天地明察 の商品レビュー
2010年本屋大賞作品。 江戸時代の天文暦学者渋川春海が日本独自の暦を作ることに生涯をかけた物語。 読み始めから算額奉納の絵馬があることを知り、知的好奇心全開で読み進めた。 春海より頭が良さそうな算術家関孝和がどんな人物か?興味を持ちながら読んだ。 挫折を味わいながら周りの人達と...
2010年本屋大賞作品。 江戸時代の天文暦学者渋川春海が日本独自の暦を作ることに生涯をかけた物語。 読み始めから算額奉納の絵馬があることを知り、知的好奇心全開で読み進めた。 春海より頭が良さそうな算術家関孝和がどんな人物か?興味を持ちながら読んだ。 挫折を味わいながら周りの人達と協力して暦を作っていく姿に感動した。 印象に残った文章 ⒈ 拍手とは、陰陽の調和、太陽と月の交錯、霊と肉体の一体化を意味し、火と水が交わり火水となる。拍手は身たる右手を下げ、霊たる左手へと打つ。 ⒉ いえいえ、私の齢じゃ、寿命が来るまでにはとても追っつかないでしょうねえ。 ⒊ そなたが総大将だ、安井算哲。そなたのもとで人が尽力するのだ。 ⒋ 星が、私に命を与えてくれるんだ。 ⒌ 私にとっての大事は、定石です。天地の定石に辿り着くために、人の定石を守るに越したことはありません。
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【押田京一先生】 江戸時代前期4代将軍家綱のころ、人々が日々使っている暦にずれが生じていた。この暦は朝廷が平安時代に導入した中国の宣明歴(せんみょうれき)をもとに作られたものだったからである。会津藩の江戸藩邸で囲碁の棋士であった安井算哲(後の渋川晴海)は、水戸藩主 徳川光圀の命を...
【押田京一先生】 江戸時代前期4代将軍家綱のころ、人々が日々使っている暦にずれが生じていた。この暦は朝廷が平安時代に導入した中国の宣明歴(せんみょうれき)をもとに作られたものだったからである。会津藩の江戸藩邸で囲碁の棋士であった安井算哲(後の渋川晴海)は、水戸藩主 徳川光圀の命を受け、日本独自の暦を作る一大プロジェクトに挑んだ。日本から観測される太陽と月の軌道は、国外で観測されるものとは違っており、正確な暦を作るには、その土地で天体の観測を行う必要があった。日本は鎖国の世、地球が丸いことさえ知られていなかった時代である。苦難の末、算哲らは初めての日本人による暦法を作り上げた(貞享の改暦)。和算の天才関孝和、囲碁の鬼才本因坊道策らが交差して織りなす物語である。天文に興味のある人、そうでない人も壮大な宇宙のロマンに触れることができる一冊である。
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「暦」はこうして編纂されたのか。 読みやすく、人情話を交えて、言葉遣いも現代的、新しい世界を見たような一冊だった。 将軍や大名に碁を指南する名家に生まれた渋川晴海は、譜面にある碁を打つことに飽いていた。 彼は、奉納の絵馬の中に算額というものがあるのを知る。 そこで、算術と衝...
