1989 世界を変えた年 の商品レビュー
東欧の共産主義政権が次々に倒れた革命の年を、当時、Newsweekの特派員として現地で取材した振り返り。この年はアメリカをはじめとする西側諸国では、資本主義の勝利、自由を求める民衆の勝利として捉えられているが、必ずしもそうではないことを当時の現場をクローズアップして見せる。もちろ...
東欧の共産主義政権が次々に倒れた革命の年を、当時、Newsweekの特派員として現地で取材した振り返り。この年はアメリカをはじめとする西側諸国では、資本主義の勝利、自由を求める民衆の勝利として捉えられているが、必ずしもそうではないことを当時の現場をクローズアップして見せる。もちろん、そこには9.11以降に顕著になった超大国アメリカの行き詰まりを検証する視線がある。 まず、1989は共産圏での上からの革命でもあった。何と言っても、最初に流れを作ったのはゴルバチョフである。彼が武力侵攻をしないことを暗に保証し、東欧各国の運命をそれぞれの国に任せた。先陣を切ったのはハンガリーで、ネーメトをはじめとする共産党内部の改革派が、他の東欧諸国に波及させる意図まで持って上からの改革を進めた。それが東独を揺るがすことになる。ポーランドにしても、連帯を一度は弾圧したヤルゼルスキが時流を踏まえた判断をした功績がある。一方、アメリカは欧州の変化をなかなか捉えられずに後追いする形になる。レーガンやブッシュ・シニアがとった慎重な姿勢をたたえているのは、アメリカ人らしいところか。 自分がリアルタイムで経験した時代も歴史になりつつある。壁崩壊の時に、世界史の先生がなにやら興奮していたのを思い出した。
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私が今までにリアルタイムで見たニュースの中で最も驚愕したのが、ベルリンの壁崩壊だった。当時高校生だった私はテレビの前で「ええっ!?」と声をあげた。それから東欧は怒涛のように変化した。1989年とはその節目の年だ。本書の著者は、あの時に壁の東側で取材していたアメリカ人記者。事実は...
私が今までにリアルタイムで見たニュースの中で最も驚愕したのが、ベルリンの壁崩壊だった。当時高校生だった私はテレビの前で「ええっ!?」と声をあげた。それから東欧は怒涛のように変化した。1989年とはその節目の年だ。本書の著者は、あの時に壁の東側で取材していたアメリカ人記者。事実は小説より奇なりというが、ドキュメンタリーはドラマよりドラマチックとも言える。本当に面白い小説を読むようにグイグイ引き込まれた。 私がリアルタイムで知っている政治家で最も尊敬するのはゴルバチョフだ。東欧の変革もあの人がいなければ決して実現しなかっただろう。ソ連そのものが崩壊寸前だったからというのもあるだろうが、体制の頂点から体制を壊すことができた政治家は極めて少ない。本書では脇役のようにしか出てこないが、いずれ彼に関する本も読んでみようと思う。 日本で生まれ暮らしていると、国からどんどん人が逃げていくという状況は想像しづらい。豊かな日本に生まれてよかったと思う反面、日本だってそうならない保証はないということ気付く。しかも、西欧が隣にいてくれた東欧と異なり、島国日本は壁よりも手強い海に囲まれ、その向こうにも楽園はない。国が破綻するときはもっと悲惨なことになるのかもしれない。 ところで著者はあの出来事をアメリカの勝利のように思い込んでいるアメリカ人に対してそれは違うと釘を差しているが、多分アメリカ人以外にとっては自明のことだと思う。
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共産主義者を力ずくで円卓に座らせ、共産圏初の自由選挙を成し遂げたワレサ。政治囚として囚われの身だったハベルと共に熱狂的な市民の歓呼に応えたドプチェク元第一書記。クランツのスポークスマンがコメントを言い間違い、一挙に崩壊したベルリンの壁。東ドイツ国民を自由へのピクニックに誘い出した...
