神の手(上) の商品レビュー
久坂部羊らしい小説。 とりあえず表面上は、心ならずも安楽死をすることになってしまった主人公白川の葛藤、安楽死法成立を目指す団体JAMAとそのカリスマ新見、それを断固阻止しようとするジャーナリストとの戦いを軸にした医療小説として楽しめる。 安楽死をめぐっては日本では、例えば東海...
久坂部羊らしい小説。 とりあえず表面上は、心ならずも安楽死をすることになってしまった主人公白川の葛藤、安楽死法成立を目指す団体JAMAとそのカリスマ新見、それを断固阻止しようとするジャーナリストとの戦いを軸にした医療小説として楽しめる。 安楽死をめぐっては日本では、例えば東海大学安楽死事件が有名だが、そういった実在のエピソードをストーリーの味付けに使っている。この上巻では、冒頭のエピソードを含め、安楽死について考えさせられる。 そういった表向きの話とは別に誰をモデルにしているのかなぁと想像するのも楽しいし、業界ネタや、そこかしこに挟まれる医者の本音と建前、建前としての綺麗事を話しつつ、そうは言っても方便にしきれない医師の葛藤など、ノンフィクションでは書きづらい心情を描いているのは小説ならでは。
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なんという壮大なスケール!安楽死(尊厳死)の是非がテーマなのは知っていたけれど、まさか日本医師会を崩壊させて、医療庁が発足、安楽死のための薬の開発、そして安楽死のための具体的な法律、そしてネオナチ思想まで絡んでくるとは!安楽死にまつわる医者と患者の複雑な気持ちから、金の動き、政治...
なんという壮大なスケール!安楽死(尊厳死)の是非がテーマなのは知っていたけれど、まさか日本医師会を崩壊させて、医療庁が発足、安楽死のための薬の開発、そして安楽死のための具体的な法律、そしてネオナチ思想まで絡んでくるとは!安楽死にまつわる医者と患者の複雑な気持ちから、金の動き、政治の変化、安楽死を行う根本的な思想を見つめなおしたりなど、これ一冊ですごい充実感を得られた。久坂部さんのこれまでの書籍を何冊も読んでいると感じられる、「医者と患者の関係」「無駄に長生きする弊害」などに対する久坂部さんの思いや迷いが、さらに凝縮されている書籍でもあるとも思った。
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著者は阪大のドクター。 消化器外科医の白川は、術後組織が壊死をおこし、手の施しようのない肛門がんの21歳男性患者のケタラール点滴を全開にし、安楽死させる。 耐え難い痛みに苛まれ、治る見込みもないのに若い肉体は命を生かそうとし、患者の家族に泣きながら懇願されての決断だったが、死...
著者は阪大のドクター。 消化器外科医の白川は、術後組織が壊死をおこし、手の施しようのない肛門がんの21歳男性患者のケタラール点滴を全開にし、安楽死させる。 耐え難い痛みに苛まれ、治る見込みもないのに若い肉体は命を生かそうとし、患者の家族に泣きながら懇願されての決断だったが、死後患者の母親が「息子は医師の怠慢により殺された」と反論。安楽死の是非を問うと共に、医療現場における問題点が描かれます。 安楽死の法制化を望み、医療庁の必要性を訴える新見医師や、安楽死反対派の医師の訴え、上巻はハラハラし通し。
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白川泰正は末期の肛門がんである若干21歳の患者・古林章太郎を前に悩んでいた。癌はもう手の尽くしようがなく、患者は毎日激痛や吐き気、呼吸困難にただ耐えるしかない日々。患者が苦しむ姿を毎日見て付き添う叔母ももう、発狂寸前だ。ケタラールをさらに増やせば意識が取れるかもしれないが、呼...
