「私」時代のデモクラシー の商品レビュー
民主主義社会に生きているはずなのに、民主主義ってなんだかよく分からない。破綻しているとか言われているし。民主主義って何? 民主主義のもとでは、正解を出すこと以上にみんなが納得して決めたかどうかが大きい。
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タイトルにあるとおり、「私」という視点から現代社会について書かれている。「私」に焦点をあわせざるえない現代とは、言い換えれば、「社会」の底が抜けた「セカイ系」的な世界認識とも言えよう。そのなかで、デモクラシーはどのように成立しうるのかについて考察されている。現代日本を人文系学問の...
タイトルにあるとおり、「私」という視点から現代社会について書かれている。「私」に焦点をあわせざるえない現代とは、言い換えれば、「社会」の底が抜けた「セカイ系」的な世界認識とも言えよう。そのなかで、デモクラシーはどのように成立しうるのかについて考察されている。現代日本を人文系学問のテクストから読み解くスタイル。現代社会を理解するうえで、参照点となる著作のレビューとしても役立つ良書。
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トクヴィルの「平等化」という概念を出発点にして、近年の政治学・社会学の知見を踏まえつつ、平易な筆致でコンパクトかつ包括的な視野でまとめた良書。 デモクラシーつまり民主制とは、社会のありかたないし政治というものを、私たちが決める制度である。だからタイトルは、私が私たちの社会を決め...
トクヴィルの「平等化」という概念を出発点にして、近年の政治学・社会学の知見を踏まえつつ、平易な筆致でコンパクトかつ包括的な視野でまとめた良書。 デモクラシーつまり民主制とは、社会のありかたないし政治というものを、私たちが決める制度である。だからタイトルは、私が私たちの社会を決める時代という、ごく当たり前の事を言っているようにも見える。 しかし、「私から私たちへ」と繋がる回路が、現代は困難を迎えているというのが筆者の視点である。しかもそれは近代の出発点から埋め込まれていたという。筆者はトクヴィルの「平等化」という概念から〈私〉というものを特徴づける。 「〈私〉は、一人ひとりが強い自意識を持ち、自分の固有性にこだわります。しかしながら、そのような一人ひとりの自意識は、社会全体として見ると、どことなく似通っており誰一人特別な存在はいません。」(まえがきⅷ) つまり〈私〉とは、私が独特であるという固有性/独特である私という凡庸さ、という二つに引き裂かれた存在だと言える。〈私〉とは、他者と比較しながら私自身によって私を定義することを強いられる。 もちろんこの〈私〉という定義は、ある意味古典的ともいえる認識である。しかし「〈私〉時代」とタイトルにあるように、また本書の第一章の始めが「グローバルな平等化の波」とあるように、世界規模で〈私〉化が展開されているのが、現代なのである。 本書は「平等化」「〈私〉」を鍵概念として、世界また日本における平等意識の変容(第一章)、「社会的不平等の個人化」とも特徴付けられる現代の個人主義の意味変容(第二章)、現代日本の政治における私ー公の短絡とナショナリズム(第三章)を分析していく。 そして第四章において、熟議民主主義的なプロセスの効果として現れる「共感」(スミス)を他者への回路として、「希望の分配のメカニズム」としての社会を再構築することが企図される。
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「はじめに」と「むすび」が素晴らしくよくまとまっていて、それだけでもいいくらい。 新書にはよくあることだけれど、本書も、基礎知識があまりない人には難しく、社会科学を学んだ人には物足りない内容なのでは。初学者向けというのかも。 新しいと思える発想などは特になかった。平等意識の変...
「はじめに」と「むすび」が素晴らしくよくまとまっていて、それだけでもいいくらい。 新書にはよくあることだけれど、本書も、基礎知識があまりない人には難しく、社会科学を学んだ人には物足りない内容なのでは。初学者向けというのかも。 新しいと思える発想などは特になかった。平等意識の変容はよく言われていて、「定説」らしきものもあるし、実際変わっているのは間違いないのだろうけど、実感として理解できない。私が若くて変容後世代だからかな…。
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デモクラシーって言葉の響きからはなんか古臭い響きを感じるけど、現代的な不安や孤独や憤りは実はデモクラシーの機能不全から発しているのだ、とのこと。 孤独や不安や拝金主義や刹那主義は、生きる意味の不足から生まれる。 人生に意味と方向性を感じることができなければ、目の前の快不快だけに...
デモクラシーって言葉の響きからはなんか古臭い響きを感じるけど、現代的な不安や孤独や憤りは実はデモクラシーの機能不全から発しているのだ、とのこと。 孤独や不安や拝金主義や刹那主義は、生きる意味の不足から生まれる。 人生に意味と方向性を感じることができなければ、目の前の快不快だけに注目して生きるか、幻想の中に生きるしかない。 しかしあらゆる物事の価値基準を社会や伝統でなく、自分の中にだけ求めていれば、「生まれて死んでいくことに意味はない」という事実によって絶望とニヒリズムに追い込まれてしまうのは必至。個人には、役割と位置を与えて価値の源泉となる社会が必要。 今足りないのはきっと生きる意味というようなものなのだけど、実質として何が価値有ることなのかは分からないから、まずは手続きとしてデモクラシーを整備してみんなで一歩一歩確認しあって所属するに足る社会を作っていきましょう、という本書の主張は納得感がある。
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縁があって買った本。砂粒の集まりみたい社会とその民主主義の問題やなにかをなるべくわかりやすく書いてある…ように思うが、終盤を忘れてしまったので偉そうなことは言えない。
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格差社会が出現したのではなく、格差が意識されるようになった・・と理解していいのかな。平等(垣根を取り除く)になることは、精神的には追いつめられるのと同義なのかぁ・・・。
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まだ読み途中なので覚え書き程度に。 内容は充実で現代を生きる上で重要と思われる。が、言いまわしがもう少し簡潔だと良いか。丁寧に説明しようとしている熱意はとても感じられる。
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<図書館で借りた> 個人主義といわれるが、本当の意味で<私>と対峙できていない。 (1)<私>が何を望んでいるのかを感じとり、(2)その<私>の望みが<私たち>の中でどのような位置付けが可能かを描くレベルに発展させると、(3)<私たち>のコラボの方法が見えてくるのだろう。 私...
<図書館で借りた> 個人主義といわれるが、本当の意味で<私>と対峙できていない。 (1)<私>が何を望んでいるのかを感じとり、(2)その<私>の望みが<私たち>の中でどのような位置付けが可能かを描くレベルに発展させると、(3)<私たち>のコラボの方法が見えてくるのだろう。 私の考えは以前(3)に固執していたが、それがここ数カ月の体験で(1)に移行した。しかし、今はそこに(2)の視点が欠落していたことを、本書で確認できた。
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「現代社会の特徴を捉えるには、〈私〉という視点は欠かせない」という視点からのデモクラシー論。おそろしく説得力がありました。トクヴィルに関する他の本も読みたくなりました。
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