土の文明史 の商品レビュー
土壌肥沃度を改めて考えさせられた。 作物はどこに植えても育つわけではない。肥沃度が高いから育つのだ。土壌から養分を得て作物が育ち、その作物を我々動物が食し糞尿としてまた養分を土壌に還す。これが本来のサイクルなわけで、それが破綻した文明が崩壊していくのだ。 鋤などの土壌を耕す行為で...
土壌肥沃度を改めて考えさせられた。 作物はどこに植えても育つわけではない。肥沃度が高いから育つのだ。土壌から養分を得て作物が育ち、その作物を我々動物が食し糞尿としてまた養分を土壌に還す。これが本来のサイクルなわけで、それが破綻した文明が崩壊していくのだ。 鋤などの土壌を耕す行為ですら肥沃度を低下させるのは意外だった。確かに空気を含み表面積が増える事で雨風に晒されやすくなる。その結果土壌が失われていき、作物が育たなくなる。不耕起栽培というのが土壌の事を考えたら最良の栽培方法なのだろう。学びのある本だった。
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肥沃な土壌は有限な資源であり、人類の持続可能性のためには土壌を意識する必要があるというのが本書の趣旨。 持続可能性の概念が広まった現代においては、「それぐらい知ってるよ」と感じる人が多いかもしれないが、さて、どれぐらい知っているのだろうか? 本書を読んでいて第一に驚いたのは、「...
肥沃な土壌は有限な資源であり、人類の持続可能性のためには土壌を意識する必要があるというのが本書の趣旨。 持続可能性の概念が広まった現代においては、「それぐらい知ってるよ」と感じる人が多いかもしれないが、さて、どれぐらい知っているのだろうか? 本書を読んでいて第一に驚いたのは、「土壌とはこれほど失われやすいものなのか」ということだ。農地を耕すことは良いことだと想像していたが、耕すことが土壌の侵食を数十倍に早め、農地の寿命を短くすることがあるということも、都会暮らしの私には知らないことだった。 本書では取り上げられていないが、以前、オーストラリアに行った際にアボリジニは6万年にわたり、持続的な土地利用をしてきたという話を聞いた。当時はその凄さがあまり理解できなかったが、本書を読んでその圧倒的な実績がやっと実感された。 第二に驚いた点としては、食料需給の問題について。 化学肥料無しで現代の食料需要を賄うことは不可能だと思い込んで生きてきたが、有機農法は必ずしも収量を減らすわけではなく、むしろ長期的には経済性も含めて慣行農業より優れた結果を出しうるという指摘。私の今の思い込みがなぜ形成されたかが察せられるようなアメリカにおける政治的な知識形成についての記述も興味深かった。 最後に、本書を読むと景観を見る目が変わるなと。 地形の凹凸を見るにしても、雨の日の川の濁り具合を見るにしても、地面に生えるクローバーをみるのも、土壌に関わる示唆が得られるようになり、散歩がさらに楽しくなる 著者の新作が本屋に並んでいたのでそちらも読んでみたいと思う
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・気候変動が今後どのような影響を人類に及ぼすかという疑問から手に取った一冊であったが、私にはいささか難しいすぎ、また自分の知りたかった部分の記述は意外と少なく流し読みになった。 ・しかし学びは幾つかあった。土地が支えられる以上に養うべき人間が増えた時、社会的政治的紛争が繰り返され、社会を衰退させた。 ・肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある点に達すると傾斜地での耕作に頼るようになる。植物が切り払われ、継続的に耕起することでむき出しの土壌が雨と流水にさらされるようになると、急速な斜面の土壌侵食が起きる。その後の数世紀で農業はますます集約化しそのために養分不足や土壌の喪失が発生すると収量が低下して人口を支えるには不十分となり、文明全体が破綻へと向かう。 ・人口統計学によると2050年までは世界人口は増え続け、人口が増えると経済活動は活発になるという。経済活動は環境への影響のみを考えるとマイナスに働く。 ・つまり環境難民は今後もっと増加するだろう。世界は人口を減らすための方策を分からないように取るだろう。そうなった時の今後の自分の身の振り方を考えなければいけないと思わされた一冊であった。
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原題は「Dirt:The Erosion of civilization」=「泥:文明の浸食」。その名の通り、文明がいかに表土を侵食し、貴重な資源を食いつぶしてきたかという歴史である。人類が農耕を始め、鋤を使って土を耕起するようになってから表土の流出が始まった。それは、ローマ帝国...
