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通訳ダニエル・シュタイン(下) の商品レビュー

4.4

9件のお客様レビュー

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2024/05/30

ビルダとダニエルとのシナイでの旅で「歴史ではなく地理なのだ」と言ったところで、前に読んだ『地図と拳』を思い浮かべていた。

Posted byブクログ

2021/01/09

決して漫然と読んでいたことはないのに、かなりの時間と精神力を要した。でも今年1番の本になるかもしれない。N委が・・と具体的に言えない、それが知の遺産か。 半ばフィクション、半ば実在の人物描写は無理解の溝への橋渡しをした人間の物語として語り継がれて行くだろう。この役者も大したエネ...

決して漫然と読んでいたことはないのに、かなりの時間と精神力を要した。でも今年1番の本になるかもしれない。N委が・・と具体的に言えない、それが知の遺産か。 半ばフィクション、半ば実在の人物描写は無理解の溝への橋渡しをした人間の物語として語り継がれて行くだろう。この役者も大したエネルギーを要したと感服の極み。ポーランドの日常言葉遣いの訳出に骨が折れたとあるが。 手紙・新聞記事・書簡・録音記録が情感より増えている。ドキュメント形式をプレゼンすることで多元主義的な社会において「その人物」が為した役割を任じて貰う様考えたのであろう。そして登場人物は更にフィールドを広げ、80歳を過ぎて にこやかにプロポーズするナフタリじいちゃん、ナチス将校、過去に流血の主人公となった末裔、42歳の初産でダウン症の子を出産する修道女やら多彩。 実際は病死であったブラザーは書簡では自動車事故死として述べられているが死の後にその教義の在り様を激しく糾弾するキリスト教の修道会総長の手紙を見ても「穏やかな人柄そのままに、万人の賛意を得ていた」とは非常に考えにくい。だが歩みを進めた彼の業績は語り継がれて行くと信ずる。 真理が一元的かつ主観が軸となっている事へのアンチテーゼとしての筆者の考えは功をなしている。

Posted byブクログ

2020/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2020年11月27日 上下巻再読了。 本書は年代順に書かれておらず、 初読はそれでかなり苦労したので 再読時はまずざっと目を通して 年表を作ってから読み始めた。 著者は1992年に実在のルフェイセンと会い 魅了され、資料を読みインタビューを重ね イスラエルを何度も訪問したものの ノンフィクションではなく「半ばフィクションで 半ば実在」という手法に切り替えた。 このことについて、著者自身は、 「この本は小説ではなくコラージュ」であり 「自分の人生や他の人たちの人生から ハサミで断片を切り取り、「糊付けもせずに」 (中略)日々の切れはしから成る生きた物語」 を貼り合わせて作っている」(下巻P314より) とやや自嘲ぎみに語っている。 主人公であるダニエル・シュタイン自身の 語りは少なく、ほぼ彼と小学生との談話から 過去が明かされる。彼を取り巻く人間の書簡や 会話により彼やその語る人物の状況が描かれている。 こういった手法のためか、ダニエルよりも 周囲の人物のほうが生き生きとした人間として 描かれている。その主な人物はエヴァとヒルダと いう二人の女性。エヴァは戦時中に共産党一筋の 母親の元に生まれ孤児院に入れられる。一時母親に 引き取られるものの母親が生きている間は 母とはほぼ不仲であるが、年上の友人エステル により救われる。アンネフランクの本に影響を 受けたドイツ人のヒルダはイスラエルに渡り、 ダニエルの元で働くようになる。 イスラエルではユダヤ人キリスト教徒や アラブ人が生きていくのは苦難を伴うことが 上下巻を通して書かれていて、知らないことばかりで 読み通すのは個人的にかなり大変でした。 それでも、とても読み応えのある楽しい読書時間を 過ごすことができました。

Posted byブクログ

2011/07/01

やっと読めました。決して読みにくくはないのですが、長いし、内容が濃いのでとても時間がかかってしまいました。往復書簡や会話のテープを起こしたもの、手記などの形態をとりドキュメントを読むような感覚を覚えます。出てくる人々も、舞台も多岐にわたり名前も覚えにくくて混乱しつつもWWⅡを経て...