「暦」はこうして編纂されたのか。 読みやすく、人情話を交えて、言葉遣いも現代的、新しい世界を見たような一冊だった。 将軍や大名に碁を指南する名家に生まれた渋川晴海は、譜面にある碁を打つことに飽いていた。 彼は、奉納の絵馬の中に算額というものがあるのを知る。 そこで、算術と衝撃的な出会いをする、掲げられた算額の問題にてんでに答えを書き込んであるのだが、中でも「関」という人物が即答して、出題者は「明察」と書いてある。彼は問題と回答を見て心身が震えた。 こうして晴海は算術と深く関わることになる。碁の相手は、江戸の家老であり老中であり、時には将軍の御前での展覧試合だった。 「暦」編纂の下地になる、北極星を目標にして全国の地を歩く、天文観測をするメンバーに選ばれる。 そして、当時使われていた「暦」が実情に合っていない、多少のずれがあることを確認する。 800年前に制定された「暦」は使っている間に一年のわずかなずれが重なって、結局は大きく二日の誤差を生んでいた。 それは、「暦」のずれが農業に関わることで有り、日食、月食が予想とずれることでもあった。 彼は、不動の北極星の角度から得意の算術で、各地の緯度と経度を測定する。 それを元に作り出した「暦」は自信作で公にも賞賛された。しかしまだ誤差が生じた。 なぜか、そして辛苦の末に、ついに基本になっているのが、中国の「暦」であることに気づく。 中国との距離と時間の差を埋めるべく彼は新しい「暦」大和の国の「暦」の編纂を始める。 ストーリーのあらましをメモしたが、彼とともに「暦」編纂に加わった人々との交わりは爽やかで熱く胸を打たれる。 難しい算術や天文観察から割りだされる各地の位置計算などはさらりと流され読みやすくなっている。 和算の天才「関孝和」の話も、まさに天才とはこういうものだろう、一筋に打ち込む才能が、文化を深め、大衆を導いた様子が感動的だった。 若いころ、小学生と「旅人算」や「和差算」「鶴亀算」などを解いたことがある。 数学は苦手で特に幾何は悪夢だった。今でも穴の開いた二つの桶に水を入れる計算は苦手だ。ただ言葉の意味がわかる分大人になったら問題の意味だけは分かったw。 小学生向けだったが、即答できないで、こっそり代数で解き、途中でその意味を考えたこともある。 小学生達との受験の勉学は厳しかったが喜々として解いていた姿が今も思い出される。いつ遊ぶのかと公立育ちは内心首をひねったが。晴海のような好奇心は今は大人になって全国に、何人かは海外に散っている。そんな時代もあった。 この時代に、こんな難しい言葉のものを解いたのだろうか、読むのさえ難儀するものを、と舌を巻いた。 インド人もびっくりでしょう (๑・̑◡・̑๑)ワ〜!
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題名の通り、読み終えた後は心が晴れ晴れして感無量です。 ただ事実を描いた歴史モノではなく、改暦という大事業を成し遂げるまでの成功と失敗、関わった人たちの心を詳細に、また現代の私たちにも想像しやすいよう描かれた本でした。思わず所々で涙してしまったのが自分でも驚きです。 今の暦がある...
題名の通り、読み終えた後は心が晴れ晴れして感無量です。 ただ事実を描いた歴史モノではなく、改暦という大事業を成し遂げるまでの成功と失敗、関わった人たちの心を詳細に、また現代の私たちにも想像しやすいよう描かれた本でした。思わず所々で涙してしまったのが自分でも驚きです。 今の暦があるのは彼らの不断の努力の賜物なのだと感謝の気持ちでいっぱいになります。また、この歴史上の事実を知るきっかけを与えてくれた冲方さんにも感謝したいと思います。
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映画のキャストをイメージして読んだ。歴史ロマンを感じられ、概ね満足。ただ校閲に疑問の残るところあり。
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私たちが普段から身近に使用している、カレンダー、すなわち暦。夏至の日冬至の日がすぐわかり、日蝕月蝕の日時が正確に予告される、疑いようの無いあたりまえのこの"日々"は、ぽんとある日生まれた簡易な術では決してない。先人たちが長い時をかけて天を観察し、そこに隠された数理の法則を解き明かした、その恩恵である。 『天地明察』はそういったことに改めて気付かせてくれた。生涯を懸けて日本独自の暦を作り上げた一人の碁打ち渋川晴海の人生を、共に駆け抜け、共に心を揺さぶられる体験を通して。 読み始め当初はなんだかあまり入り込めず、「まあまあくらいの面白さかな。」などとおこがましい評価を脳裏に浮かべていたが、二割方に差し掛かったところでズドンとやられた。 定石をなぞるばかりの碁にどうしようもない退屈さを感じていた晴海。その晴海に偉大な背中を見せ、鬱屈さを切り開く欠片をくれた人々がいた。そして、晴海が信頼し尊敬を寄せていた彼らが、こぞって改暦という大事業を為すはこの男の他にはいないと、晴海を推していた。その驚愕の事実を晴海本人が知った瞬間。その瞬間、気が付いたら晴海と心がリンクし、胸に抑えようもない何かが込み上げてくるのを感じた。この物語に取り込まれた瞬間だった。 そこからしばらくはただひたすら面白く、心沸かせながら読み進めていった。そしてクライマックスに近づくにつれ、晴海の行く末を見守るような、そんな穏やかに心持ちでページをめくるようになった。歳を重ね、かつて追いかけた先人達と並び、志を共にした同志達とその背を越え、ついに託された彼らの想いを成就した、改暦の雄、渋川晴海の姿を。 本書を通して見えるのは、何歳になっても好奇心をその身に宿し、志をもって何かに打ち込む、300年前を生きた人々の姿。彼らのその後ろ姿は、羨ましさを彷彿させると共に、何かを始めるのに何歳からでも遅くないのだと、そう勇気付けてくれる。 良い本でした。
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碁打ちに改暦。どのように展開していくのかと思っていたが、読んでみると、春海の人柄に惹かれ、新しい暦づくりという仕事、改暦事業の政治的・経済的影響に関心させられ、一気に読み終わりました。 皆が春海に惹かれる理由、酒井大老がいう[星のことはとんと分からぬが、算哲という者の熱心さは、信...
