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核時計零時1分前 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2024/01/15

1962年10月のキューバ危機について、さまざまな当事者の視点と膨大な記録の追跡から描いた大著。10月16日から10月28日までの間、刻一刻とどこで、誰が、何を考え、何をしていたのかを、ケネディ大統領、フルシチョフ書記長、カストロ議長といった国家元首から、一兵卒に至るまでのあらゆ...

1962年10月のキューバ危機について、さまざまな当事者の視点と膨大な記録の追跡から描いた大著。10月16日から10月28日までの間、刻一刻とどこで、誰が、何を考え、何をしていたのかを、ケネディ大統領、フルシチョフ書記長、カストロ議長といった国家元首から、一兵卒に至るまでのあらゆる登場人物により話が進んでいく。 キューバ危機というと、アメリカとソ連という当時の二大大国がそれぞれのトップを筆頭に国の威信をかけて対峙しながら、最後は何とか核戦争が回避された、というくらいの認識しかなかったが、本書を読んで、どのように進行していったかが、手に取るように分かった。後書きに書いてあるが、当事者へのインタビューや膨大な記録の検証を行なっているため、そこから紡ぎ出される臨場感はすごいものがある。 アメリカやソ連のトップ層が意思決定しているのだから、緻密な情報収集をもとに、冷徹なエリートが綿密かつ合理的にロジックを組み立て、適時適切に対処してるのだろうとイメージしがちだか、その混乱ぶり、意見の乱れ具合は、やはり人間の集合という意味においては大して変わることはないのだなという印象だった。 最後のフルシチョフの声明もケネディの最終決断が発表されるという誤報に基づいて急いで作成されたという経緯を見ると、歴史は何という偶然によって成り立っているのかと驚いてしまう。 ただ、キューバ危機が実際には回避され、核戦争が避けられたのは、ケネディとフルシチョフという個人の想像力や体験によるところが大きいという気がする。2人とも、自分が開戦や核ミサイルの発射の決断をすると、どうなるかがしっかり理解できていたし、またそれについて恐怖することができていた。一方で、もう1人の当事者であるカストロはその破滅的な状況を受け入れるかのような振る舞いだったようで、トップが想像力や恐怖心を抱くことのできる精神性を欠いていたら、世界はすぐに破滅的な状況に陥るのではないかという恐ろしさを逆に感じた。 そう考えると現代において、アメリカ、ロシア、中国その他大国と言われる国のトップが、ちょっとでも道を外すような決断をしたり、また自分の決断に伴う結果に対する想像力や恐怖心を欠いていると、人類の歴史はすぐにでも終わってしまうのではないかと思うし、それをどのように防ぐことができるのだろうか、世界はそんな奇跡によって続いているだけなのか、よく分からなくなってくる。

Posted byブクログ

2017/08/20

フロリダの目と鼻の先。カリブ海に浮かぶ島国・キューバ。アメリカが 強い影響力を振るえたバティスタ政権が崩壊したキューバ革命後、 アメリカにとってこの島国は癪に障る国になった。 革命の英雄としてキューバのに君臨したフィデル・カストロが気に 食わん。どうにかして傀儡政権を樹立したい...

フロリダの目と鼻の先。カリブ海に浮かぶ島国・キューバ。アメリカが 強い影響力を振るえたバティスタ政権が崩壊したキューバ革命後、 アメリカにとってこの島国は癪に障る国になった。 革命の英雄としてキューバのに君臨したフィデル・カストロが気に 食わん。どうにかして傀儡政権を樹立したいアメリカは後にケネディ 政権の汚点となるピッグス湾事件を画策する。 亡命キューバ人を訓練しキューバ国内に送り込み、打倒カストロを 成功させるはずだったのが、僅か3日で大敗。キューバを取り戻す どころか、ソ連に接近させることになった。 あからさまに敵対することになったキューバとアメリカ。そして1962年 10月14日、アメリカのU2偵察機がキューバ上空で撮影した写真が 重大な「モノ」を写していた。 ソ連のミサイル基地がキューバに建設されている。キューバ危機と 呼ばれることになるこの事件を、アメリカ・ソ連・キューバの動向を 時系列で追ったのが本書である。 断片としてしか理解していなかったキューバ危機だが、わずが2週間 という時間で世界は危うく滅亡するところだったんだよね。当時の核 保有の2大国が、キューバを間に挟んで睨み合っているのだも。 ソ連が攻めて来るのなら、北極海の方向からだろうと思っていた アメリカ。だから、北へ向けての防備はしていた。まさか南のカリブ 海の島からミサイルが自国を狙っているなんて思わないわなぁ。 ケネディもフルシチョフも、核戦争なんてさらさらする気はなかった。 しかし「祖国か、さもなくば死を」で革命を成し遂げたカストロは、 アメリカがキューバを攻撃する気配を見せたら核ミサイルを発射 することを望んでいた。 三者三様の思惑。結局はカストロが敗者とはなるのだが、ソ連が カストロの意を汲んでいたらと思うとぞっとするわ。 危機の最中に次々と起こる思わぬアクシデント、公開された新 資料からの分析がなされた良書。660ページを超える大作は 時間がかかったが読んで損はなし。 ほんの少しだけ、何かが違っていたら今のこの世界はなかったかも しれないんだよねぇ。しみじみ。

