ブラッド・メリディアン の商品レビュー
2023年6月13日マッカーシーが亡くなり国境3部作しか読んでいなかったので、知人が激推しされていた本書を読んだ。これはすごい。 砂埃で血塗れでしかし乾き切っていて、ひどい悪臭。が感じられる恐ろしい物語。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
迸るイメージの力強さに圧倒された。ここには情け容赦のない殺戮があるが、不思議と罪の意識が感じられない殺伐とした世界が繰り広げられていく。アメリカの乾燥した不毛の大地の様相が死者の白骨を目にすることで、その酷薄さがひしひしと感じられた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
再読。 圧倒的な筆致。 鏖殺の場面と過酷な自然が等しく、硬質な美しい文体で語られる。 描かれているのは酸鼻を極める陰惨な情景ではあるけれども、ほとんど読点を使わない、一文を長く長く繋いでいく文章によって、まるで神話や叙事詩を読むような気分にさせられる。 それに留まらず、登場人物があまりに魅力的。 野蛮な兵士崩れどもにも味があるけれど、彼らの中で「判事」という巨漢の異彩さが際立つ。 哲学、神学、科学、法学、芸術…あらゆる知識と技能を持ち、穏やかに微笑む万能人でありながら、どの荒くれ者よりも残酷なことを自然に行うさまに、恐怖しながらも目を離せなくなる。 癖がある、けれど何度でも読みたくなる小説。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
舞台がメキシコだからか。 マッカーシーの文体のせいなのか。 殺戮に続く殺戮なのに全〜然、ウェットでなく。 ここのところホラーづいていたせいか? これに比べると、ミステリの殺人なんかもつくづく丁寧だなあと。・・・事前も事後もきっちりあるし。 主人公はきっと少年なんだろうけど、 ホールデン判事のキャラクタが印象的。 この人の語りが真骨頂でしょう、この話。 まあ、米文学で”ホールデン”っつったら主役を張るわなー。
Posted by
西部開拓時代のテキサス・インディアン戦争が舞台。 虐殺の描写は本来であればむごたらしいはずなのだが、 例によってマッカーシ節のため淡々としており、 まるで日常風景を描写しているようである。 アメリカの成り立ちの要素として血と暴力がある、 と主張しているようである。
Posted by
残虐さを惜しみなく出すことによって、人間の悪を嫌というほど感じられる。句読点が少ないので読みにくく、読むのをやめようかと何度も思ったが、判事の存在と哲学的な言葉が気になって読了しました。
Posted by
外道の生態と世界の暗黒の哲学を、炸裂する虐殺描写の中で鮮烈に描き出す。【ザ・ロード】で示された炎の前に、ホールデン判事という残虐哲学の称揚者にして不死身の存在がいたということは、この小説は作家にとって一つのそびえ立つ壁のようなものだったのかも知れない。
Posted by
なんか文学的に評価が高い小説らしいが、俺からすると女子供お断りのゴキゲンエンターテイメント小説だ。 内容は、ケンシロウが出てこない北斗の拳で、だいたい殺して頭皮を剥いだり殺されて頭皮を剥がれたりする、力こそ正義というシンプルきわまりない展開が延々とマッカーシー独自開発の血の匂いを...
なんか文学的に評価が高い小説らしいが、俺からすると女子供お断りのゴキゲンエンターテイメント小説だ。 内容は、ケンシロウが出てこない北斗の拳で、だいたい殺して頭皮を剥いだり殺されて頭皮を剥がれたりする、力こそ正義というシンプルきわまりない展開が延々とマッカーシー独自開発の血の匂いを抑える文体で書かれていて、ベットリしてるのに後味すっきり。随所に散りばめられた哲学的な文章はさらにコクを増しているが、独特の臭みまではとってない丁度よさ。
Posted by
現代アメリカ文学の巨匠の傑作。 修正主義西部劇(Revisionist Western)。 アメリカ西部開拓時代、 インディアン討伐隊(別名:頭皮狩り隊)に加わった名もない少年の、 残虐で極悪な日々を中心に描かれている。 彼らの行為は容赦なく凄まじい。 決して討伐隊=悪、インディ...
現代アメリカ文学の巨匠の傑作。 修正主義西部劇(Revisionist Western)。 アメリカ西部開拓時代、 インディアン討伐隊(別名:頭皮狩り隊)に加わった名もない少年の、 残虐で極悪な日々を中心に描かれている。 彼らの行為は容赦なく凄まじい。 決して討伐隊=悪、インディアン=善という訳でもない。 読点のない長文が重く圧し掛かってくる。 心理描写を極力排した、挑発的な神話と言えるかも知れない。
Posted by
訳者あとがきによれば、本書はアメリカで「修正主義西部劇」のひとつと捉えられているそうだ。なるほど今まで私が観た西部劇映画とはまるで違う。とくに善悪観の此岸とのへだたりや、衛生状態の細密描写は強烈だった。想像力もすさまじいのだろうが、おそらく大量の資料を周到に読み込んだからこその、...
訳者あとがきによれば、本書はアメリカで「修正主義西部劇」のひとつと捉えられているそうだ。なるほど今まで私が観た西部劇映画とはまるで違う。とくに善悪観の此岸とのへだたりや、衛生状態の細密描写は強烈だった。想像力もすさまじいのだろうが、おそらく大量の資料を周到に読み込んだからこその、具体的な描写なのだろう。嗅いだこともない悪臭を錯覚するほどだ。 名前のない15歳の少年は、人格をもった主人公ではなくて、ただ事実を目撃する眼として小説の中にある。三人称というのともまた違う、人間性を超越した書き手が小説を書く。登場人物の誰が何を考えようと、自然の岩にひそかに刻まれた碑文どおりに、物事は進むのだとでも言うように。 西部の険しい自然の圧倒的な描写。その中で考えるよりも先に殺し合う卑小な人間たち。最初のうちは、あまりに残酷な描写に思わずページを閉じ、息を整えたけれど、徐々に慣れてくる。決して平気でいられるわけではない。ただあるがままに受け入れるようになってくる。少年と同じように読者も、思考をもたないただの眼球となり、荒涼とした岩山や砂漠や月下をさまようのだ。 「判事」という特異な人物が象徴するのは、おそらく西洋思想の中枢のようなもので、彼の言わんとする哲学は私にはまだあまり理解ができない。それでもとても面白い。博学な人が読めばもっと面白いのだろう。 マッカーシーは初めて読んだ。読者に安易な理解(したつもり)や、浅い共感を許さない峻厳な文体にはとても魅力を感じる。めちゃめちゃ読みにくかったけれど。別の作品にも挑戦したい。
Posted by
- 1
- 2