15歳の東京大空襲 の商品レビュー
本書は私が大好きな故半藤一利氏の15歳にして体験した生の戦争体験である。同氏が11歳にして始まった太平洋戦争。真珠湾奇襲攻撃によりアメリカとイギリスに対しての戦争が始まる。連合艦隊から飛び立つ戦闘機や爆撃機が次々と真珠湾に停泊するアメリカの艦隊を海底に葬っていく。その後もマレー半...
本書は私が大好きな故半藤一利氏の15歳にして体験した生の戦争体験である。同氏が11歳にして始まった太平洋戦争。真珠湾奇襲攻撃によりアメリカとイギリスに対しての戦争が始まる。連合艦隊から飛び立つ戦闘機や爆撃機が次々と真珠湾に停泊するアメリカの艦隊を海底に葬っていく。その後もマレー半島における山下奉文の率いる日本軍はイギリスを駆逐し、日本の連戦連勝に国民も湧き立つ。その様な中で少年期を過ごした半藤氏。 当時の少年たちの遊びや友との交流風景、大人たちを見る目など、半藤氏自身が感じた思いを記憶を辿り文字にしていく。太平洋戦争開始前も大陸では中国との争いが既に始まっていたが、まだ国内は平和ムード、昭和初期の賑やかで長閑な風景がそこには広がっている。開戦後も勝利が続くうちは未だ食べるにも然程困らず、少年たちは元気に遊んでいる。やがておかしくなり始めるのはミッドウェー敗戦後と、開始わずか半年足らずで日本は徐々に下り坂を転げ落ち始める。実際に当時の少年たちや、大人たち日本国民には真実が知らされず、後になって歴史が紐解かれてから真実を知るのであろう。だが着実に暗いムードは国民の間に広がりつつある。鉄製品や銅の回収により、学校の二宮金次郎像は撤去され、ベーゴマは陶器に代わる。白いご飯は麦飯に代わる。そして学業さえも工場での勤労に代わる。外来語の排除により、野球のストライクも「正球」になる。全てが変わりゆく時代において、少年が何を感じどの様に生き延びたか。半藤氏の目を通した映像、耳から聞こえてくる言葉、脳裏に浮かんでくる不安や反発などが文字に起こされていく。 特に昭和19年以降は日本の状況は末期に近く、何をするにも全てが戦争中心に動いていく。兄弟も母親も疎開により離れ離れになった上、翌20年3月10日に東京大空襲を迎える。東京の向島に暮らしていた半藤氏は正に最も被害の大きい、東京の下町でそれを経験する。東京大空襲については様々な本でその被害の大きさや悲惨さを知ることが出来るが、そこに生きて走り抜いた少年がその目で見た真実、浮かび上がる感情をただ想うそのままに表していく。 そして戦後。アメリカの占領下にすぐに慣れていく国民生活。その様な中でもアメリカに対して持った感情は体験した半藤氏始めとする罹災者にしかわからないものであろう。 既に半藤氏は亡くなられ、本人の想いや言葉は残された書籍からしか拾い上げる事は出来なくなった。私は一ファンとして子供になった同氏とベーゴマの土俵越しに向き合い、戦争は大人たちに任せて遊んでいる様な感覚に陥る。亡くなった同氏に出会える一冊である。
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「欲しがりません勝つまでは」国民学校5年女子の作品/空襲があることは予期されていて、妹は縁故疎開、「焼夷弾には火叩き、鳶口、バケツ」「防空壕(下町では1mも掘ると地下水が出て閉口)」など/愚かな軍事教練/空襲の目標へ勤労動員/昭和19年、サイパンからのB29は日本上空の強い偏西風...
「欲しがりません勝つまでは」国民学校5年女子の作品/空襲があることは予期されていて、妹は縁故疎開、「焼夷弾には火叩き、鳶口、バケツ」「防空壕(下町では1mも掘ると地下水が出て閉口)」など/愚かな軍事教練/空襲の目標へ勤労動員/昭和19年、サイパンからのB29は日本上空の強い偏西風に苦しみ体当たり攻撃で思ったより損害が大きかった/ハンセン准将に代ったルメイ少佐は「軍需産業に限らず焼夷弾による都市破壊」武装、搭乗員を減らし高度を上げて編隊を組まず…/3月10日、背中に背負った荷物を捨て、川に落ちたから助かった
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1941年のアジア太平洋戦争開戦から、1945年の「玉音放送」までの戦争の時代を振り返った自伝的な内容。基本的な他の著書で述べられていた内容と重なるが、同級生たちとの記憶の突き合わせがなされた他、資料に即した補注的な記述が書き込まれている。そのため、当時の国民学校生→中学生が戦...
