幼女と煙草 の商品レビュー
再読。 己の真実が周りの大きな流れに飲み込まれて、 小さい声はかき消されて行く。 2人は、そこで有るべきではない行為、 煙草を吸った。 それだけの事が、こんなにも明暗を分ける。 個人の思いが、片方がメインなだけ、 最後は何を思ったのか、は想像するしかないけども。 世界は優しく、希...
再読。 己の真実が周りの大きな流れに飲み込まれて、 小さい声はかき消されて行く。 2人は、そこで有るべきではない行為、 煙草を吸った。 それだけの事が、こんなにも明暗を分ける。 個人の思いが、片方がメインなだけ、 最後は何を思ったのか、は想像するしかないけども。 世界は優しく、希望に満ちて、悪意に溢れ、流されて行く。 ブラック「コメディ」だよね? と、確認せずにはいられません。
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正しいと思い込んでいる人たちは、真実を見失い寛容さも失う。 本当に善と悪は紙一重。 それにしても全然笑えないのです。人って怖い。読んでいるだけですごく不安な気持ちになってしまいました。 装丁がすごく好みです。
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これも積読本でした。しかしクォリティ高過ぎ!!積読本にしておくのではなかった…と読むまでタイムラグがあったことに後悔。 うん、はっきりいうとこれもこんな社会になりそうだよなぁ…。現に「タバコは、ガンのもと!!」とか小説内の子どものセリフが現実に声高に叫ばれているしなぁ…。 あ...
これも積読本でした。しかしクォリティ高過ぎ!!積読本にしておくのではなかった…と読むまでタイムラグがあったことに後悔。 うん、はっきりいうとこれもこんな社会になりそうだよなぁ…。現に「タバコは、ガンのもと!!」とか小説内の子どものセリフが現実に声高に叫ばれているしなぁ…。 あと引用文でも示したように、タバコ以外にもネット(というかマスメディア系)の利用者層の偏りも、言われてみれば怖いなぁと思いました。 (引用文だけ見ても何が何だかわからないだろうけれど…)
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「"大人であること"は僕らの目指す将来、僕らの理想だった。子どもたちは厳しい規則の数々に従っていた。あの長過ぎる年月のあいだ、僕らは釈放を待つ囚人のように生きていた。」 この「幼女と煙草」という本が、ある種のユーモアを図って書かれているのだと認識しつつ読んだ...
「"大人であること"は僕らの目指す将来、僕らの理想だった。子どもたちは厳しい規則の数々に従っていた。あの長過ぎる年月のあいだ、僕らは釈放を待つ囚人のように生きていた。」 この「幼女と煙草」という本が、ある種のユーモアを図って書かれているのだと認識しつつ読んだのだけれども、自分はそれを掴み損ねてしまったらしい。自分自身、公の場ではシニカルな発言をする確率が高いと自覚してはいるけれど、何故かこの本の笑いは共鳴を喚起しない。この本が近未来的架空の設定のSFで、現代社会の何かを強烈にあてこすっているのだと強く思えば、ムカムカとする気分は少しだけましにはなるけれど。 シニカルなユーモアは、飽くまで現在時間の中で注意喚起をする必要があるという思いに急かされてのことあって、未来まで投げ出してしまう皮肉は、笑えない。しかもここに描かれていることは、余りに現実の世界に起こっていることにそっくり過ぎて、冷静さを保つことが難しい。それは実は本のせいではなく、何かとてつもなく正しくないことが、正しさの仮面をつけて無理を押しつけてくると感じる気分を、どうしようもないと現実の世界では諦めて静めているというのに、わざわざ本の中で解りきったことを一々言われたくない、という自分の狭量さが問題なのであるけれど。 自分は、誰かが声高に正義を口にする時、そこに魔女狩りと同質の構図が見え隠れする時、たとえ主張されていることに是があったとしても、素直に従うことができない。そういう調子で世の中が煙草を吸うことをやめろと言うならば、決して煙草はやめないし、それと同じ感情で(そう、理屈じゃなくて感情的な話です)コンプライアンスを押しつけてくる人々に対して唾棄したい気分を偽ることができない。 もちろん、著者がそういう自分も抱えている感情的な部分(それはかつて、いずれは弱者と言う立場から釈放されて少しは自分の自由意思を発揮することが許されると信じて長いトンネルを抜けてきた少なからぬ数の、ポリティカリーコレクトネスの犠牲者に共有されるもの)をこの本の中で取り上げている、しかも共感を持って取り上げているというのは理解しているし、彼の捻じれた皮肉も理解はできる。それでもこの幕切れは見たくなかった。もちろんそれが、このブラックな本の結末として十分予想された、ある意味でふさわしい結末であるとは解っているのだけれど。 この性質の悪い餓鬼共に一矢も報いずに終わってしまっていいのか、と、まさにこの本で描かれる、四〇代の、今や世間的には最も守られていない一方で他の世代には過去と未来において多大な奉仕を強いられている世代の者として、ムカムカとしてしまうのである。 しかし問題の本質はことさらさように根深いのである。我々には解決の手段はない。恐らく、何かにしがみつくということを止められなければ。だから、そこを書いて欲しかったんだよなあ、砂漠の真ん中で、ざまあみろ、と叫ぶ主人公を見たかったんだよなあ。
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ブラックユーモアどころじゃない。やたらと怖い小説。グロテスクなほどに誇張された寓話。ある意味ホラー。喫煙者と非喫煙者(嫌煙者と言ってもいい)、子供好きや子を持つ親か否か、あるいは男性か女性かでも受け止め方が変わると思う。その点でも優れている。 30代から40代の独身男性、特に喫煙...