白川泰正は末期の肛門がんである若干21歳の患者・古林章太郎を前に悩んでいた。癌はもう手の尽くしようがなく、患者は毎日激痛や吐き気、呼吸困難にただ耐えるしかない日々。患者が苦しむ姿を毎日見て付き添う叔母ももう、発狂寸前だ。ケタラールをさらに増やせば意識が取れるかもしれないが、呼吸抑制がおこって呼吸が止まってしまうかもしれない。それでも、この苦しみにはもう耐えられないと患者も叔母も言うのなら・・・・! 今の日本では認められていない安楽死。しかし現場で患者や家族の耐え難い苦しみを毎日感じていた白川は、2人を救うつもりで安楽死に手をかした。しかしそれが元でマスコミバッシングを受けたり、安楽死制度賛成の団体と反対の団体がやりあったりすることになるのだが、後半はあまりにその勢力闘争描写に時間をさきすぎて、元々の問題がぼやけてしまっている気がする。白川の不倫も、どうでもいいし。安楽死に賛成か反対か、なかなかはっきり言い切れる問題ではないと思うが、私は選択の余地としてあってほしいなとは思っている。少なくとも私がこの章太郎の立場なら、ここまでして生かされたいとは思わない。ただ、もし法案が成立したとしたら、それを悪用した犯罪や殺人など、新たな問題が浮上するということを考えなければならないんだと気づかされた。
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現代医療の葛藤、不条理さを、安楽死とゆう医療の一生抱え得る問題をテーマで綴った、非常に秀逸な作品でした。また、理想と現場、どちらも欠くことは出来ない医療の真理であると、考えさせられる作品でした(_ _)
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安楽死問題を利害得失に求める騒動を冷静に見る医者の姿。反対派の医者は翻弄され自殺してしまう。10.12.24
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作者の思いが込められた作品だと思います。医療の現場での色々な葛藤。医師・白川の揺れ動く心情が伝わってきました。
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久坂部 羊「神の手」上下 久々のどっしりとした医療もの。 日本における安楽死(尊厳死)の考え方を、あらためて思い直させるとても深くて意味のある内容。実際に自分だったらどう考えるか、読者にストレートに問いかけています。 「廃用身」や「破裂」のような衝撃は無いものの、じわじわと真綿...
久坂部 羊「神の手」上下 久々のどっしりとした医療もの。 日本における安楽死(尊厳死)の考え方を、あらためて思い直させるとても深くて意味のある内容。実際に自分だったらどう考えるか、読者にストレートに問いかけています。 「廃用身」や「破裂」のような衝撃は無いものの、じわじわと真綿で首を絞めるような怖さと不安感。政治と医療の複雑な関係。”センセイ”と呼ばれる不気味な黒幕。ぞくぞくするほど面白かった。 主人公白川だけが正気を持ち、最後まで自分を貫いていることが救いです。その白川をも普通の中年男として描かれていることが、全体の生々しさを増長させていてひきつけられます。 長さを全く感じさせない展開の早さ。今年一番のお勧めです。
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図書館にあり 内容(「BOOK」データベースより) 現代医療では、安楽死の問題は避けて通れない。法律では認められていないが、それに近いことが、現場ではさまざまな形で密かに行われている。安楽死は慈悲か、殺人か。それを行う医師は「神の手」を預託されたのも同然である。安楽死法の制定を...
図書館にあり 内容(「BOOK」データベースより) 現代医療では、安楽死の問題は避けて通れない。法律では認められていないが、それに近いことが、現場ではさまざまな形で密かに行われている。安楽死は慈悲か、殺人か。それを行う医師は「神の手」を預託されたのも同然である。安楽死法の制定をめぐって、医師、患者、政治家、官僚などが、それぞれの思惑から闘いを繰り広げる。安楽死法が制定されていちばん得をするのはだれなのか。医療の世界の光と闇を、余すところなく描き切る。
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安楽死がメインのテーマの作品。 面白く読ませていただきました。 医療に携わる人たち、特に医師や看護師が仕事に追われて疲れている状況は怖いですね。
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