蝶花嬉遊図 の商品レビュー
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売れっ子脚本家だったモリ。50代の妻子持ち、レオと出会って仕事を減らし、彼との生活に没頭する。 この生活がまったりとしていて楽しげでゆるやかで、思わず「かくありたい」と思わせるところがお見事。 自分の価値観、彼の価値観、それがぴったりと一致して、二人の暮らしは桃源郷のようだ。 けれどもそれが崩れ始める。 物書きとしてのモリの欲求、認められたいという思い。 レオとの仲は軋み、不穏な空気が漂い始めたところで物語は唐突に終わる。 実際に「カモカのおっちゃん」との暮らしを大切にしていた著者にとって、それ以上は書けなかったというのが本当のところかもしれない。書いたら現実になってしまう、つるかめつるかめ、と背中を丸めて指に息を吹きかける、少女のような著者の姿が目に浮かぶ。けれどもその小さな体の中には、「書きたい」という欲求が、とめようもなくあふれていたのではないだろうか。
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田辺聖子さんの作品『蝶花嬉遊図』を読了。田辺さんの作品が多くあるのは知ってはいたが実はいままで一作品も読んだ事がなかった。お年を召してからの作品と思われるが、全然古さを感じなかった。いわゆるいけない関係の50代男性と30代女性のカップルのお話なのだが、何を大事にして生きて行くかという事を少しばかり考えさせられる作品だ。読む人のそれまでの一生き方、経験で読み取れる思いは大きく違うだろうとも思った。そのあたりを上手に解説した角田光代さんの解説文も秀逸で、小説本体と解説で完璧な一冊になっているのでは。そのような一見不真面目な遊び人だが、よく知ると芯のあるまじめな人物であるような作品を読む BGMに選んだのはBob JamesとEarl Klughの作品"One On One".これも古くささを感じさせない音楽だ。
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何度か読んでる田辺聖子さんの一冊。 20才年上の妻子持ちの男の人と共棲みして3年、元売れっ子ライター33才のモリ。男性の好み通りに(自分もそうしたいと思って)仕事もセーブして出来るだけシンプルな暮らしを堪能していたのに、ムクムクと仕事欲というか人から評価されたい、外の世界を意識し...
何度か読んでる田辺聖子さんの一冊。 20才年上の妻子持ちの男の人と共棲みして3年、元売れっ子ライター33才のモリ。男性の好み通りに(自分もそうしたいと思って)仕事もセーブして出来るだけシンプルな暮らしを堪能していたのに、ムクムクと仕事欲というか人から評価されたい、外の世界を意識しだした途端、二人だけの強固だと思ってた世界が崩れてしまう。 隠者のような愉悦な暮らしが3年経ったのと、モリがまだ33才というのと。仕方ないことなんだろうなぁ。
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かつては寝る間も惜しんで死臭を放ちながら机にかじりつきモノを書いていた脚本家のモリ。 30歳で、50代妻子もちのレオと出会いレオ好みの素朴でモノの少ない“仙人の生活”を知ってからは仕事は10分の1に減らし、二人でいられる時間の幸せに浸る日々だ。しかしそんな生活も3年を過ぎ、仕事へ...
かつては寝る間も惜しんで死臭を放ちながら机にかじりつきモノを書いていた脚本家のモリ。 30歳で、50代妻子もちのレオと出会いレオ好みの素朴でモノの少ない“仙人の生活”を知ってからは仕事は10分の1に減らし、二人でいられる時間の幸せに浸る日々だ。しかしそんな生活も3年を過ぎ、仕事への欲求がむくむくと湧いてきて…。 毎日相手の顔を見ることを至福として他のことはすべて捨て置くような生活はこのまま続けられるのか…。さあどうする、モリ、というところで物語は唐突に終わる。前半のまさしく“仙人の生活”を描いた部分はちょっと退屈してしまったけれど、それがあってこその後半部分。一本の電話をきっかけにモリが戦闘態勢に切り替わるシーンが印象的だ。レオに合わせるために無理をしていたわけでは決してないのに「やっぱりそっちのほうがモリらしいよ!」と、まるで友人のような目線で読んでしまった。
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綱渡りの幸福に、はらはらしながら感情移入して、この作品も一気に読んでしまった。 切なくて胸がきゅんとなるんだけど、決して不幸せさは感じさせない、田辺聖子さんの作品が好きな理由かもしれない。
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相変わらず、時代を感じさせない、田辺さんの作品。 角田さんの解説がまた、とっても共感できる。 山田詠美さんの解説もそうだったけれど、田辺本は、解説がこちらの気持ちを代弁してくれることが多い。 なので、解説を読み終えて改めて、読後の満足に浸れたりする。 ただ、この作品のラストは、...
相変わらず、時代を感じさせない、田辺さんの作品。 角田さんの解説がまた、とっても共感できる。 山田詠美さんの解説もそうだったけれど、田辺本は、解説がこちらの気持ちを代弁してくれることが多い。 なので、解説を読み終えて改めて、読後の満足に浸れたりする。 ただ、この作品のラストは、今まで読んできた田辺本とは、ちょっとちがうかな。 わたしにとっては、ちょっと物足りないラストだった。 あれ?終わりなの?という感じ。 角田さんの解説が、足してくれました。
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手癖で書かれたような印象を受けてしまった。 提示されている価値観と登場人物は田辺節だけど、ちょっとちぐはぐな。 読後感の悪いラストはむしろ好印象。
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