やっと読めました。決して読みにくくはないのですが、長いし、内容が濃いのでとても時間がかかってしまいました。往復書簡や会話のテープを起こしたもの、手記などの形態をとりドキュメントを読むような感覚を覚えます。出てくる人々も、舞台も多岐にわたり名前も覚えにくくて混乱しつつもWWⅡを経て数奇な運命をたどったユダヤ人D.シュタインの生き様が、時にはユーモアも交えて描かれています。 無知をさらすと、ユダヤ人=ユダヤ教信者と単純に思い込んでおり、そんな訳がないと気付かされました。日本人にはなじみにくいところがありますが、現在のイスラエル問題に通じる流れを知ることができます。 親子、同国人間などでの無理解が存在するのと同時に、宗教や性別、人種を乗り越えた間で芽生える共感についても考えさせられます。人間として共感できる、ということが様々な障壁を崩す第一歩になるのでは?と思いました。そしてD.シュタインという人はそれが出来る人だったのだろうと思います。

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2010/07/19

[ 内容 ] ある土曜日の朝4時。 ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。 テロか? まさか? 弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちてい...

[ 内容 ] ある土曜日の朝4時。 ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。 テロか? まさか? 弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた―。 名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きるすべての人に贈る、静かなる手紙。 ブッカー賞候補作、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2010/04/07

想像していたものとは違うのが正直な所感である。それは、けっして残念に思ったわけではなく物語の構成に面くらったという意味だ。様々な人物による其々の日記や書簡、会話を録音したものといったものを資料として配列されている、しかもそれらの資料が単に時系列で並べられていない、それが読み手に奥...

想像していたものとは違うのが正直な所感である。それは、けっして残念に思ったわけではなく物語の構成に面くらったという意味だ。様々な人物による其々の日記や書簡、会話を録音したものといったものを資料として配列されている、しかもそれらの資料が単に時系列で並べられていない、それが読み手に奥行きを感じさせる楽しい構成となっている。「通訳 ダニエル・シュタイン」はとても人道的で或る種の高い温度を持ち続ける奇特なユダヤ人“ダニエル・シュタイン”の物語だ、恐らく表題に「通訳」と入れたのは、解説にもあるが彼があまりにも多くの理解し合わないもの同士を理解しあえる同士へと導こうとしたからであろう。ダニエル・シュタインの思想や発言にはとても同意しかねる箇所もあったが、そういった事へ理解を示し合いたくなるのが本書であり、そういった読み手を手放さなず、包み込む魅力が本書にはある。あと、この本にはしっかりと悲惨な歴史が描かれ、読者を立ち止まらせ考えさせる用意がされている。

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2010/03/08

後半もだれない。「私たちの人生は、他でもない自分自身の内的関係によって錯綜しています。表面に現れるのはごく一部だけ。でもそれは「根源」へ近づくための代償なのだということ」

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2011/10/11

たくさんのことを学び考えさせられました。パレスチナ問題、ユダヤ教徒キリスト教、正教については知らないことがいっぱい。イエス・キリストが本当に伝えたかったことを、私たちは理解しているのでしょうか。今、私の頭の中には「イマジン」が流れています。それぞれが違う信条にあってもお互いを尊重...

たくさんのことを学び考えさせられました。パレスチナ問題、ユダヤ教徒キリスト教、正教については知らないことがいっぱい。イエス・キリストが本当に伝えたかったことを、私たちは理解しているのでしょうか。今、私の頭の中には「イマジン」が流れています。それぞれが違う信条にあってもお互いを尊重し、愛を持って接することのできる地球人になりたいと思いました。この本に出てくる土地をいつか訪ねることができたら幸いです。

Posted byブクログ

2009/11/11

アレックスとギリシャ人がかわいそうだなって思ったところもあるけど、やっぱりブラザー・ダニエルが大好きで、この本がすき。 ウリツカヤは前に「ソーネチカ」を読んだのですが、こちらの方が遥かに良いです。物語の題材やテーマのみではなく、その表現方法もすごい力量。文句なしの総合小説です、本...

アレックスとギリシャ人がかわいそうだなって思ったところもあるけど、やっぱりブラザー・ダニエルが大好きで、この本がすき。 ウリツカヤは前に「ソーネチカ」を読んだのですが、こちらの方が遥かに良いです。物語の題材やテーマのみではなく、その表現方法もすごい力量。文句なしの総合小説です、本当にすばらしいと思う。

Posted byブクログ