1941年のアジア太平洋戦争開戦から、1945年の「玉音放送」までの戦争の時代を振り返った自伝的な内容。基本的な他の著書で述べられていた内容と重なるが、同級生たちとの記憶の突き合わせがなされた他、資料に即した補注的な記述が書き込まれている。そのため、当時の国民学校生→中学生が戦争の時間をどのように生きたかがより立体的に伝わる内容となっている。時折挿入される当時の噂話や、少年たちの間に流行した「替え歌」の内容も面白い。 プリマー新書というメディアの特質からか、著者の戦争観や戦後に対する見方がいつになく率直に語られているようにも感じられた。戦後日本のアメリカニズムについて、面白半分に機銃掃射されて追いまくられ、死を覚悟したことのある人間がそんなに簡単にアメリカを好きになるはずがないという記述にはハッとさせられた。
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2015/7/20再読。東京大空襲の現場もよく行っているので辛い。救いは、15歳の少年体験で暗くならずに書いていただいていること。★4
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https://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/fb450411da8eb21212ba4dd356cc57e1
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半藤さんの、東京・向島を中心にした戦争体験記。空襲よりは、戦争全体の記憶について触れているもので、「昭和史」よりも格段に読みやすい中高生向け。 当時の文化も子どもの視点から扱い、合間に人々がこっそり流す笑い話や、軍歌・勅語への反発が入っていて、いつの時代も人の人らしさが残っている...
半藤さんの、東京・向島を中心にした戦争体験記。空襲よりは、戦争全体の記憶について触れているもので、「昭和史」よりも格段に読みやすい中高生向け。 当時の文化も子どもの視点から扱い、合間に人々がこっそり流す笑い話や、軍歌・勅語への反発が入っていて、いつの時代も人の人らしさが残っていることに安心もする。空襲のエピソードは、千葉方面へ逃げて一命を取り留めたという祖母から聞いた話と重なった。
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十五歳当時の半藤一利(登場人物)と、現在の半藤一利(語り手)が実際体験してた記憶・思い出と、残っている資料などから第三者的に見えてくる戦局とが、並列して明記されてるので、読むこちら側は、少年の気持ちと一緒に気楽に読み進めながらも、戦争の局面も同時に知る事が出来てとても読みやすかっ...
十五歳当時の半藤一利(登場人物)と、現在の半藤一利(語り手)が実際体験してた記憶・思い出と、残っている資料などから第三者的に見えてくる戦局とが、並列して明記されてるので、読むこちら側は、少年の気持ちと一緒に気楽に読み進めながらも、戦争の局面も同時に知る事が出来てとても読みやすかった。あっという間に読んでしまった。 そして、半藤一利らしい、東京大空襲の中でなんとか生き延びた経験を通して、忘れちゃいけない、戦争に対する思いも単に戦争は「悲惨」なだけじゃないことが書かれていたのが特筆。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 昭和十六年、東京下町の向島。 いまや少年少女も戦士となり、すべてが戦争にくみこまれる激動の日々が幕をあけた。 本書は、戦時下に必死に生きた一少年が、何を考え、喜び、悲しみ、どう生きぬいたかの物語である。 [ 目次 ] プロローグ 真珠湾攻撃と日本人―昭和十六年 第1章 悪ガキと忠君愛国―昭和十七年 第2章 軍国訓練と中学生―昭和十八年 第3章 鬼畜米英と防空壕―昭和十九年 第4章 「盲爆」と本土決戦―昭和二十年(1) 第5章 三月十日と焼死者―昭和二十年(2) エピローグ 天皇放送と煙草一本―昭和二十年(3) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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ぼくの父はこの3月10日(9日深夜)の空襲で焼け出されています。その話の続きはもう聞けないので、何かを知りたくて読んだのかも。 空襲に遭った人たち、ひいてはあの戦争のなかで市民がどんな気持ちで日常を過ごしていたか、時代の空気とでもいうのでしょうか、そういうことが知れて、とても参考...
ぼくの父はこの3月10日(9日深夜)の空襲で焼け出されています。その話の続きはもう聞けないので、何かを知りたくて読んだのかも。 空襲に遭った人たち、ひいてはあの戦争のなかで市民がどんな気持ちで日常を過ごしていたか、時代の空気とでもいうのでしょうか、そういうことが知れて、とても参考になりました。 語り継いでいかなければいけない話です。 [10.3.3]
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誰が悪いとか、どっちがひどいことをしたとか、そういうことは良く分からないけど、こんな暮らしをする時代が二度と来てほしくないと思う気持ちは確か。やっぱ戦争ってやだよ。
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