アスパンの恋文 の商品レビュー
淡々とした筋だが、最後の数十ページで印象がガラリと変わる。ティータは魂は売らなかったのだな。愛を別なもので買わなかった。それは老いという現実を真正面から見ることに通じる。
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一見主人公である「わたし」が、ミス・ボルドローやティータに翻弄されているように見える。が、振り回されているのは「わたし」ではなく、「わたし」の視点からしか物語に入り込めない私たちなのだ。 軽い目眩を覚えるような、それでいてクセになるような、愉快な一冊。
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ヘンリー・ジェイムズという作家、実は初読ですが、相性が悪い模様。どこを評価すればいいか分からない小説だった。しかし決して稚拙な作品ではなく、評価する人が多いのも理解できる。あまりに毒気が無い。
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大変に分かりやすく面白かった。冒頭数ページを読んだらさいご、ページを捲る指をとめられず、一気に結末までたどり着いてしまう、駆け足で読んだような作品だった。ところで、私はこの小説で、面白い小説は、もれなく冒頭から結末まで読者を飽きさせず、何ら滞りなく進行していくものだという確信を深...
大変に分かりやすく面白かった。冒頭数ページを読んだらさいご、ページを捲る指をとめられず、一気に結末までたどり着いてしまう、駆け足で読んだような作品だった。ところで、私はこの小説で、面白い小説は、もれなく冒頭から結末まで読者を飽きさせず、何ら滞りなく進行していくものだという確信を深めた。なので、この小説の前に読んだ2冊の本、プーシキンの『スペードの女王』を最後まで読んだことに半ば得心し、ジャン・パウルの『陽気なヴィッツ先生』を冒頭数ページの段階で放棄したことを全うな判断だったと割りきることができた。なぜなら、「読者は、面白いか否かという判断を冒頭の数ページで、すでに予感し、判断しなければならない」という教条を、この作品から手渡されたために。
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小林大吾の日記より。 「うまく説明できないけど、ただひたすらおもしろい小説」 クライマックス(確かに或る)では思わず電車の中で噴き出してしまいそうになり、その後寒気がしました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
内容。 アスパンは百年ほど前に死んだアメリカの詩人。彼を研究している主人公は、アスパンの恋文を持っているというかつての恋人がヴェニスで存命なことを知り、その恋文を手に入れようと画策する。 百五十歳でもボケてなければ、ちゃんと喋れる、車椅子生活を送っている、年齢にしてみたら異様に元気な妖怪ばあちゃん、ミス・ボルドロー。お金儲けに執着する。でも、百五十歳。中年の姪と暮らしている。姪も「ミス」だ。この家、もう絶えるな。 アスパンを研究している人が、彼の詩の中で歌われたミス・ボルドローが生きていることに気づかなかったのは無理もありません。 ……普通、生きられませんって、百五十歳。 しかも、彼女の死因は激昂したことによる心臓麻痺っぽいです。主人公が彼女を怒らせなかったなら、彼女はいったいいつまで生きたんでしょうか(気になるところです) 視点主は「私」、男なのですが、主役は彼でもアスパンでもなく、ミス・ボルドローに決まりです。なにせ、百五十歳! ですから。 主人公は彼女のこと知ったとき「普通の寿命を並外れて超えているほどでもなかった」と考えますが。 いや、すっごく並外れてます。理論上、人間の最高寿命は百二十五歳だそうですから。それをとうにとっこしているのに会話もできて、ぼけてなくて、姪に命令できて、金儲けを考えられるんですよ。 ほかの内容? ……ミス・ボルドローの奇蹟以外に、言うべきことは無夜にはありませんって(笑)
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