夕暮の緑の光 の商品レビュー
42歳で早世した芥川賞作家による随筆集。 「モクセイ地図」では、脳裡にある金木犀の所在を示す地図をひろげる。秋になれば漂ってくる香りで自然にそれと知り、角を折れるとき、前もって流れてくる匂いを秘かに期待しながら街を歩く―。 故郷の自然描写や古本屋での交流など、どれも読み心地よく...
42歳で早世した芥川賞作家による随筆集。 「モクセイ地図」では、脳裡にある金木犀の所在を示す地図をひろげる。秋になれば漂ってくる香りで自然にそれと知り、角を折れるとき、前もって流れてくる匂いを秘かに期待しながら街を歩く―。 故郷の自然描写や古本屋での交流など、どれも読み心地よく、ゆったりと静かな気持ちで読みたい1冊です。
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時折、体が上質で贅沢な物を求める様に、間違いないだろうと読んでしまう野呂邦暢さんの随筆集です。 端正で静謐な筆致が、読んでいて本当に癒されるというか。 古書・古書店に関する物、ネコに関する物が載っているというので手にした一冊。とは言え、それ以外の学生の頃の話や、故郷・諫早の事、そ...
時折、体が上質で贅沢な物を求める様に、間違いないだろうと読んでしまう野呂邦暢さんの随筆集です。 端正で静謐な筆致が、読んでいて本当に癒されるというか。 古書・古書店に関する物、ネコに関する物が載っているというので手にした一冊。とは言え、それ以外の学生の頃の話や、故郷・諫早の事、そして何より、自らの作品を語っている点が非常に美味しい一冊でした。編者の岡崎さんの腕前が素晴らしいと思います。
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2014.11.28 pm20:28 読了。読み終わるまで約1年ほどかけた。読み進めるのが惜しかったからだ。地元を、鮮やかな筆致で描き出す。文遊社『棕欄の葉を風にそよがせよ』の帯から引用して、「澄明な世界」とだけ言っておく。まだ、言葉にしたくない。いずれ書く。
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本棚の「昔日の客」の隣りに本書を そっと並べてみた。 関口さんと筆者が「やぁ、これは奇遇ですね」と言葉を交わしているようだった。 私は熱い気持ちのまま、心の中で黙祷した。
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しみじみ、読んで良かった。読んだ時間を至福の時というのだろうか。文を味わう、文章を味わうとは、言葉の使い方が間違っているかもしれないが、(良い意味で)この本に収められた珠玉の文章の「深みにはまる」ことなのかもしれない。
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本のこと、長崎や諫早のこと、創作のこと、ネコのこと。。。 「随筆」ってこういうものだったよね。 アラン・シリトーや、それにカーソン・マッカラース「心は淋しい狩人」のことが出てきて、びっくり。そう言えば…と棚の奥から福武文庫「フィリップ傑作短篇集」を探しだしてくるに及ぶ。 随筆...
本のこと、長崎や諫早のこと、創作のこと、ネコのこと。。。 「随筆」ってこういうものだったよね。 アラン・シリトーや、それにカーソン・マッカラース「心は淋しい狩人」のことが出てきて、びっくり。そう言えば…と棚の奥から福武文庫「フィリップ傑作短篇集」を探しだしてくるに及ぶ。 随筆を読む至福。
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端正で落ち着いた筆致の随筆集。 「大人の本棚」を飾るにふさわしい本だろう。 この味わいはやはり大人向きで、自分が若い頃なら退屈に感じたかもしれない。 俗でなく、それでいて聖人でもない、筆者の立ち位置が好ましい。「昭和」というと、ギラギラした汗臭い一面も思い浮かぶが、熱血ではない...
端正で落ち着いた筆致の随筆集。 「大人の本棚」を飾るにふさわしい本だろう。 この味わいはやはり大人向きで、自分が若い頃なら退屈に感じたかもしれない。 俗でなく、それでいて聖人でもない、筆者の立ち位置が好ましい。「昭和」というと、ギラギラした汗臭い一面も思い浮かぶが、熱血ではない、怜悧で香り高い昭和もあったことを思う。コーヒーの香り漂う喫茶店のような。 故郷・諫早のこと。気ままに過ごした京都のこと。友人のこと。本のこと。古書店のこと。 様々な視点からの風景が、スナップショットのように鮮やかに切り取られている。湿っぽくも粘つきもしないスケッチには、作家が確かに生きて暮らしていた気配が叙情豊かに写し取られている。 印象に残ったいくつかを挙げる。 大学受験に失敗して京都で数ヶ月暮らし、その間、名曲喫茶や映画館に通い詰め、夜通し本を読んだこと。 友人が久留米絣のジャケットを付けて返してくれた本が、その後、洪水で流されて有明海のどこかに眠っているであろうこと。 通い詰めた古書店で、郷里に帰る餞別に高価な美術本を値引きしてくれたこと。後日、作者はこの店主に「昔日の客より」と署名して本を贈っている。 マルクス「資本論」の使い方(これはおかしくて笑ってしまった)。 水中に身を横たえる安徳帝のイメージ。 「生きるということはこれらのものを絶えず失いつづけることのように思われてならない」という一節。
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朝餉の席で陶器のかち合う響き、木洩れ陽の色、夕暮の緑の光、11月の風の冷たさ、海の匂いと林檎の重さ、子供たちの鋭い叫び声などに、全身的に動かされるひとだった。九州の小都市にとどまり、ひとりきりだったけれど、その文章は孤独に彩られてはいない。その親しさは、あたりまえの生活をするこ...
朝餉の席で陶器のかち合う響き、木洩れ陽の色、夕暮の緑の光、11月の風の冷たさ、海の匂いと林檎の重さ、子供たちの鋭い叫び声などに、全身的に動かされるひとだった。九州の小都市にとどまり、ひとりきりだったけれど、その文章は孤独に彩られてはいない。その親しさは、あたりまえの生活をすることによって育まれたものだ。 『小さな町で』もなんどもなんども読み返している。この本も何度も読み返してしまいそう。
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この本を本棚に登録するために、amazonでISDNを調べたんだけれど、商品ページの下部に提示される「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の欄に、W.モールの「ハマースミスのうじ虫」が入っていた。これは桜庭一樹が「少年になり、本を買うのだ」で両作家を紹介していたせいだと...
この本を本棚に登録するために、amazonでISDNを調べたんだけれど、商品ページの下部に提示される「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の欄に、W.モールの「ハマースミスのうじ虫」が入っていた。これは桜庭一樹が「少年になり、本を買うのだ」で両作家を紹介していたせいだと思う。お仲間!
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週間ブックレビューの書評を聞いて読んでみた。非常に静かな心持になった。しかし反面、自分の読書歴の貧しさや教養の乏しさを思い知らされた。この作家の著作を読んでみなければ、と思う。
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