中井英夫全集(3) の商品レビュー
アンソロジーにも多く採用されている作品もあり、佳作揃いの『幻想博物館』。妖しい母娘に魅入られた人びとが時間のなかを彷徨う『悪夢の骨牌』。〈人外〉を名乗る語り手が渉猟した物語たち『人外境通信』。老いを感じつつある三姉妹が予言に導かれて新たな恋に出会う『真珠母の匣』。連作短篇シリーズ...
アンソロジーにも多く採用されている作品もあり、佳作揃いの『幻想博物館』。妖しい母娘に魅入られた人びとが時間のなかを彷徨う『悪夢の骨牌』。〈人外〉を名乗る語り手が渉猟した物語たち『人外境通信』。老いを感じつつある三姉妹が予言に導かれて新たな恋に出会う『真珠母の匣』。連作短篇シリーズをトランプの4つのマークになぞらえ、ジョーカーとして「影の狩人/幻戯」を加えて、カードと同じ54の物語で構築された絢爛たる世界。 再読のはずなんだけど、『悪夢の骨牌』の内容を『人外境通信』だと思い込んでたり、『真珠母の匣』を読んだ記憶が一切なかったりした。読んだはずなんだけど……。 一話ずつの完成度が高いのは『幻想』。どの話にもオチがついていて、それが軽くヒョイと捻っただけ、という風情がカッコいいのだ。文章もこの頃が一番美文調とエンタメ性の調和がとれているのではないかと思う。 でも『悪夢』の「大星蝕の夜」「ヨカナーンの夜」辺りも倉橋由美子じみてて好きだし、『人外境』の「鏡に棲む男」「扉の彼方には」はミヒャエル・エンデの『鏡の中の鏡』収録作みたいだし、〈戦後〉というこの作家のオブセッションが作品とよく溶け合っているのは『真珠母』だと思う。『真珠母』は女性観が三島に近く、心地よいノスタルジアを感じた。 一番好きなのはジョーカーとして収録されている吸血鬼譚「影の狩人」。綺羅綺羅しいペダントリーを散りばめて、誘惑する者とされる者の迂遠な合言葉が明かされるまでの待ちぼうけの時間をこんなに甘美に書ける人はやっぱりいない。
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中井英夫氏の短篇集4作品を合本にした最高傑作。「虚無への供物」と並ぶ二大奇峰。単行本と文庫全集の形でしか完全合本になっていないので文庫全集は貴重。
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『 虚無への供物』も難解であったが、『とらんぷ譚』も勝る劣らず難解である。レビューを拝見するとスラスラとコメントをしている方々は著者のコアなフアンなのだろうか。わたしはフアンにはなれない。改めてそうおもう。
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中井英夫というとどうしても『虚無への供物』に目が行ってしまうが、その本質はむしろ幻想小説家なのであり、その真骨頂たる連作短編がこの『とらんぷ譚』。実は『虚無』より好き。
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脳病院、流薔園、根に愛を、黒暗天女… 一気読みはもったいなかったか(後半にかけて食傷気味になったのもたしか)。虚無への供物もすごいと思ってたけれど返上するわ 彼がこんなに戦直後に思い入れのあった人とは知らなかった
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11月は殆どこの本に費やしてしまった。難しいのかといえば、そうでもない、リーダビリティーはそこそこあるんですが、1篇読み終わると休憩してしまう。トランプのカードになぞらえて、13篇4章+ジョーカー2篇の54篇からなる短編集。トランプのカードになぞらえていながら、各章ではフランス語...
11月は殆どこの本に費やしてしまった。難しいのかといえば、そうでもない、リーダビリティーはそこそこあるんですが、1篇読み終わると休憩してしまう。トランプのカードになぞらえて、13篇4章+ジョーカー2篇の54篇からなる短編集。トランプのカードになぞらえていながら、各章ではフランス語による12ヶ月とインターミッションが題名の頭についています。幻想小説の常で草花、神話、毒、歴史、広範なイメージが飛び交うも1篇1篇は完結した物語として完成度が高く、改めて連作として読むと微妙な関連性が複雑な迷路パズルのような。
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真珠母の匣がいちばん読みやすかった。 ちょうど三女と同年代の祖母のことを考えながら読みました。 ジョーカーの「幻戯」は、 幸せと不幸、現実と幻が実は紙一重という 最後のどんでんがえしにため息が出ました。 (09.12.06) 読書会の課題図書 (09.11.02)
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トランプの札になぞらえた54の短編からなる小説集です。ジョーカーの一枚にあたる「影の狩人」は、わずかなページながら中井英夫の真骨頂のあらわれた名作です。
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わしづかみ!何を!心を! 思い入れたっぷりです。 とくに最後のジョーカー的存在の短編、『幻戯』が・・・ラスト5行がせつない。せつなくて愛しい。
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初めて読む方には、「虚無」ではなくてこちらをお薦めしたいです。 凝った構成と描かれた世界の美しさが秀逸です。私はこの本のハードカバーをなくすというアホな事をしました。ばか、ばか。
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