東ドイツのひとびと の商品レビュー
ドイツの「悪」をすべて引き受けさせられたような東側の語られ方を、もうちょっとちゃんと見直そうという試み。 序文に書かれている通りの、「これを書く、このように書く」という志が素晴らしい。客観などありえないからこそ自分の主観を自覚して、それに引きずられないように注意して対象を見ていく...
ドイツの「悪」をすべて引き受けさせられたような東側の語られ方を、もうちょっとちゃんと見直そうという試み。 序文に書かれている通りの、「これを書く、このように書く」という志が素晴らしい。客観などありえないからこそ自分の主観を自覚して、それに引きずられないように注意して対象を見ていく視点。 市井の人々そのものを直接語るのではなく、人々を軸に出来事がどのような意味を持つのかを説く「論」。「論」だけど描かれるのは「東側の悪」にすぎない取るに足りないもののようには斬って捨てられない「人」。 政治の中枢以外の人々をさまざまな角度から読み解く。 たとえば建築。たとえば経済。たとえば芸術。たとえばセクシュアリティから。 東ドイツの話を読むと、どうしても「世界一うまくいった社会主義の国」のうまくいかなくなってきた今日この頃を連想する。均質な個がバラバラに存在していてつながれない、つながれない弱さと強さとか。違うところと似ているところと。 学ぶべきことだ。
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