十字架は輝く の商品レビュー
アラブ人=ムスリムとついつい考えてしまっていた自分にとって、とても面白かった一冊。 普段あまりスポットライトがあたらない、中東のキリスト教徒の宗派や暮らし、社会のことをわかりやすく紹介してくれています。そもそもキリスト教は中東生まれの宗教で、マイノリティでありながらその矜持をもっ...
アラブ人=ムスリムとついつい考えてしまっていた自分にとって、とても面白かった一冊。 普段あまりスポットライトがあたらない、中東のキリスト教徒の宗派や暮らし、社会のことをわかりやすく紹介してくれています。そもそもキリスト教は中東生まれの宗教で、マイノリティでありながらその矜持をもって暮らす人々のことを知ることができ興味深いです。
Posted by
日本にも仏教徒、神道、キリスト教徒、はたまた他の宗教と、いろんな信条があるのと同じに、中東にもたくさんのイスラーム教徒、ユダヤ教徒、そしてキリスト教徒がいる。当たり前のことなんだけど、あまりにもイスラームに偏重した報道が多いから、想像がつきにくい。平易な言葉で書いてる割には文章が...
日本にも仏教徒、神道、キリスト教徒、はたまた他の宗教と、いろんな信条があるのと同じに、中東にもたくさんのイスラーム教徒、ユダヤ教徒、そしてキリスト教徒がいる。当たり前のことなんだけど、あまりにもイスラームに偏重した報道が多いから、想像がつきにくい。平易な言葉で書いてる割には文章がなんとなくブツブツしてて読みづらいと感じる部分もあったけど、現状でこれ以上の入門書はないと思う。中東のいろんな問題が、「イスラーム」というキーワードだけではわかんない!って時にあたるべき本。
Posted by
山川出版社「イスラームを知る」シリーズの第6巻です。イスラエルをのぞき、中東=イスラーム世界という図式に対し誰も異を挟む人はいないと思いますが、中東はキリスト教生誕の地であることから当然少数ながらキリスト教徒も存在します。しかし、圧倒的マイノリティであるからこそ、彼らの連帯感や帰...
山川出版社「イスラームを知る」シリーズの第6巻です。イスラエルをのぞき、中東=イスラーム世界という図式に対し誰も異を挟む人はいないと思いますが、中東はキリスト教生誕の地であることから当然少数ながらキリスト教徒も存在します。しかし、圧倒的マイノリティであるからこそ、彼らの連帯感や帰属意識は強烈なものがあります。中東のキリスト教世界は、レバノンで中心となっているマロン派やシリアなど地中海東岸北部を中心としたメルキト派などのカトリック系の他に、451年のカルケドン公会議で単性論が異端とされたことに反発した「古東方正教会」系のシリア正教やコプト教(エジプトに多い)、コプト教から分かれたエチオピア正教、キリスト教諸派の中で最初に特定国家の国教となったアルメニア正教(3世紀初にアルメニアの国教となる)、ビザンツ皇帝による保護のもと発展した「東方正教会」、最初に述べた「カトリック」系のマロン派やメルキト派、この地がイギリスの支配下になった後に入ってきたプロテスタント(著名なイブン=サイードが有名)などさまざまなキリスト教諸派の人々がこの地に暮らしています。 世界史の教科書で「19世紀の初め、アラブのキリスト教知識人の間に、アラブ文化の復興運動がおこった。この活動は、言語をつうじてアラブの民族意識を高め、19世紀末以降に展開するアラブ民族主義運動への道を切り開いた。」(山川出版社『詳説世界史』259~260ページ)と書かれてあり、アラブ民族主義運動とこの地のアラブ人キリスト教徒との関係の深さは知識としては持っていたのですが、その原因を本書で知ることができました。もちろん原因は複数あるのですが、ムハンマド=アリー朝治下のエジプトでは近代化政策が行われ、ヨーロッパ印刷機が導入されアラビア語文献の印刷が進み、人々の間でアラビア語への渇望が高まっていました。そうしたなかオスマン帝国からミッレト(宗教共同体)の承認を得られず、ヨーロッパの文化に触れることのできるエジプトに流れてきたメルキト派のキリスト教徒(のちに東方正教会のアラブ人も)はこの地のミッション系学校でヨーロッパの高度な教育を受けます。そして彼らがアラブ復興運動を担うようになります。 またレバノンでもミッション系の学校でアラビア語教育がなされるようになり、聖書のアラビア語訳も行われました。 このように、たとえ7世紀以降常にマイノリティとしての生活を余儀なくされてきた中東のイスラーム教徒たちですが、彼らが世界史に与えた影響は決して小さいものではありません。 ちなみに、現在でも中東各地でパン=アラブ主義を掲げているバアス党(バース党)ですが、私は今までこの党をスンナ派の政党とばかり思っていました。しかし、この政党はそういった宗教・宗派を超えたアラブ人たちの政党であることを知りました(恥ずかしい限りです)。誤解の原因はイラク・バアス党の党首であったあのフセインがスンナ派で、イラクでは少数のスンナ派が多数のシーア派を支配する構図ができていたことによります。しかしバアス党の生みの親であるミシェール=アフラクはダマスクス生まれの東方正教徒ですし、シリア・バアス党は権力を握るアサドが属するシーア派の少数派アラウィー派の信徒が独占しているそうです。
Posted by
興味深いことは興味深い。 マイノリティに普遍な状況ではあるんだけど、世界レベルで見ると強い立場のキリスト教徒が題材だから、なおさらマイノリティが押しやられる状況がよく見える。 でもこの人「マイノリティ」を負のイメージでとらえすぎじゃないだろうか。マイノリティなんかじゃないんだよ...
興味深いことは興味深い。 マイノリティに普遍な状況ではあるんだけど、世界レベルで見ると強い立場のキリスト教徒が題材だから、なおさらマイノリティが押しやられる状況がよく見える。 でもこの人「マイノリティ」を負のイメージでとらえすぎじゃないだろうか。マイノリティなんかじゃないんだよ!という言葉を肯定だと思っているみたいに感じる。 違うものを知ろうとして見つめるのとは微妙に違う、異物を観察する目線。悪意で見ているわけじゃないんだけど、そこに行く「自分が」異物であるという認識が欠けている。というかそう見える。そこに暮らしていたなら自分が闖入者であるという視点がないってことはないと思うんだけど。 それと、「中東の習慣とキリスト教徒(やイスラム教徒)の習慣」とか「関連と因果関係」とか色々ごっちゃになっている気がする。 たとえばキリスト教徒が活躍できるのは、キリスト教徒が優秀だからではなく(中東の外に出れば)優勢だから(「異教徒」が排斥される中東の外とつながれるグローバルのお陰)かもしれないけれど、その辺は触れられない。 気づかなかったのか書きたいことを詰め込みすぎて説明不足なのかは微妙なライン。 いずれにせよ散漫。
Posted by
- 1