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の商品レビュー

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2023/06/06

アウシュビッツ体験記のなかでも必読の1冊。 ということで、読んでみた。やはり、重いです。 アウシュビッツでの生活の描写は、他の体験記とも共通するところが多いのだが、この本の特徴は、敬虔だった著者が神の存在を信じなくなったということにある。そして、信仰をなくしたにもかかわらず、...

アウシュビッツ体験記のなかでも必読の1冊。 ということで、読んでみた。やはり、重いです。 アウシュビッツでの生活の描写は、他の体験記とも共通するところが多いのだが、この本の特徴は、敬虔だった著者が神の存在を信じなくなったということにある。そして、信仰をなくしたにもかかわらず、著者はなんとか生き延びるわけだが、そこには父の存在がある。なんとか、父を守ろうと努力を続けるのだが、そうした中で、何度も父がいなければ楽になる、自由になれるという思いが湧き上がってくる、そのあたりなんともいたましい。そして、父親の息子への愛も胸が詰まる感じがする。 もう少し、事実的な発見としては、 ・著者はハンガリーのユダヤ人で戦争も終わりかけている1944年にアフビッツに送られるのだが、その時点で、アウシュビッツやユダヤ人の最終解決について、ほとんど知識がなかったということ ・著者によるとガス殺されるまえの子どもが直接焼却されていたというニュアンスの記述があること ・ソ連軍の前線が近づいてくるにあたって、収容者は前線から離れるために、集団で退去し、より前線から遠い収容所に「死の行進」をさせられるのだが、その過酷さが生々しく記載されている(収容所がソ連から解放されたとしても、そこに収容されていた人がそのまま解放されるわけではないというのが、あらためて理解できた)

Posted byブクログ

2023/03/05

覚悟して開いだが、やはり当然打ちのめされた。 楽観性バイアスへの後悔、信仰への枯渇と絶望、人間感情の放棄や虚無感…戦争は終わっても、生き延びた事実や当時宿った感情に、ずっとさいなまれ、業火に焼かれるおもいだろうと思う。

Posted byブクログ

2023/02/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『スローターハウス5』のアマゾンレビューで星1個をつけた方が「ヴィーゼルの『夜』を読んだことがないのか!」とお怒りのご様子で「ごめんなさい」ってことで読んでみました。 まずはフランソワ・モーリヤックの序文で身を引き締め、訳者あとがきの「幸福で屈託のない人たちには読んでほしくない」で覚悟を決めて本編に入りました。 まぁアウシュヴィッツ物ですよ。何度となく目や耳にしてきた悲惨なお話ですよ。が、ね、昨日みた健さんの『昭和残侠伝』もそうですが、5年前に読んでいたら「ほんとに人間って酷いことするよな」で終わりだったとおもうんですけど、今のわたしにはあまりにリアルなお話でした。 だってあたしったらこの3年間「アウシュヴィッツに加担したんじゃね?」ってことを突きつけられたんですもん。そして人間はいつでもあっち側になりうるってことも。いま起きている戦争はこの『夜』からなんにも学んでないしね。約束とか信頼とか仁義とかってどこいっちゃったのよ。ヴィーゼルさんの真実の言葉に打ちのめされました。 《坊や、よくお聞き、きみが強制収容所にいるんだということを忘れるんじゃないよ。ここでは、銘々が自分自身のために闘わねばならず、そして他人のことを考えてはならないのだ。自分の父親のことさえも、だ。ここでは、父親だって、かまってはいられないのだ。兄弟だって、友人だって。銘々が自分ひとりのだめだけに生き、そして死んでゆく》

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2022/09/17

子供が授業で読み、薦めてきたので私も読んだ。アウシュビッツが題材の、有名な本ですね。人間が人間をこんなふうに扱ったという事実に言葉を失う。本当に苦しくなる本です。

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2022/06/24

読んだのは日本語訳だけどこんなん書いてみたいと思うほど文章表現が格好よすぎた。戦争を伝える資料的価値の他に文学作品としての価値も高いと思っている。 アウシュビッツに着いて最初に目にしたものは、子供達を焼く炎だった。 積み重ねてきた信仰すら一瞬で霧散するほどの理不尽な仕打ち。命の...

読んだのは日本語訳だけどこんなん書いてみたいと思うほど文章表現が格好よすぎた。戦争を伝える資料的価値の他に文学作品としての価値も高いと思っている。 アウシュビッツに着いて最初に目にしたものは、子供達を焼く炎だった。 積み重ねてきた信仰すら一瞬で霧散するほどの理不尽な仕打ち。命の選別。恐怖。 昨日まで普通の生活を送っていたユダヤ人達が強制連行され、全てが変わってしまう。収容所から逃げ延びた少年の警告を誰も本気にしなかったらしい。ゲットーでの暮らしが続くと皆信じていたかった。しかしそんな暮らしは唐突で理不尽に奪われる。 少量の食べ物、長時間の労働。生きる希望が尽きても休むことは許されない。止まれば銃で撃たれて死ぬ。本来ならこんな目に合わずに済んだはずの人々が疲弊して死んだり飢えてパンを奪い合う。 世界との深い断絶の溝に堕とされた経験のある人が持つ絶望の哲学。そんな人にしか綴れない言葉がここにあると感じる。前書きからは著者が外部からの無理解や誤解をどんな思いでやり過ごしてきたか垣間見える。 外国のヒドイ話とか戦争の話として読むだけじゃなく、日本社会で理不尽な目にあってる人もあわせてる人も 今こそこれを読もうぜ!

