真知子(後篇) の商品レビュー
長生きの作家だった野上弥生子氏。 彼女の若い頃といっても47歳頃の作品。 とても、みずみずしい。 1930年代(昭和の初期)に書かれている。 風景、風俗、社会が古めかしいのだが、内容はけして古くはない。 むしろ、懐かしい情景の中に一本筋の通った思想があり、それが色あせず感動する...
長生きの作家だった野上弥生子氏。 彼女の若い頃といっても47歳頃の作品。 とても、みずみずしい。 1930年代(昭和の初期)に書かれている。 風景、風俗、社会が古めかしいのだが、内容はけして古くはない。 むしろ、懐かしい情景の中に一本筋の通った思想があり、それが色あせず感動する。 若い女性が人間として自我を確立、成長していく姿は現代に通じる。 その後、「迷路」「秀吉と利休」と骨太の本を書き、翻訳も数々。 「迷路」は「真知子」の姉妹編のようで、「弥生子思想」がより深まる。 しっかりした手触りの文章の作家なのに、普通の生活というか、結婚され子供孫に囲まれ、100歳の長生きをされた。 親しみを感じるし、随分影響も受けた。 随筆と「山姥」を読むと、北軽井沢の別荘で、夏だけでなく春秋と自然にふれてばあさん暮らしをしたとある。 偶然私も似たような暮らし方というのも嬉しい。 「海神丸」という「老人と海」ないし「白鯨」かと思わせる作品にも驚いたし、面白かったなー。 晩年の「森」(未完である)は99歳の時に連載。 さすが文章がダブったりなさったところがあるが、弥生子氏の自伝のようで、小説であり、こちらは明治時代の自立を目指す女性の姿ががあざやか。 ほんとうに、すごい! 私の好きな作家、ベストテンに入る方。 時間が許すなら、他の作品も読み返して詳しく感想を書きたい。
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