粘膜兄弟 の商品レビュー
読み終わったら無性に手を洗いたくなる。一刻も早く手放したくなる。なのにしばらくするとまた飴村行の文章に触れたくなる。タバコか酒かヤバい薬か、毒のある嗜好品のようなシリーズ。 作中で時折見られる「なんてことない描写を一言一句違わず繰り返す」というのは作者独特の手法だが、このタイムリ...
読み終わったら無性に手を洗いたくなる。一刻も早く手放したくなる。なのにしばらくするとまた飴村行の文章に触れたくなる。タバコか酒かヤバい薬か、毒のある嗜好品のようなシリーズ。 作中で時折見られる「なんてことない描写を一言一句違わず繰り返す」というのは作者独特の手法だが、このタイムリープものの映画のようなやり口が不思議なリズムを感じさせて心地よい。 前の2作に比べると戦時中の描写が色濃く、それも実際の出来事から掬い上げただろうものと悪夢のような創作が隙間なく融合していて、丁寧に読んでいると奇妙な酩酊感を覚える。初年兵の件、等々力丸内部の話などは、間違いなく戦時中の記録に取材したものだろう。水木しげるやちばてつやのエッセイ作品をつぶさに追ってきたから、分かる。 そうした事実に裏打ちされた密な文章に突然巨大蠍等がぶち込まれて、いい意味で狂った世界がリアルに味わえる辺りが飴村行の真骨頂。 狂った世界の中では「えっ、そんなんなる?」とほんのり芽生える疑念などあっという間に押し流される。抗えない強引なストーリー展開と特に罵倒において発揮されるテンポの良い言葉の力で、とにかく先に先にと読み進んでしまう。 ラスト2ページで、読者はもう納得することしか許されない。前作とはまた違う、少しやるせない結末だった。 読みながら気になったが、本作は話の都合上、主役の善性が、決定的な悪事を片割れに担いでもらって成り立つ仕組みになっている。そりゃ片割れは納得いかんわな… そこを自然に読ませるためか、戦争の毒にやられてしまっていると何度も強調するし、兄弟で、それも双子というのに、頭と心に大きな差があるのだと思わせる描写の数々がどうも切ない。 兄が「女として死ぬほど嫌なことなのに」と断言し、女性に頭を下げる場面があるが、あれは相手にちゃんと敬意を払い、かつ、受け入れる造りである女性の立場でものが考えられる想像力と共感力がないとできない。 正直、こんな男性は現代でも珍しいと思う。言葉にはしなくても、男性は心のどこかで「女性より優れていなければ」という思いを薄ら抱いているから、敬意の段階で珍しい。 『粘膜蜥蜴』は狂気とリアルの割合が絶妙で、またあれ以上の裁定はなかろうと心から納得できるラストだった。比べてしまって、今回は星4つ。
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シリーズを読み進めるごとに何とも言い難いクセになる感じ。噛めば噛むほど味がする、みたいな。 蜥蜴同様、最後に満足な結末が待っていたのでわはーっと満たされた感じ。それと、シリーズを読んだから「あ、知ってる人」とか「どこかで繋がってるな?」と探すのが楽しくなった。 ヘモやんが最後まで...
シリーズを読み進めるごとに何とも言い難いクセになる感じ。噛めば噛むほど味がする、みたいな。 蜥蜴同様、最後に満足な結末が待っていたのでわはーっと満たされた感じ。それと、シリーズを読んだから「あ、知ってる人」とか「どこかで繋がってるな?」と探すのが楽しくなった。 ヘモやんが最後までヘモやんで良かった。いつ裏切られるかハラハラした。
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話としては独立している作者の粘膜シリーズ第三弾。 グロテスクでネジが外れた世界設定は健在ながら、今作は特にコメディタッチが強く、作者の魅力である文学とエンタメのバランスはそこまで取れていない様感じた。 散りばめられながらも作動しないファクターも多く、緻密性があればプロットの魅力...
話としては独立している作者の粘膜シリーズ第三弾。 グロテスクでネジが外れた世界設定は健在ながら、今作は特にコメディタッチが強く、作者の魅力である文学とエンタメのバランスはそこまで取れていない様感じた。 散りばめられながらも作動しないファクターも多く、緻密性があればプロットの魅力でかなり化けた作品だったのではと口惜しい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
双子の兄弟、須川麿太吉・矢太吉が主人公。 時代背景は太平洋戦争の初頭から始まる。 今回は何故か子どもの「爬虫人」(頭が蜥蜴で体が人間)が出てくる。 兄弟が戦地のナムールから「爬虫人」を日本へ連れ帰る。 そして、「粘膜人間」にも出て来た、黒い外套に身を包んだ、顔が睾丸の瘤だらけの二頭身の神様「吉太郎」も出てくる。 何も無い空間にスリットが出来て、そこから現れる全身が真っ黒の人間が、矢太吉を殴りに現れる。殴った後は帰って行く。謎の現象。 今回も残虐行為の描写が出てくるが、「粘膜人間」ほどではない。エロ度も低め。 兄弟が関わる、使用人のヘモ爺や、子どもの爬虫人との会話には、何度も笑ってしまった。 寝る前に読んだせいか、変な夢を見てしまった。 ちょっとクセになる「飴村行」恐るべし。
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「粘膜」は何ら関係ない点は置いておき、「粘膜」シリーズ第三弾。戦時下の不穏な雰囲気と理不尽な出来事、双子の兄弟のコミカルなやり取り、克明で残虐な描写。「ヘルビノ」や「ナムール」など前作とのつながりも感じさせる。もちろん「マラボウ」も(「グッチョネ」はありません)。ヘルピノ奇を衒っ...