Posted byブクログ

2020/07/05

著者は15歳のときに父、母、姉、妹とともに強制収容所に送られ、一家全員が虐殺される中、奇跡的に生き延びる。 その体験を綴った自伝的作品。

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2016/10/27

時に疑わしい、目を背けたくなるようなシーンも、それはすべてそう遠くない時に現実に起こったことなのである。ホロコーストは名の通りたくさんの人を殺した。身体的にも精神的にもである。生き延びた人にも、癒えることのない傷をつくった。極限状態になり、その人本来の人間性が失われていくことの悲...

時に疑わしい、目を背けたくなるようなシーンも、それはすべてそう遠くない時に現実に起こったことなのである。ホロコーストは名の通りたくさんの人を殺した。身体的にも精神的にもである。生き延びた人にも、癒えることのない傷をつくった。極限状態になり、その人本来の人間性が失われていくことの悲しさったらない。そのような状況をつくりだしてしまったことへの憤りも感じる。 著者から父への告解のような本だった。しかしそうしたとしても、この罪の意識が彼からなくなることはないのだ。この無力さを著者自身も、そして読者である私自身も感じた。

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2016/04/12

1944年にアウシュビッツに入れられ、翌年ブーヘンヴァルトで解放を迎えたノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼルは収容所での生活を以下のように振り返っている。私はもはや、日々の一皿のスープ、一切れのすえたパン以外には関心を向けなくなっていた。パン、スープ、これが私の生活の全てだった...

1944年にアウシュビッツに入れられ、翌年ブーヘンヴァルトで解放を迎えたノーベル平和賞受賞者のエリ・ヴィーゼルは収容所での生活を以下のように振り返っている。私はもはや、日々の一皿のスープ、一切れのすえたパン以外には関心を向けなくなっていた。パン、スープ、これが私の生活の全てだった。私は一個の肉体だった。おそらく、さらにそれ以下のもの、一個の飢えた胃。ただ胃だけが、時が経つのを感じていた。

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2014/02/27

トランシルヴァニアの小都市のユダヤ人コミュニティで、少年は家族と穏やかに暮らしていた。神秘思想に惹かれ、神を信じていた。 1940年代、ナチス・ドイツの台頭とともに、きな臭い噂は流れてきたものの、小さな街の人々は、どこか高をくくっていた。本当に手遅れになるまで、逃げ出す者もほとん...

トランシルヴァニアの小都市のユダヤ人コミュニティで、少年は家族と穏やかに暮らしていた。神秘思想に惹かれ、神を信じていた。 1940年代、ナチス・ドイツの台頭とともに、きな臭い噂は流れてきたものの、小さな街の人々は、どこか高をくくっていた。本当に手遅れになるまで、逃げ出す者もほとんどいなかった。 そしてついにドイツ軍が姿を現し、人々はなすすべもなくゲットーへ移送され、さらに収容所へと送られる。 収容所に到着した第一夜、「選別」の場で、少年は文字通りの「地獄」を目にする。そこでは信じられないものが焼かれていた。 夜の闇の中、穴から立ち上る巨大な炎は、そのとき、少年の<神>と<魂>も焼き尽くしてしまった。 ホロコーストを生き延びた著者の自伝的作品である。 著者はこの第一夜の後も、いくつものつらい夜を過ごし、最後に収容所生活を支え合った父を失う夜を迎える。これもまた痛切に心に刻み込まれる夜だった。 絶望的で残酷な状況を描きつつ、詩的で静謐ですらある文体である。透徹したまなざしの奥の深い悲しみが、切々と胸を打つ。 *本作品の初版(フランス語による)は1958年刊行であり、邦訳は1967年に出ている。著者の刊行の辞を添えた新版が2007年に出版され、それに伴って邦訳の改稿版が2010年に刊行された。新版への訳者あとがきとヴィーゼルの邦訳書一覧も収録されている。

Posted byブクログ

2011/06/02

読んでいて本当に本当に苦しかった。一刻も早く読み終えてしまいたい気持ちと、ここに書いてあることを残らず胸に刻み付けるためじっくり読みたい気持ちと、板挟みになりながら読んだ。思春期の多感な時期に考えられないほどの残虐性と絶望を味わった作者の、ホロコースト、神の死、世界への呪いが描写...

読んでいて本当に本当に苦しかった。一刻も早く読み終えてしまいたい気持ちと、ここに書いてあることを残らず胸に刻み付けるためじっくり読みたい気持ちと、板挟みになりながら読んだ。思春期の多感な時期に考えられないほどの残虐性と絶望を味わった作者の、ホロコースト、神の死、世界への呪いが描写されている。人間とは、信仰とは、何もかも剥き出しにされた極限状態を体験し、その証言を行う作者の心境を考えると本当に言葉が見つからない。 表紙になっているアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所のガス室壁面がたまらなく重かった。

Posted byブクログ