共産主義者を力ずくで円卓に座らせ、共産圏初の自由選挙を成し遂げたワレサ。政治囚として囚われの身だったハベルと共に熱狂的な市民の歓呼に応えたドプチェク元第一書記。クランツのスポークスマンがコメントを言い間違い、一挙に崩壊したベルリンの壁。東ドイツ国民を自由へのピクニックに誘い出した粋なハンガリーの指導者ネーメト。たった一人の市民のブーイングを皮切りにあっけなく幕を閉じたチャウシェスク王国。ハイライトが次々とフラッシュバックするそんな年1989。
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ユーロ2012決勝までに読み終えようと努力はしたが…この時ポーランドでユーロが行われるとは誰か思ったか。 長い付き合いな一冊でした。
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東西冷戦の最終局面である1989年に東欧で何が起きていたかを 著者のインタビュー、体験を交えて濃密に語る一書。 東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、 ルーマニア、チェコスロバキアに焦点が当てられており、 全体が絡み合って気運が盛り上がって行く様が感じられる。 また、写真や人物解説も...
東西冷戦の最終局面である1989年に東欧で何が起きていたかを 著者のインタビュー、体験を交えて濃密に語る一書。 東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、 ルーマニア、チェコスロバキアに焦点が当てられており、 全体が絡み合って気運が盛り上がって行く様が感じられる。 また、写真や人物解説も充実しておりイメージを膨らませる。 当然ながら各国それぞれのドラマがあり結末は相応に異なる。 それは当然各国の過去の歴史からも来るものであろうし、 本書では語りつくせない歴史があってのものだと思う。 個人的にこれまで焦点を当てていなかった ワルシャワ条約機構の東欧各国についても、 今後掘り下げていきたい気持ちになった。
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激動の東欧に居合わせ(ることができ)たジャーナリストが当時を振り返って記したルポルタージュ。 今の視点で過去を思い出しつつその場の空気を知っている人ならではの躍動感もあり、興味深く読んだ。 複数の国や出来事が平行して描かれるわりにごっちゃにならない。 バラバラだった知識がちゃんと...
激動の東欧に居合わせ(ることができ)たジャーナリストが当時を振り返って記したルポルタージュ。 今の視点で過去を思い出しつつその場の空気を知っている人ならではの躍動感もあり、興味深く読んだ。 複数の国や出来事が平行して描かれるわりにごっちゃにならない。 バラバラだった知識がちゃんと繋がった。 そうかこんなすごいことが起こっていたのか。 それは良かったんだけど、この本はアメリカ向け(だと思う)に出たものらしく、「アメリカのみんなは"正しいアメリカ"が悪いアカどもを倒して革命を起こさせてあげたと思ってるだろうけど、実はすべてがアメリカのおかげってわけじゃないんだよ、本人たちもがんばったんだよ」みたいなことが書いてある。 アメリカンじゃない目には、ジョークにでてくるステレオタイプな白人みたいな思考にびっくりする。本当にそんな風に思ってるのか! 著者はアメリカを過信しないアメリカ人(?)らしいけれど、言葉の端々ににじむナチュラルに上から目線な感覚が時々ものすごく鼻につく。 非当事者の無神経さはある程度しかたないにしても、部外者としての慎みが足りないのはいただけない。 チェコスロバキアのバルコニーで手を振るくだりは完全にアウトだ。 そこは部外者が遊んでいい場所じゃない。 でもアメリカの人で男で白人(?)で大手マスコミの記者で…というてっぺんマジョリティにしてはマシと思うべきだろうか。 訳がたまにおかしいのと、訳のせいか元々なのか微妙な言葉遣いのおかしさが気になる。「サッチャー夫人」とか。ないわー。
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ベルリンの壁崩壊までの東側世界が、その内部からどのように冷戦構造に終止符を打つに至ったか。ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコスロヴァキア(当時)、そして東ドイツ。共産主義政権に生きた人々が、緩やかに、かつ大胆に変革の波を湧き起こしたその過程を如実に知ることができる。著者が...
ベルリンの壁崩壊までの東側世界が、その内部からどのように冷戦構造に終止符を打つに至ったか。ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコスロヴァキア(当時)、そして東ドイツ。共産主義政権に生きた人々が、緩やかに、かつ大胆に変革の波を湧き起こしたその過程を如実に知ることができる。著者が述べるとおり、冷戦の終結は往々にして米ソ二超大国がもたらした帰結として語られるが、そこには東欧諸国の内政、すなわち抑圧的な共産主義政権からの解放を目指した運動が、大きく寄与している。その革命も、一括りに「東欧」と捉えられがちだが、個々の国々によってその運動の性質は異なる。それらについて、記者という視座からアプローチし、詳細なインタビューや当時の状況が目に映るような、スピード感ある筆致で描かれている。
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