デキる弁護士、ダメな弁護士 の商品レビュー
この中では弘中弁護士が異色。正義は各々にあるとしても、権力の側かそうでないかの識別はできるとは思う。個人を支援するより、法人支援する方が儲かるのは事実だし、あとは弁護士の信条次第なのかと。 有名弁護士のインタビュー集なので、題名がオカシイ。新書はこういうのを止めないと信頼を失う。
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「イソ弁」、「ノキ弁」という言葉を最初に聞いたときに思ったのが、デパートでよく開催されている全国うまいもの大会に行けば売っている弁当のことかと思った。そうではなく、「イソ弁」とは、「法律事務所の軒先を借りる弁護士」のことを指し、「ノキ弁」とは、「居候弁護士」のことを指す。居候といっても勤務はもちろんする。 弁護士になったからといって稼げる保証はなく、それどころか法律事務所に就職することすら難しい人が増えているとニュースで報じられるようになった。弁護士のイメージといえば、あのNHKで以前放送していた、ボストンの法律事務所を舞台にしたさまざまな人間模様を描いた「アリーマイラブ」が浮かんでくる。あれはアメリかの法律事務所を描いているので、日本とは違う点はある。モクモク羊自身も法律業界とは関わりがあるが、法律事務所で勤務しているわけではないから幸か不幸か実情は知らない。 驚いたのが、弁護士が同時に弁理士・税理士登録ができると知ったことだ。理系の素養がないとできない仕事で、いくら司法試験をパスしたからといって同時に登録できるなんて人が良すぎる。東大法学部卒だからといって万能ではないように、弁護士だからといって全能の神様じゃないのだから悪い冗談は勘弁して欲しい。特許に暗い弁護士が弁理士もやっていますなんて涼しい顔されては、日本の貴重な知的財産が外国の企業のいいようにされてしまう。 この本に載っている弁護士で名前や顔を知っている人がいるかもしれない。さまざまな刑事事件を担当している弘中惇一郎弁護士(AERAの表紙に載ったことがある)とマスコミで見かけることのある総会屋・企業法務・エンターテイメント・知的財産を担当している久保利英明弁護士。この本に載っている5人の弁護士に共通しているのが、弁護士バッジにあぐらをかくことなくイノベーションし続けているから仕事のできる弁護士としてやっているのだなと分かる。 著書でも指摘しているが、日本の場合、多くが法学部卒業、ロースクール卒業という法学一直線の方が弁護士になる。アメリカの場合、大学ではリベラル・アーツといって文系・理系の壁がなく自由に科目が取れる。専門的なことを学びたかったら大学院に行きましょうということでロースクールがある。久保利弁護士は、「社会人こそ弁護士になってもらいたい。アメリカでは、映画のプロデューサーにも弁護士がたくさんいて、映画を買い付ける人も弁護士がいる。日本にもそういうタイプの弁護士が出て来てほしい」と言われている。遊びがある人とない人とでは違うということだな。 ぺらぺら読み進めて気になったところがあった。それはテレビCM でよく目にするあの法律事務所MIRAIOが、小さい案件をかき集めてチリも積もる方式で年商90億円になると著書にあり、儲かっている法律事務所もあるのだなあと思った。電車の社内広告でも全国チェーン店のような法律事務所があるのには驚いた。全国展開してそんなにうまみがあるのかなとふと疑問に思った。 これからの弁護士に必要なのは、アイディアと先見性が必要になると久保利氏は述べている。法律業界のみならずどの業界にも必要なスキルだな。昔かじった六法全書だけを頼りに仕事をしているとやけどする。 余談 法律に関する本を読んでいて思い出したのが、以前「手軽に読める英語」で使ったニューヨーク・タイムズの記事にE-Discoveryに関する記事があった。E-Discoveryとは、E-mailなどの電子化された資料を訴訟に必要かどうか仕分ける制度がある。週刊ダイヤモンドだったと思うが、アメリカの法律事務所に勤務する新人弁護士は、E-Discoveryの業務に当たることが多くなかなか他の業務に携われないそうだ。日本でもちらほら出始めているがこれから需要が増えるのかどうか気になるところだ。 http://www.nytimes.com/2011/03/05/science/05legal.html?_r=1&pagewanted=all
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弘中惇一郎先生、久保利英明先生、升永英俊先生、村尾龍雄先生、中村直人先生という、超ビックネームばかり。刑事裁判においての無罪判決の難しさ、本来の法曹に求められる資質、中国が人治国家といわれる所以等々、学ぶことが多いです。
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事件処理や事務所経営についての具体的な記述が少なく、「登場する弁護士のどこがすごいのか」という点が全く明らかにされていない。著者の取材能力を疑う。
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弘中弁護士が嫌いな言葉「リーガルサービス」と「企業法務」。法を道具にしたような言葉。◆是に続く弁護士のインタビューが企業法務の久保利とは、中々シュール。◆5人5様な弁護士が言っているなかで共通なことは、タイムチャージじゃいけないということ。
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まず,タイトルがあざとすぎる。中身は著名弁護士5人のインタヴューに過ぎない。著者は法律事務所格付けビジネスを計画しているようで,そのための布石という感じ。自身ビジネスにつなげようとする企画臭さが強い。それにしても,「日本には,こんな懲罰的損害賠償制度はない。だから,訴訟案件が過半...
まず,タイトルがあざとすぎる。中身は著名弁護士5人のインタヴューに過ぎない。著者は法律事務所格付けビジネスを計画しているようで,そのための布石という感じ。自身ビジネスにつなげようとする企画臭さが強い。それにしても,「日本には,こんな懲罰的損害賠償制度はない。だから,訴訟案件が過半を占めているわけではない。では,日本の弁護士は何をやっているのかといったら,企業法務だ。」との著者の認識は,我々マチベンを完全に無視したもののように感じる(もちろん,彼女のビジネスに関係してくるのは,企業法務弁護士だけなのは理解するが)。ところで,懲罰的損害賠償制度がないから訴訟は儲からない→企業法務で稼ぐ,というロジックと,弁護士の5人に1人は年収500万円以下であり,ビジネスモデルとして効率が悪すぎるという分析は,矛盾しないのだろうか。これまで多くのマチベンは訴訟中心に仕事をしてきたし,だからこそ,実際に儲かってもいないのだ。ごく一部の成功者を除いて,社会的地位はどんどん低下し,経済的なインセンティブもこれまで以上に働かない。そのくせ参入障壁はいまだそこそこ高い。それが今後の弁護士業の実態だ。それでも誰かが役割として引き受けた方が社会にとっては有用な場面があって,それを引き受ける物好きな人がやる汚れ仕事なのだと思う。そういう意味で基本的に「ドブさらい」なのだ。この本が,企業法務に限ったものとして書かれていれば,それほど違和感を抱かなかっただろう。マチベンとビジネスロイヤーとの違いをことさら強調するつもりはないけれど,弁護士として一括りにするのなら,自分がその中のどのジャンルについて語っているのかは明確にすべきだと思う。一般の人達にとって弁護士はみんな弁護士なのだから。そういう意味でも,読み手よりも自分のために書かれた本という気がする。
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