ブラックユーモアどころじゃない。やたらと怖い小説。グロテスクなほどに誇張された寓話。ある意味ホラー。喫煙者と非喫煙者(嫌煙者と言ってもいい)、子供好きや子を持つ親か否か、あるいは男性か女性かでも受け止め方が変わると思う。その点でも優れている。 30代から40代の独身男性、特に喫煙者には洒落にならない本だ。おすすめ。
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死刑囚が望む最後の一服、幼女による告発に翻弄される男、という2つの要素が思わぬ方向へ進展し交錯する。 現代社会のに潜む危険性を描いたちょっとブラックな小説。
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私たちが今暮らしている社会の情勢、あるいはちょっと先の未来の社会の方向性ーそれらを、ほんの少し誇張して描くだけで、こんなにも不快な社会が出現することに驚く。 行過ぎた排斥や愛護は、不寛容さを生む。その対象となる物事がどんなにケチのつけようがないものであろうとも。 そして、その...
私たちが今暮らしている社会の情勢、あるいはちょっと先の未来の社会の方向性ーそれらを、ほんの少し誇張して描くだけで、こんなにも不快な社会が出現することに驚く。 行過ぎた排斥や愛護は、不寛容さを生む。その対象となる物事がどんなにケチのつけようがないものであろうとも。 そして、そのどちらにも傾きやすい、煽られやすい人の心・・・ 何ともビターな味わいの小説である。 La Petite Fille et la Cigarette by Benoit Duteurtre **************************** 「これがいいことだというのが一つあって、それにみんなが賛同すべきだという考え方をやめるように努力することが、集団としても個人としても大切だと思います」(『加藤周一 戦後を語る』)(12月1日付け朝日新聞朝刊より)
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社会の中で生きて行くには、できるだけ過半数の意見に賛成した方が良い。譬え自分の考えと違っていたとしても。輪をはみ出したものは、おかしな人というレッテルを貼られてしまう。度を過ぎれば反社会的要素として見なされる。もし、自分が少しでも変わった人間だと思ったら、甘んじて過半数になること...
社会の中で生きて行くには、できるだけ過半数の意見に賛成した方が良い。譬え自分の考えと違っていたとしても。輪をはみ出したものは、おかしな人というレッテルを貼られてしまう。度を過ぎれば反社会的要素として見なされる。もし、自分が少しでも変わった人間だと思ったら、甘んじて過半数になることをおすすめしたい。 社会の中で尊重されるのは、弱者であるべきだ。子ども、老人、女性、障害者・・・。差別的に聞こえるが、誰もが子どもには優しく接するのは普通と考えているだろうし、レディーファーストは常識とされている。しかし、子どもと女性の意見だけが正しいのだろうか。誰もが子ども時代のみずみずしい記憶を、あこがれの中に留める。その時代に戻りたいと思う。しかし、酒も煙草も無い時代。性の体験も金銭感覚も曖昧な時代。本当にそんな時代に、大人は戻っていけるのか。無理だろう、しかし、戻れなくとも、尊重はできる。子どもの時代こそ美しいものに。では、子どもが嫌いな人はどうしよう。伴侶はいるものの、子どもなんて作りたくない。子どもに道を譲るなんてまっぴらだが、まわりからは冷血漢扱いされる。煙草なんて、害を及ぼすものは吸ってはならない。一体どうする。自分の趣向が、ことごとく反社会的になってしまったら。 確かに極端な話ではある。実際、ここまで過度な子どもびいきの社会には成らないだろう。それでも、この本を女性(特に母親)が読んだときの感想はどうだろう。いつか現実の世界が、このような小説の世界に踏み込んでしまう可能性も、無くはない。そんな不安もかき立てる。
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禁煙の刑務所で、最後のタバコを求めた死刑囚。 禁煙の市庁舎で喫煙を少女に見られてしまった職員。 2人の人生はおかしなところで交錯する。 禁煙厳しいフランス情勢と、子供に対して甘い社会への痛烈な批判。 ニヤリとしてしまう描写の宝庫です。 登場人物の飼い犬のサルコだったのがなんとも...
禁煙の刑務所で、最後のタバコを求めた死刑囚。 禁煙の市庁舎で喫煙を少女に見られてしまった職員。 2人の人生はおかしなところで交錯する。 禁煙厳しいフランス情勢と、子供に対して甘い社会への痛烈な批判。 ニヤリとしてしまう描写の宝庫です。 登場人物の飼い犬のサルコだったのがなんともいえない。
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これは…とても後味の悪い話でした。ものすごく気が重たくなって終わってしまった。まさかこんな内容だとは思っていなかったので。 「死刑を目前に控えた囚人は、最後の一服を要求した。しかし、刑務所の所長は完全禁煙の規則を盾にそれを拒否。事態は、煙草社会、法曹界、政治家を巻き込んで、奇...
これは…とても後味の悪い話でした。ものすごく気が重たくなって終わってしまった。まさかこんな内容だとは思っていなかったので。 「死刑を目前に控えた囚人は、最後の一服を要求した。しかし、刑務所の所長は完全禁煙の規則を盾にそれを拒否。事態は、煙草社会、法曹界、政治家を巻き込んで、奇妙な混乱へと陥っていく……。はたして、囚人は最後の一服を許されるのか? 一方、禁煙の市庁舎のトイレで煙草をくゆらせていた職員は、幼い女の子に現場を発見される。威嚇して追い払ったものの、職員には告発の手が伸びる。 やがて、囚人と職員の人生は、皮肉な形で交差する―注目の作家が放つブラック・コメディ。」 カバーより引用 ものすごく風刺が効いていておもしろいとは思ったのですが、展開が苦手でした。 最後に煙草を吸うことを要求した死刑囚の話は好きなんだけど、その後に続く職員が…! 子供は好きだけど、こんな社会は嫌だとしみじみ思いました。
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