レヴィ=ストロース の商品レビュー
レヴィ・ストロースの逝去が2009年10月30日。本書の初版発行が2010年2月28日。4か月程度で出版された追悼文集かと思ったら、以外に重くて、中々読み進められない。長いこと積読にしていたが、単身生活を終え、新コロナ渦の引き籠り生活中でやっと読み終える。 本書の中でも川田順造...
レヴィ・ストロースの逝去が2009年10月30日。本書の初版発行が2010年2月28日。4か月程度で出版された追悼文集かと思ったら、以外に重くて、中々読み進められない。長いこと積読にしていたが、単身生活を終え、新コロナ渦の引き籠り生活中でやっと読み終える。 本書の中でも川田順造、渡辺公三、小田亮、今福龍太の諸氏の文書が読み応えがある。小田亮「レヴィ=ストロース入門」は読んだが、神話構造のトポロジー数学のアナロジーを特に論じたものと思ったが、その点の論及はない。真正の社会をwhat(何者)かではなく、who(誰)というその人の全体性で結びついた世界としている。しかし、要素の取替、または関係性の取替が可能なのが「構造」ではないのだろうか。 本書のあちこちでレヴィ・ストロースの文書の美しさ、その詩的表現への言及がある。河出学術文庫の「悲しき熱帯」を昔読んだが、読み辛くて四苦八苦した身には意外。 中盤はやや薄めの評論の印象だが、終盤の「レヴィ=ストロースからはじまる」の一連の文章は、何となく知った気になっていた構造主義を考え直すことを迫ってくる。 そのうちの3つの論文がレヴィ=ストロースの継承者であり、批判者であったペール・クラストルに言及している。 交差イトコ婚が「女の交換」という隠れた循環構造に及ぶというのは、入門書でも書いてあることだが、「女は女と交換される」ほかない、単なる交易の一部ではありえず、財一般の交易とも同じでないという文章には納得しつつ、自分の理解の浅さを知らせらた。 交易関係の失敗が戦争との交換主義的解釈に対するクラストルの批判。社会に潜在している戦争機械が「女=性と家族」を巡って現生化しやすいこと。 評論は国家が戦争機械を飼い慣らし、暴力と法を独占するというドゥルーズ=ガタリまで進んでいく。 とても難しくて、理解できたとは云えないが、川田訳の「悲しき熱帯」は読まないといけないなあ。
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[ 内容 ] 20世紀最大の巨人の多面的で限りなく豊かな思想と軌跡を読むための決定版。 川田順造、渡辺公三、小田亮、出口顕、今福龍太、港千尋、安藤礼二、松枝到、小沼純一など。 [ 目次 ] レヴィ=ストロースに出会う(川田順造―レヴィ=ストロースへの道/レヴィ=ストロースからの道;渡辺公三―レヴィ=ストロースは何を問うたのか―世界にはじめて直面した人類のように ほか) レヴィ=ストロースを読むよろこび(今福龍太―野生の調教師―従順な猿、変身する鳥、神秘の猫;港千尋―神話的直観の庭で ほか) 未来のレヴィ=ストロースへ(淺野卓夫―サンパウロ、時の窓辺で―レヴィ=ストロースと「忘れられた日本人」;石川直樹―レヴィ=ストロースの戒め ほか) レヴィ=ストロースからはじまる(松田素二―反人種主義という困難―レヴィ=ストロース『人種と歴史』を読み直す;石原俊―戦争機械/女の交換/資本主義国家―ノマドとレヴィ=ストロース ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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P130-136の坂口恭平「路上のブリコルールへ」が面白い。「路上生活者のあり合わせの物で家や日用品を間に合わせてしまう状況は、レビィストロースがブラジルやアフリカの奥地で関わった、未開部族が限られた資源の中で、ジャングルで不意に拾った棒を後で活用するような状況と同じ」というブリ...
P130-136の坂口恭平「路上のブリコルールへ」が面白い。「路上生活者のあり合わせの物で家や日用品を間に合わせてしまう状況は、レビィストロースがブラジルやアフリカの奥地で関わった、未開部族が限られた資源の中で、ジャングルで不意に拾った棒を後で活用するような状況と同じ」というブリッジは確かにと思った。見方を一つ足された文章でした。
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渡辺公三、小田亮の文もいいのだけれど、個人的には今福龍太の「野生の調教師~従順な猿、変身する鳥、神秘の猫~」が非常に面白かった。 人間という対象だけに閉じこもらず、なおかつ近代・ポストモダンという時代性・最先端にとらわれない、そこに関心を強く惹かれたのかもしれない。産業革命以降...
渡辺公三、小田亮の文もいいのだけれど、個人的には今福龍太の「野生の調教師~従順な猿、変身する鳥、神秘の猫~」が非常に面白かった。 人間という対象だけに閉じこもらず、なおかつ近代・ポストモダンという時代性・最先端にとらわれない、そこに関心を強く惹かれたのかもしれない。産業革命以降資本主義が世界を覆い、ホモエコノミクスが重い対象となりそこには経済・(豊かな)文化が伴った。またそこには西洋中心主義、社会的ダーウィニズムが重い腰を据え、自然と調和した生活をしていた未開人は歴史の漂白へと追いやられた。そんななか自然との関係の中で人間という存在を考え、(西洋)人間のエゴを告発し激しく挑発したレヴィ=ストロースが素人目ながらもとても輝いて見えてしまう。自身曰く、「新石器時代の人間」の思考(野生の思考)をサーチライトに南北アメリカの膨大な神話の森を探検したという。戦前から2009年まで100年生きた彼は、まさしく激動の時代を生きた。目の前で経験したものと、文献の深い潜水探検によって彼がいかなる人間像を、自然との関係を見出したのか、それを見つけるための冒険に今、踏み出そうと思う。 (レヴューを書くつもりが決意表明になってしもた…)
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レヴィ=ストロースをめぐって、その人物像や歩みといった話から、 「構造主義」のような概念に至るまで、色んな視点から色んな人が好きに述べている感じ。 サブタイトルには「入門のために」とあるが、あんまり入門書という感じではない。 色んなイシューが含まれていることは長短両面の印...
レヴィ=ストロースをめぐって、その人物像や歩みといった話から、 「構造主義」のような概念に至るまで、色んな視点から色んな人が好きに述べている感じ。 サブタイトルには「入門のために」とあるが、あんまり入門書という感じではない。 色んなイシューが含まれていることは長短両面の印象をこの書籍に与えている。長所として挙げられそうなのは、どこかに1つくらいは使える情報があるのではなかろうか、ということ。個人的には「真正な社会の思考としての人類学」という文章が興味深かった。恥ずかしながら「真正な社会」という概念について知らなかったので。 短所として、リファレンスを含んだ論文調のものもあれば、談話をまとめたものもあるので、どうにも質にバラつきがある感が否めない。恐らく、本職の人類学関係者の人々が読むと再確認・再発見できるような事柄があるのだろうが、勘所を押さえてどうにかしようと企んでいる私のような横着者にはやや不適当な本でもあった。 見かけたら立ち読みしてから買うべし。
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