ブラッド・メリディアン の商品レビュー
ただひたすらに圧倒される。 かかとに枝を突き通して吊るされ、腹を裂かれ頭を火であぶられた死体の有様も、無毛の大男ホーガン「判事」の存在も十分圧倒的なのだけれど、非正規兵たち、ならず者たちが粛々と馬を進める荒野の、砂漠の、山岳地帯の、その自然の情景に、何より圧倒された。 そうし...
ただひたすらに圧倒される。 かかとに枝を突き通して吊るされ、腹を裂かれ頭を火であぶられた死体の有様も、無毛の大男ホーガン「判事」の存在も十分圧倒的なのだけれど、非正規兵たち、ならず者たちが粛々と馬を進める荒野の、砂漠の、山岳地帯の、その自然の情景に、何より圧倒された。 そうした自然を前にすると、「戦争は神だ」、(極限状況にあっては)「正しいかどうかの問題など無力だ」と言い放つ判事すら、こっけいに感じられさえする。 賛同するにせよ反駁するにせよ、傾ける人の耳がなければ何の力ももち得ないように思えるから。 虚無を体現しているかのようなグラント大尉が印象深い。 Blood Meridian by Cormac McCarthy
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まだ読んでいる途中だけど、あまりにも素晴らしいので。作品は暴力と、人間の垂れ流す死と血と油と膿に満ちあふれているが、その描写は文句の付け用の無いほどに凄惨。しかし滑稽なほどに露骨なせいで、残虐とは感じない。むしろこれくらいの暴力が描かれなければ、暴力とその結果の死が、作品の中に描...
まだ読んでいる途中だけど、あまりにも素晴らしいので。作品は暴力と、人間の垂れ流す死と血と油と膿に満ちあふれているが、その描写は文句の付け用の無いほどに凄惨。しかし滑稽なほどに露骨なせいで、残虐とは感じない。むしろこれくらいの暴力が描かれなければ、暴力とその結果の死が、作品の中に描かれる意味が無い。これこそが暴力なのだし、その結果の死はこれほどにむごたらしく、汚らしく、威厳も尊厳もそこにはないのだ、ということが明示されてこそ、暴力を描く意味がある。 アメリカ文学にはやはり「リアリズム」の伝統が脈々と受け継がれていると感じる。ある意味では詩的な程に思索的な文章とも言えるマッカーシーだが、その独自性は、詩と哲学がリアリティのあるゴツゴツとした描写によってもたらされている、甘みの無さから生まれている。この辺の厳しさと甘さの無さは、文章的にはほぼ対極にいるヘミングウェイさえ思わせる。しかし全体はフォークナーやメルヴィルといった、アメリカ文学の「過剰の系譜」の中に位置づけることが出来るように思う。 なんにせよ、素晴らしい作品。読み終わるのがもったい気分で、残り半分を楽しみたい。
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渇き切った日中の暑さと、凍える闇の夜。 死の痕跡ばかりが残り、熱砂は果てしなく続く。 19世紀半ば、14歳で家出をした少年(The kid)は、流れ流れた末にインディアン討伐隊に入り、頭皮狩りという、血と殺戮の砂漠へと歩みだす。 そこで少年は、禿頭で長身、ちゃんとするとすっごくお...
渇き切った日中の暑さと、凍える闇の夜。 死の痕跡ばかりが残り、熱砂は果てしなく続く。 19世紀半ば、14歳で家出をした少年(The kid)は、流れ流れた末にインディアン討伐隊に入り、頭皮狩りという、血と殺戮の砂漠へと歩みだす。 そこで少年は、禿頭で長身、ちゃんとするとすっごくおしゃれさんなのに、でも全裸が似合う全身無毛の「判事」と出会う。(そんな紹介はいけないと思うけど、でもそうなんだもん。全裸回数NO.1!) この絶対的な存在感の判事。 血なまぐさい荒野でも、植物や骨や鳥など観察日記をつけ、語学に堪能で博学で、ダンスも優雅にこなす。 が、敵はもちろん、女子供をも非情に殺してしまう冷徹さも併せ持つ。 少年は彼と他の隊員とともに荒野を旅していく。 句読点の無い長い文章。 詩的で哲学的というのか。 人間も馬も驢馬も豚も狼も蝙蝠もハゲタカも川も砂漠も屍も皮も骨も焚き火も風も星も太陽もなにもかもが平等で人間だけが特別な描き方のない、そうどこまでも容赦のない描かれ方。 「ザ・ロード」も苦しかったけど、これもまた苦しい。 1985年に発表されながらも、日本では昨年やっと翻訳され発刊されたとのこと。 表紙を眺めるうちにも、熱砂に飲み込まれ干からびていくような渇きを感じずにはいられない。 これはiなんなんだろうか・・・
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やっと読み終えた。タフな日常を送っていると思われている方がおられるならこの小説を読んでみるといい。とにかくものすごくとんでもない小説。たくさんの人が殺されているのは現実でもそうだと忘れないように。
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これを映画にしようという話もあるということにびっくりします。 映画が何を伝えようとするのか分かりませんが、もし作られたとしても私はパス。 軽い好奇心ではきっと正視に耐えないと思うので……
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国境三部作より以前の作品。原書はスペイン語まじりで読めず、翻訳を待ちわびていた。淡々とした文体が、尚更残虐さを際だたせている。ここに出てくる少年というキャラがマッカーシーの中に存在していて、後の作品に反映されている気がする。常に孤高の作家だったマッカーシーが最新作で少々変化を見せ...
国境三部作より以前の作品。原書はスペイン語まじりで読めず、翻訳を待ちわびていた。淡々とした文体が、尚更残虐さを際だたせている。ここに出てくる少年というキャラがマッカーシーの中に存在していて、後の作品に反映されている気がする。常に孤高の作家だったマッカーシーが最新作で少々変化を見せたのは、自分自身の息子を得たせいか・・・。それでも、感情を一切描かない文体は好き。
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