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団地の女学生 の商品レビュー

3.6

19件のお客様レビュー

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2019/03/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

団地に住む人たちのそれぞれの人生。 優秀な学生時代とは裏腹に、夢に敗れ独身のままヘルパーとして働く美弥。 輝く若かりし頃の思い出だけを頼りに、家族に見放された孤独な老人たちの世話をする毎日のなか 幼馴染でミュージシャンになった都と再会することになった。 子供の頃は物静かだった都が、今では人気スターとなって美弥の目の前にあらわれることの嫉妬と羨望にもがき 人気も落ちかけてきた都の良き友人を装いながらも 彼女は美弥の気持ちに気づくこともなく、彼女を置いていってしまう。 他、団地に住む老女が、かつて自分に好意を持ってくれていた古き幼馴染を、隣人のホモの40代フリーター男と一緒に訪ねるまで。 切ない現実。でもこれが現実。 本能のままに生きればいいの?都のように、鈍感に。 いろいろ考えちゃったほうが結局損しているのかなあ。

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2014/04/19

 2010発表、伏見憲明著。団地で介護の仕事をする主人公の、有名歌手になったかつての友達Miiyaへの嫉妬「爪を噛む女」。老女瑛子が、隣に住む中年男性ミノちゃんと故郷を訪れる「団地の女学生」。  表紙を見てもっとポップな小説なのかと思っていたが、全くそんなことはなかった。どちらも...

 2010発表、伏見憲明著。団地で介護の仕事をする主人公の、有名歌手になったかつての友達Miiyaへの嫉妬「爪を噛む女」。老女瑛子が、隣に住む中年男性ミノちゃんと故郷を訪れる「団地の女学生」。  表紙を見てもっとポップな小説なのかと思っていたが、全くそんなことはなかった。どちらも実に純文っぽい文体で、皮肉とユーモアを絡みつかせ、辛辣な現実が露骨に描かれている。  特に「爪を噛む女」は、男である著者がどうやって書いたのか感心するほど、嫉妬する女の心理描写がリアルだ。読んでいると本当に主人公は嫌な女だなと思いつつも、何となく同意できてしまう部分もあり、それがまた余計に後味が悪い。  「団地の女学生」の方も、取り残されてしまった老人の寂しさがよく描写できていると思う。また、ミノちゃんの掴みどころのない気持ち悪さが、ほどよくパンチになっている。ただ一点だけ若干気になるのは、途中まで瑛子寄りの三者視点で書かれていた文章が、不意にミノちゃん寄りに変わる部分。「ミノちゃんの」といった呼称で書かれているので瑛子が彼のことを観察しているのか思ったら、そうではない。完全に神の視点である。節が変わってそうなるのなら納得できるが、こうも平然と書かれてしまうとちょっと無神経だなと感じる。

Posted byブクログ

2014/05/18

団地を舞台に繰り広げられる人間模様。 個人的には表題「団地の女学生」が一番面白かった。 団地って、秋の夕暮って感じだな・・・と思った。 狭い空間での人間関係は密で、団地を舞台にした小説は魅力的だ。

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2013/04/19

40代中年太めの男性ミノちゃんと、老年の女性瑛子のちょっとした遠出。瑛子が学生時代自分を好いていてくれた男性に、約60年ぶりに会おうと思い、遠方に出向くに対し、ミノちゃんは掲示板でその場限りにセックスできる男性を探す。こちらは『魔女の息子』のように、中年のゲイの男性と、老年の女性...

40代中年太めの男性ミノちゃんと、老年の女性瑛子のちょっとした遠出。瑛子が学生時代自分を好いていてくれた男性に、約60年ぶりに会おうと思い、遠方に出向くに対し、ミノちゃんは掲示板でその場限りにセックスできる男性を探す。こちらは『魔女の息子』のように、中年のゲイの男性と、老年の女性が出てくるが、もう一つ収録されている「爪を噛む女」は、これがまた女性の嫉妬の話で意外だった。同級生を見下し、自分が面倒を見てあげていると思っていたが、その同級生はスターとなり、しかも学生時代自分のことを実は慕ってくれているわけではなかった。しかも結局、美弥の学生時代からの1人相撲だったっていうのが、すごく切ない。でも、どちらの話も、「人は人、自分は自分」スタイルで終わり、読後感は良い。瑛子もミノちゃんがゲイと知って驚くが、ミノちゃんに嫌悪感を抱くわけでもなく、昔の固定観念ゆえに「親がミノちゃんの育て方を間違ったのか?」と思ったりもしたようだが、結局は「不思議ねぇ」というふうに、ミノちゃんを思う。老人もアラフォーもゲ男女関係なく、そしてゲイも書けてしまう伏見さんは、すごく人間観察がうまいのでは。

