ネット帝国主義と日本の敗北 の商品レビュー
グーグルやヤフーなどのプラットフォームレイヤーがアメリカに独占されることになった結果、ジャーナリズムや文化が衰退の危機に瀕しているという論。まず搾取という言葉自体が20世紀的で、現代社会の枠組みの捉え方として弱い。 また、ネットの強大なインパクはまだ始まったところで、これからど...
グーグルやヤフーなどのプラットフォームレイヤーがアメリカに独占されることになった結果、ジャーナリズムや文化が衰退の危機に瀕しているという論。まず搾取という言葉自体が20世紀的で、現代社会の枠組みの捉え方として弱い。 また、ネットの強大なインパクはまだ始まったところで、これからどういう展開を見せるかも分からない。ニュースコンテンツの無料化により、新聞社などの広告収入が減り、ジャーナリズムが衰退するという危惧も、現状のマスゴミのお粗末さを鑑みるとそれほどの影響はないと考えられるし、むしろ一掃されて本物のジャーナリズムの到来を期待したくなる。 本、音楽などの文化も衰退すると言っているが、実際のところコピー可能な文化は衰退が運命である。音楽が違法ダウンロードにより、著作権収入が少なくなり、優れた音楽が作られなくなることを懸念するが、ぶっちゃけ言えば「たかが音楽」である。儲からないから衰退する文化ならそれまでの文化と言うことだろ。 本も音楽と同様のことが起きるかもしれない。正直、くだらない本が少なくなることは大いに歓迎したい。それは脇におくことにして。著者はネットの普及によりコンテンツが無料化される流れを心配しているが、むしろ本質は既存の硬直化した流通構造により過分な利益(マージン)を取ってきた仕組みが崩れたことにある。 音楽もそうだが、消費者が金を払っているのはコンテンツに対してのみである。そこに流通マージンが入っていたとしても、消費者は流通コストと認識して払っているわけではない。本などの印税はおよそ定価の10~20%とすると、のこりは全て流通マージンである。アマゾンはこの流通構造を中抜きにすることによって、送料を無料にしても儲かる仕組みを利用している。 流通コストが格段に安くなる時代では、価格に占めるコンテンツ料率は少なくとも90%以上になるだろう。1000円の本なら印税は200円くらいだが、これが流通抵抗係数0では印税額はそのままで本の料金は210円くらいが適当である。特に流通コストにくわえ電子書籍の普及により、発行コスト、在庫コストがほぼ0になる状況ではなおさらである。コピーフリーでも200円なら本を買う人はいまよりかなり増えるだろう。そうなると割を食うのは流通業者と出版社ということになるが、これは時代の趨勢で当たり前である。今までが動脈硬化した流通構造に乗って甘い汁を吸いすぎただけなのである。 またネットの普及により無料が当たり前になったと著者は主張するが、それも疑わしい。すでに月500円くらいの料金なら払ってもいいという意識も芽ばえ始めている。それはニコ動などに代表される。無料のものが溢れ出る中で、以前はどんぐりの背比べに過ぎなかったわずかな差異が価値を持つようになってきている。コンテンツが優れたものであるかどうかももちろん重要であるが、それよりもそのコンテンツが唯一無二性を持つかどうかで料金を払うかどうかを決定するようになっている。 多分にマニア的、おたく的要素を持ち、一つのコンテンツにそれほど大量の購買者がある訳ではないだろうが、ネット普及前でも値がつかなかったコンテンツに値がつくようになる可能性が高くなったと言うことで、これはこれで文化の創造、成長と言えなくもない。 だから文化の衰退と言うが、正確にはマス(大勢)が共有できるコンテンツにはカネを払いたくはないが、ミニ(少数)しか共有できない、してないコンテンツにはカネを払ってでも得たいというのがネット文化の流れであると言える。
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今の状況を何とかせにゃあかん。危機感だけが煽られた。 今日もYahoo!にGoogle、YouTube、Wikipedia、Amazonを使ってしまった。気付かぬ内に米国企業にお世話になっている。
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-2012/01/01 元経産省キャリアだけにネット問題に対する造形が深く、小泉おろしの恨み骨頂。本人には平易な文章でも一般人にとってはやや難解である。クラウドに限らずネット情報のネックは完全にアメリカに牛耳られている。豊かさの基本が、物から情報に移りつつある。
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インターネットというか、プラットフォームレイヤー(Googleやyahoo,Facebookなど)が、コンテンツレイヤーがこれまで築いてきた垂直統合型ビジネスを、無料ビジネスによって破壊した。そしてプラットフォームレイヤーにはほとんど米国企業しかいない。 コンテンツレイヤーのビジ...
