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ユダヤ教の歴史 の商品レビュー

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2021/11/03

ユダヤ教から現在のユダヤ人へと至る通史。本書では宗教史理解のために3つのパラダイムを挙げている:古代的パラダイム(ラビの台頭まで),中世的パラダイム(書物の普及),近現代的パラダイム(主権国家とユダヤ人)。

Posted byブクログ

2012/07/08

ユダヤ教の歴史を凝縮してまとめた、読み応えのある一冊。 ユダヤ人社会は、古代においてエルサレム神殿と王権からなる宗教文化的社会を形勢していた。ところが、エルサレム神殿の崩壊、ユダヤ国家の滅亡により世界各地への離散することとなった過程で、タルムード(口伝律法の学問的集成)のユダヤ...

ユダヤ教の歴史を凝縮してまとめた、読み応えのある一冊。 ユダヤ人社会は、古代においてエルサレム神殿と王権からなる宗教文化的社会を形勢していた。ところが、エルサレム神殿の崩壊、ユダヤ国家の滅亡により世界各地への離散することとなった過程で、タルムード(口伝律法の学問的集成)のユダヤ法による自立社会へ変貌していった。 ユダヤ社会とは、古代から続く宗教的権威とユダヤ啓示法の規範、宗教的信念によって基盤がつくられているといっていい。 紀元前586年、エルサレム神殿は破壊されユダヤ人たちはバビロン捕囚を体験することになった。 彼らは、祖国滅亡と神殿崩壊の意味を熟考した結果、国家の滅亡を軍事力の強弱ではなく、自分たちの信仰の問題と捉えた。 ユダヤ人達は予言者への信仰を通して王権を超えた神の法の存在を認めることによって、祖国喪失を生き抜く精神力の支柱としたという。 聖書にあらわれる古代イスラエルの宗教の超自然的な存在はヤハウェ。 直接にこの世に顕現し、宇宙の秩序を維持し、万物に生命を賦与する存在。 超自然的な存在であるヤハウェは、予言者を通してその意思を伝える。 この宗教的基本形態が、その後のユダヤ教をかたちづくる。 紀元前4世紀から18世紀にかけて、様々な預言者が出現するのもこの基本形態によると考えられる。 18世紀のヨーロッパでは啓蒙専制君主による寛容な政治が展開される。ハプスブルク家やプロイセンでは盛んにユダヤ商人を登用して軍費調達や領内の経済発展に力を入れる。 このころからユダヤ人寛容令が次々と発布されたらしい。 また、オランダは早くから宗教的自由を認める自由都市であったため、ユダヤ人社会が発展した。 そんな中、ユダヤ人解放を決定的にしたのがナポレオンだ。 ナポレオンは積極的にユダヤ人に招集をかけ、サンへドリン(ユダヤ教における政治的・宗教的・法的な最高決定機関)を開く。 ユダヤ人は市民として信教の自由を認められることとなった。 その対価として、44万フローリングがナポレオンに支払われた。 ユダヤ人たちは、ナポレオンを古代ペルシャのキュロス王(ユダヤ人をバビロン捕囚から解放)に喩えて、メシアとみなすほどの熱狂が支配したという。 1806年に発行されたナポレオンメダルには、ナポレオンが契約のいたを持ち、モーゼにひざまずく様子が描かれている。 ユダヤ人社会とナポレオンの蜜月時代を表すものであろう。 その後、西欧を中心に革命と反動を経てユダヤ人解放が波及することとなった。19世紀前半には、ほぼ全ての西欧諸国でユダヤ人の市民権が賦与された。 古代から近代にかけてのユダヤ人の歴史を余すことなく解説しているのだが、一点だけきになることがあった。 離散したユダヤ人は大きくわけて2つの系統がある。 スファラディとアシュケナージである。 簡単に説明すると、スペイン・北アフリカのユダヤ人がスファラディ。 東欧・ロシアあたりのユダヤ人はアシュケナージである。 東欧のアシュケナージとハザール王国との関係である。 アメリカ・ヨーロッパ・ロシアの指導者的立場の人たちの出身であるアシュケナージについて解説がされていないのが非常に残念。 また、ドル紙幣に描かれている「唯一神への信仰告白の銘」が、なぜユダヤ教でなければならないのかについて、「市民宗教のごとき代替宗教が絶えず要請されてきた」というのは理由になっていない気がしました。 ユダヤ教とその歴史について、理解しやすく編集されていたので、たいへん読みやすい一冊でありました。

Posted byブクログ