Posted byブクログ

2013/03/25

時系列で描かれた、ともすると物語風の書き口は時にノンフィクションとも思えぬ面白さで、キューバ危機の頃を伝えるが、まるで見てきたような語りを裏付けてくれるだけのインプットをしていた事は、あとがきでもそれを感じさせてくれる 関係ないが日本でも有名なルメイさんが結構面白いキャラで受けた

Posted byブクログ

2012/10/04

キューバ・ミサイル危機について アメリカ・ソ連・キューバの指導陣のみならず、 関連する様々な人間の行動、思考を時系列を追って振り返る大著。 著者自身も幾度となく記している通り、 あらゆる人間の行動の結果が複雑に絡みあい、誤解を生み、 疑心暗鬼の中で道を模索し妥協案を絞り出す指導...

キューバ・ミサイル危機について アメリカ・ソ連・キューバの指導陣のみならず、 関連する様々な人間の行動、思考を時系列を追って振り返る大著。 著者自身も幾度となく記している通り、 あらゆる人間の行動の結果が複雑に絡みあい、誤解を生み、 疑心暗鬼の中で道を模索し妥協案を絞り出す指導者の姿が 垣間見られる。 特にブラックサタデーのクライマックスっぷりは圧巻で 手に汗握る展開に没頭した。 ケネディとフルシチョフの人間としての良識を ほめたたえる形で結ばれた巻末も後味がよく好印象。 しかし、このアメリカが数年後にはベトナム戦争の 深みにはまってゆくことを考えると何とも言えない読後感を産む。

Posted byブクログ

2011/09/04

キューバ危機が勃発した1962年10月16日から終結までの13日間の緊迫した様子を描く。ソ連がキューバに核ミサイルを配備したことに始まるこの危機で世界が核戦争寸前まで追い込まれるが、最終的にはアメリカ・ケネディ大統領とソ連・フルシチョフ書記長の英断で回避することが出来た。本著では...

キューバ危機が勃発した1962年10月16日から終結までの13日間の緊迫した様子を描く。ソ連がキューバに核ミサイルを配備したことに始まるこの危機で世界が核戦争寸前まで追い込まれるが、最終的にはアメリカ・ケネディ大統領とソ連・フルシチョフ書記長の英断で回避することが出来た。本著では綿密な調査を基に、例えばケネディが当初から強硬論を主張してきたという従来の定説を覆したり、危機の最中にアメリカのU2機がソ連の領空を侵犯した事実を掘り起こしている。

Posted byブクログ

2010/07/07

1962年10月、核戦争がはじまり僕たちは滅亡していたかもしれない── もしあの時のアメリカ大統領がケネディでなかったら。 もしあの時のソ連書記長がフルシチョフでなかったら。 少なくとも今のような形で21世紀は迎えていなかったであろうという戦慄すべき事実。 人類が最も核戦争に...

1962年10月、核戦争がはじまり僕たちは滅亡していたかもしれない── もしあの時のアメリカ大統領がケネディでなかったら。 もしあの時のソ連書記長がフルシチョフでなかったら。 少なくとも今のような形で21世紀は迎えていなかったであろうという戦慄すべき事実。 人類が最も核戦争に近づいた13日間、アメリカで、クレムリンで、キューバで何が起こっていたかを時系列に沿って克明に記された本。相手の意図が読めなくなった中、軍部から強攻策を突き上げられる米ソ両トップ。ソ連側のずさんな核管理体制。キューバとソ連の領空を侵犯し無用な刺激をしてしまう米国、国を守ることよりも威厳から先制攻撃を主張するカストロ、、、どこかが一つでも狂えば核戦争が始まるという緊迫感。500ページを超える大作だけども一気に読める。 膨大な資料と取材に裏打ちされており、通説を覆す記載も多い。核の時代にようやく終止符を打とうという流れがある中、人類があの13日間を「首の皮一枚」で過ごしたという事実はもっと知られるべき。

Posted byブクログ