Posted byブクログ

2013/02/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

三浦しをん「本屋さんで待ち合わせ」より。表紙の絵が変だけど、意外と面白かった。2編入ってるけど、最初の「爪を噛む女」が断然良かった。表題作は団地に住むおばあさんが隣の40代のゲイと一緒に実家に戻るお話。途中急にゲイの語りが差し込まれるのが嫌。携帯の出会い系でさくさくと旅先の一夜の相手を決めてしまうことと、60年ぶりの幼馴染との再会が同時に起こってるって、現代はすごいなと思ってしまう。多種多様になったのだ。で、最初の爪…は、非常に身に迫る。38歳独身女性。やっぱ仕事があって良かったなと思う。私のおひとり様を支えるのは、経済力に他ならない。立派な中年となった息子とその嫁にたかられる内海香代さんはほんとに気の毒だ。こんな親不孝者は死ねばいいと思う。虐待じゃないか。ヘルパーさんはこういう人たちをたくさん見てるんだろうな。友達だった人が有名人になるって今のとこ私にはないけど、こういう複雑な気持ちになるんだろうな。

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2012/10/21

団地の女学生 伏見憲明(著) (出版社) 集英社 (価格) 1260円 (ISBN) 9784087713398 あの女の凋落を私こそが見届けなければ!切なく愛しい「昭和の生き残りたち」桜草団地の住人たちが大暴走。 (図書館) 未婚でアラフォーで3K仕事でワーキングプアの...

団地の女学生 伏見憲明(著) (出版社) 集英社 (価格) 1260円 (ISBN) 9784087713398 あの女の凋落を私こそが見届けなければ!切なく愛しい「昭和の生き残りたち」桜草団地の住人たちが大暴走。 (図書館) 未婚でアラフォーで3K仕事でワーキングプアの美弥。 一方、かつて は『格下』で冴えない幼なじみだったはずが、今は一躍スター歌手としてもてはやされている都。二人が20年ぶりの再会を果たす。 都への嫉妬と憧憬に苦悶する美弥の内面のドロドロっぷりがとにかくすごい!完全に一人相撲なんだけど…。ラストにはなにか救いのようものが描かれているのだが、どこか倒錯気味であるのが悲しい。。。でも、わかるなー、こうゆう感じ。人生ってやっぱり不平等だし、いくら自分は自分と割り切っても割り切れきれないものが残る。文体はいたって写実的だが、著者的には『コメディ』らしい。てか、『コメディ』って言ってもらわないと、痛くて切なくて読んでられないと思う。

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2011/06/28

表題作「団地の女学生」と、中編作品「爪を噛む女」では団地周辺に住まう人々の関係性の中でストーリーが進んでいくが、後者はその微妙な関係を薄氷を踏みながら描ききることに成功し、前者は薄氷を踏み破ってしまった作品と言えるのではないか。 「爪を噛む女」。 老人ばかりが住む団地で働く独身の...

表題作「団地の女学生」と、中編作品「爪を噛む女」では団地周辺に住まう人々の関係性の中でストーリーが進んでいくが、後者はその微妙な関係を薄氷を踏みながら描ききることに成功し、前者は薄氷を踏み破ってしまった作品と言えるのではないか。 「爪を噛む女」。 老人ばかりが住む団地で働く独身の訪問ヘルパー・美也のもとに、大ヒットを飛ばす歌手となった幼馴染・都から連絡がある。 色濃く都と美也の関係性が描かれ、周りはグラデーションのように美也を取り巻く老人たち、老人を取り巻く薄情な子供たち、そして、都を取り巻く人たちを描ききる。 微妙な立ち位置で人間関係の危うさを、いやーな感じで表現し、残酷なまでに市井を生きる人の感情をまさに微妙な人間配置のなか、描ききっているのである。この筆力は何なのだろうと思った。きっとこの筆者の稀なる人間観察力、そして、人間のよりそう感情を正直に掬うことができるひとなんだろう。すばらしいの一言につきる。 それに比し、「団地の女学生」はぎりぎりアウトである。あと少しなのである。 老女となった瑛子が戦前の初恋相手を訪ねるとき、団地の近所に住んでいる40代のゲイ男性ミノと高崎までの道中を旅する。 2人の人間のグラデーションがよくないのである。 瑛子が主人公といえるのだが、その近所にいるミノというゲイの男性がいまいちシンボリックに生かされていないのである。 筆者は90年代、ゲイ・ムーヴメントに影響を与えた人なのだが、ミノがただゲイというだけで、それだけがなんだか浮いてしまっているのである。ゲイであることはかまわないのだが、ただ出会い系だけを求めるような軽さだけで、意味合いをほとんど刻むことのないまま、存在しているのが惜しいのだ。 あと一歩踏み込みが必要なのだ。 改めて人間の関係性を表現することの難しさに気付いてしまいました。 はたして私は、<私>として、どんな関係性をストーリー化すればいいのだろうか? ただ悩むばかりである。

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2011/05/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 「爪を噛む女」について  私と同年代の女性の挫折と、 それを認めて生きていくまでの 過程が滑稽かつ愛しく共感が持てた。  随所に登場するパンチの効いた 比喩表現やシニカルでいながら 心温かい主人公も魅力的だ。

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2011/02/21

初めて読む作家さんでした。 2編が収録されていますが 舞台は同じ団地内です。 出だしのトイレ掃除の表現から この人なかなかうまい事かくな~と思いました。 装丁から内容が全然想像できなかったけど なかなかおもしろかったです。

Posted byブクログ

2011/01/21

2編あるうちの前半だけ読みました。 人間の嫉妬に関しての話ですが、誰もが持ってるこの感情をうまく描いていておもしろかったです。

Posted byブクログ