インターネットというか、プラットフォームレイヤー(Googleやyahoo,Facebookなど)が、コンテンツレイヤーがこれまで築いてきた垂直統合型ビジネスを、無料ビジネスによって破壊した。そしてプラットフォームレイヤーにはほとんど米国企業しかいない。 コンテンツレイヤーのビジネスモデルの崩壊によって、新聞社や音楽業界など、今や斜陽産業と化した。岸さんの一番大きな主張としては、それらがもたらしたのは、”文化”と”ジャーナリズム”の衰退であり、それらの対応を急務にすべきというもの。注目したいのは、低下したのは”ユーザにとってのコンテンツの価値”であり”社会にとってのコンテンツの価値”は変わっていない、ということです。コンテンツは文化を形成するものであり、社会にとっての文化の重要性が不変である以上、特にプロが制作するコンテンツの社会にとっての価値も変わっていないはずということ。これらのことは常に意識していたいなと感じました。 岸さんの文章はとても読みやすくて、すっきり頭に入ってきた印象を受けました。
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著者が繰り返し述べているのは以下の点。 ・インターネット上は「米国支配」。それで問題無いのか? ・プラットフォームプレイヤー(代表格はgoogleやamazon)の搾取ともいえる対応で、犠牲となったジャーナリズム ・ジャーナリズムと文化が衰退 http://hiro12...
著者が繰り返し述べているのは以下の点。 ・インターネット上は「米国支配」。それで問題無いのか? ・プラットフォームプレイヤー(代表格はgoogleやamazon)の搾取ともいえる対応で、犠牲となったジャーナリズム ・ジャーナリズムと文化が衰退 http://hiro1203blog.blog.fc2.com/blog-entry-32.html
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期待ほどの内容ではなかった。 米国プラットホームレイヤー企業による世界の席巻。 その状況により、各国のコンテンツレイヤー企業の利益が搾取されているという。 新聞業界、音楽業界を例にジャーナリズムと文化の危機的状況を謳う。 以上の内容が広く浅く展開されている。 ジャーナリズムも文化もインターネットの中での衰退が語られているが、それらの衰退は決してインターネットによるものではなく、他の視点からの影響も小さくないはず。 きっと言いたいことは深いのだろうと思うが、例の挙げ方がまずく、読者にそれが伝わってこない。
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[ 内容 ] 今ネットの世界では、グーグル、アマゾンなどに代表される米国ネット企業だけが莫大な収益を上げ、一人勝ちしている。 これらの企業は、オバマ政権の後押しも受け、その帝国主義的拡大をさらに押し進めている。 一例であるグーグル・ブック検索の問題では、ヨーロッパ各国政府がグーグルの提示した和解案に反対の姿勢を明確に示し、国家の威信をかけた抵抗が始まった。 このままでは、いつまでも毅然とした姿勢を示さず政策を間違い続ける日本だけが、カネと文化を搾取されてしまう。 国益の観点からネットの危機的状況を初めてあぶり出す。 [ 目次 ] 第1章 ネット上で進む一人勝ち(ネットがもたらしたプラスとマイナス;ネット・バブルの歴史;ネット上のサービスの構造) 第2章 ジャーナリズムと文化の衰退(新聞の崩壊;音楽の崩壊;社会にとってのマイナス) 第3章 ネット上で進む帝国主義(米国の帝国主義を助長するエコシステム;プラットフォームの米国支配の問題点) 第4章 米国の思惑と日本が進むべき道(グーグル・ブック検索;米国の戦略と野望;ネット上のパラダイムシフトの始まり) 第5章 日本は大丈夫か(プラットフォームを巡る競争の激化;ジャーナリズムと文化をどう守るか;日本はどうすべきか) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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プラットフォームレイヤーはもうかる。コンテンツレイヤーはもうからない。 イタリアはハードパワーは強くないがソフトパワーは強い。イタリアを見習うべきだ。 アメリカによる情報支配。こんなことは戦後から同じ。 ICT以外の環境、ヘルスケア、教育といった分野を伸ばすにあたってもICTの働...
プラットフォームレイヤーはもうかる。コンテンツレイヤーはもうからない。 イタリアはハードパワーは強くないがソフトパワーは強い。イタリアを見習うべきだ。 アメリカによる情報支配。こんなことは戦後から同じ。 ICT以外の環境、ヘルスケア、教育といった分野を伸ばすにあたってもICTの働きに期待するという構図になっている。
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既存メディアはインフラであることは肯く。◆壊してはいけない。◆◆アメリカ人の好きなフェア、フリーこそ怪しいのだ。
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日経トレンディネット推薦 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20100806/1032599/?P=5
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