「粘膜」は何ら関係ない点は置いておき、「粘膜」シリーズ第三弾。戦時下の不穏な雰囲気と理不尽な出来事、双子の兄弟のコミカルなやり取り、克明で残虐な描写。「ヘルビノ」や「ナムール」など前作とのつながりも感じさせる。もちろん「マラボウ」も(「グッチョネ」はありません)。ヘルピノ奇を衒ってるわけではなく、小説としてもエンターテイメント作品としてもレベルが高い。グロ耐性がある方にはおすすめしたい作品。暗澹として残酷な展開が続くが、それほど暗い雰囲気がなく読めるのは、何処か漂うコメディタッチとテンポの良さからだろう。ゆえにラストの展開はミステリー的なバッドエンドで、残り10~20ページで徐々に予想させる展開は衝撃的でやるせなさを感じさせる。前二作がラストのカタルシスがあったので、なんとも云えない余韻を残す。
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なんとも説明しがたいし、内容のある物語だとは思わなかったけども、引き込まれたし、続き気になったし、好きなんだと思う!
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※このレビューにはネタバレを含みます
磨太吉、矢太吉、ヘモやん、 吉太郎、ポン太、黒助、亀吉。 可愛いユニークなキャラクター盛りだくさん。 これらを見られるだけで大満足。 展開は幸福と不幸を織り交ぜてながら 不幸な方へ傾いていく。 前作の『粘膜蜥蜴』のような愛のあるオチを 予想していたが、力技のラストが少し残念。 テンポが良く勢いのある疾走体験は同シリーズの 白眉。
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粘膜シリーズ第三弾。 戦時下を舞台に山奥でひっそり暮らす兄弟とカフェで女給として働く一人の美女。三角関係の恋路は戦争をきっかけに大きく動き出す。ナムールへの出向命令、現地で出会う爬虫人、そして時折現れる黒い影の正体は何なのか? ホラー、グロテスク、SFそしてラブロマンスを加えた物...
粘膜シリーズ第三弾。 戦時下を舞台に山奥でひっそり暮らす兄弟とカフェで女給として働く一人の美女。三角関係の恋路は戦争をきっかけに大きく動き出す。ナムールへの出向命令、現地で出会う爬虫人、そして時折現れる黒い影の正体は何なのか? ホラー、グロテスク、SFそしてラブロマンスを加えた物語はとんでもないラストへ。 まともな話だと思ったんですよね途中までは、そしたらいきなり異空間から黒い影があらわれるんだからびっくりしちゃう。河童と蜥蜴はまだ説明がつく存在だったんですけど今回はいよいよ分からない。そして舞台はまたもや戦時下最前線のナムールへ、話もぐちゃぐちゃだし体もぐちゃぐちゃになったところで盛大なネタバラシ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ネタバレあり注意 粘膜シリーズ3作目。グロさは粘膜人間と比べたら控え目だが、ギャグテイストもあり、新規キャラクターも魅力があり、個人的に一番楽しく読めた。前作キャラも脇役として登場しており、世界観が拡がっていく感じも面白い。 「黒助」の暴力性が上がっていく点も、そういうことかと悲しくもあり。
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粘膜シリーズ第3弾。 突拍子もない世界観のエログロ小説です。 「粘膜人間」のキチタロウ様や「粘膜蜥蜴」のナムールでの戦争、蜥蜴人間なども登場します。 冴えない双子の兄弟の高嶺の花ゆず子との恋愛話から、徴兵され戦地ナムールでの拷問、ヤクザとの対決、親の敵討ちなど、次から次へと幅...
粘膜シリーズ第3弾。 突拍子もない世界観のエログロ小説です。 「粘膜人間」のキチタロウ様や「粘膜蜥蜴」のナムールでの戦争、蜥蜴人間なども登場します。 冴えない双子の兄弟の高嶺の花ゆず子との恋愛話から、徴兵され戦地ナムールでの拷問、ヤクザとの対決、親の敵討ちなど、次から次へと幅広い展開されていきます。 グロい表現が続く中でも「双生児」を双子の意味だと知らず「ソーセージ」だと思って上官に解答するという可愛い場面もあったり、全体的にギャグっぽい印象のお話です。 定期的に軽い気持ちで読みたくなるシリーズです。 素晴らしい想像力に、毎回感動させられます。
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