原題は「Dirt:The Erosion of civilization」=「泥:文明の浸食」。その名の通り、文明がいかに表土を侵食し、貴重な資源を食いつぶしてきたかという歴史である。人類が農耕を始め、鋤を使って土を耕起するようになってから表土の流出が始まった。それは、ローマ帝国やマヤ文明を滅ぼし、今もアフリカの飢餓を招き、アメリカや中国を衰退させようとしている。それに拍車をかけたのが、石油から生み出した肥料を土に施して収量を増やす「緑の革命」だった。しかし、遺伝子操作と農業化学による収穫増は、もはや限界に来ている。有限の資源である土を、いかに保全し持続させてゆくか。そこに人類の未来がかかっている。
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土壌を大切にしなければ、文明は崩壊するということがこの本では伝えています。私は、ジャレドダイヤモンド氏の著書を読むなかで、土の大切さに気づき、より詳しく知りたいと考え、「土の文明史」を読むことにしました。ただ、中盤の内容がほとんど繰り返しになっており、冗長でそこまで面白くはありませんでした。 しかしながら、土壌やミミズの説明。表土を大切にするためには、自然農法が効果的であること。現在の二酸化炭素の三分の一は土を掘り起こすことで発生している。現行農法は必ずしも正解ではないこと。など、参考になる視点は多くありました。 私はこの本を通して、自然農法により興味を持つことができたので感謝しています。
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土壌流出が農業をする限りは宿命的についてまわる問題であり、過去の文明に大きなダメージを与えてきたことを明らかにしてくれる。 しかしながら冗長かつ散漫な書きぶりもあって、今日の文明にとってもどれくらいの深刻度の問題となっているかが今ひとつ見えてこない。著者は緑の革命の成果などに否...
土壌流出が農業をする限りは宿命的についてまわる問題であり、過去の文明に大きなダメージを与えてきたことを明らかにしてくれる。 しかしながら冗長かつ散漫な書きぶりもあって、今日の文明にとってもどれくらいの深刻度の問題となっているかが今ひとつ見えてこない。著者は緑の革命の成果などに否定的なのだが、いまだ農業生産は右肩上がりに増え続けているしねえ。
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非常に面白いテーマだが、古代帝国から近代国家まで、土壌の侵食が進んだ経緯や斜面耕作地や限界地まで切り詰めて行った流れが繰り返し同じであり、読み物として退屈させる内容だった。 シュメールやローマ、帝国時代の欧米など、根本を辿れば侵食で土壌喪失したことが文明崩壊や人口破綻の原因となっ...
非常に面白いテーマだが、古代帝国から近代国家まで、土壌の侵食が進んだ経緯や斜面耕作地や限界地まで切り詰めて行った流れが繰り返し同じであり、読み物として退屈させる内容だった。 シュメールやローマ、帝国時代の欧米など、根本を辿れば侵食で土壌喪失したことが文明崩壊や人口破綻の原因となった印象を受ける。 共通して言えるのは侵食の進行はある程度時間を伴うため、どの社会も目先の利益を優先させてしまう点。 これからの人口を養うための取り組みとして、小規模で有機・不耕作のシステムを提唱している
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他のレビュワーも触れている通り『文明崩壊』でそのエッセンスは要約されているので、趣味の読書の範囲においてはそちらを薦める。
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『銃・病原菌・鉄』を補完するという評もあったので読んでみた。さすがに、ずーーーーーーーーと土の話で、まいった。途中からはとばし読み。もっと土が好きになったら読み返す。
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面白かったけど、後半に向かうにつれてちょっとタレた。先に『文明崩壊』を読んでいて、巻末の参考文献リストから飛んできて手に取った本でしたが、この本における主要なエッセンスはがっつり『文明崩壊』の方で要約されてしまっていたということが読み進めるごとに明らかに。 つまるところ、程度の差こそあれ、過去に崩壊した様々な文明や、現在進行形で消滅の危機にある地域の疲弊の原因は良質な土壌の流出によるものなんですよ、ということを一冊を費やして何度も何度も繰り返し論じている、というのがこの本の軸です。中盤あたりでそれが読み取れてしまうので、あとは章ごとに新たに出てくる各地の事例を各論として読むだけ、となってしまいます。 土のことだけ抜き出して詳しく知りたい、という方にとっては良質な参考書となるでしょう。土以外の要素も含めて文明の疲弊や崩壊について知りたいのなら、包括論になっている『文明崩壊』を読んだほうが参考になります。
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