碁打ちに改暦。どのように展開していくのかと思っていたが、読んでみると、春海の人柄に惹かれ、新しい暦づくりという仕事、改暦事業の政治的・経済的影響に関心させられ、一気に読み終わりました。 皆が春海に惹かれる理由、酒井大老がいう[星のことはとんと分からぬが、算哲という者の熱心さは、信ずるに値する]ようにそのひたむきさ、知への貪欲さ、責任感には、自分も[精進せよ、精進せよ]と思う次第です。先人たちは本当にすごい。 えんさんもいいキャラです。
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江戸時代を生きた天文暦学者、渋川春海の改暦にかけた人生を語った時代小説。 幼少期から多くの人の影響を受け、才能を開花させながら宣明暦から大和暦(貞享暦)への改暦を成し遂げた。 先月、フェルマーの最終定理を読み終えたばかりで、算術を駆使しながら天に触れようとする春海の姿が重なった。 本来、時代小説を読むのは苦手な私だが、非常に楽しく読み進めることが出来たことで改めて作者である冲方丁の凄さを感じる。 説明 受賞歴 第31回(2010年) 吉川英治文学新人賞受賞 第7回(2010年) 本屋大賞受賞 内容紹介 江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること--日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!! 内容(「BOOK」データベースより) 江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。
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切り口をそこにもってきたかあと驚いた。当たり前にある暦に深い歴史と携わる人間の人生をかけた貢献があったんだなあ。冲方丁にかかれば、どんなものでもドラマになる。扱うものは違えど、テーマとしては海賊と呼ばれた男に似ている。とんでもない勉強量だろうが、この人にかかればどんなものでもドラマになる。身の回りに当たり前に溢れているものに、どんなドラマが潜んでいるんだろうと、ワクワクしてきてしまう。ありふれたものにスポットをあててそこに関わる人間の想いを熱く描くことって無限の可能性を秘めてるなあ。ただ、終わり方はやけにあっさりしている。ドキュメントってそんなもんなのかな。
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人に何気なく借りた本。なのですごい偶然なのだが、読みはじめて、「算法少女」(https://booklog.jp/item/1/4480090134)を思い出した。 こんなにっちな分野で、何気なく手に取った本(しかもこの本は、タイトルからその分野がすぐ分かる訳でもなく、そもそも借り物で。)でテーマが重なるなんて! 謎の驚きに包まれながら読みました。 暦法を変えるドラマ。 あまりの息の長い話に嘆息しつつ。二足のわらじでこの偉業を成し遂げた渋川春海がすごい。そしてこの人柄がまた面白い。非凡なことを成し遂げてある割に、自分に自信がないというか謙虚・実直というか。 日本史を勉強すると出てくる人物の伝記を面白く読んだような気分で、ドラマを楽しむと同時に、勉強になったな。 そして、この春海、上司に恵まれまくっていて、志を引き継ぎたいと心から思える人に多数出会っていて、それはまた春海の人柄ゆえの部分もあるだろうけれども、なんとも言えず、羨ましい。 これら、どこまで史実なのかな。
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