泰平ヨンの航星日記 の商品レビュー
変人学者の累計 “すでに常識だが、近頃の学者は書斎派と逍遥派にわかれている。書斎派は伝統的な方法で研究を行っているのだが、逍遥派の面々は休むことなくありとあらゆる国際会議や学会に顔を出す。逍遥派の学者はバスや待合室、飛行機、ホテルのバーでも専門書を読んでいる。
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「英雄的な宇宙旅行士・泰平ヨンの膨大な航星日記を編纂した作品」という形式で展開される本書は、東欧SF界の巨星、はたまた知の巨人と評されるスタニスワフ・レムのユーモアたっぷり(シュールさ満点)の連作短篇集。 本書では計14つの日記を紹介。宇宙旅行士・泰平ヨンがビンケンバヒヤ重力渦...
「英雄的な宇宙旅行士・泰平ヨンの膨大な航星日記を編纂した作品」という形式で展開される本書は、東欧SF界の巨星、はたまた知の巨人と評されるスタニスワフ・レムのユーモアたっぷり(シュールさ満点)の連作短篇集。 本書では計14つの日記を紹介。宇宙旅行士・泰平ヨンがビンケンバヒヤ重力渦に突入した結果、時間の流れがゆがんでしまい、火曜日や木曜日、金曜日の自分が出現し、ついには、100人を超える自分とひとつの宇宙服をめぐって議論を交わす…などなど、その全ての日記は、まあとにかく奇想天外で奔放な内容ばかり。これまでに読んだレムの作品は「ソラリスの陽のもとに」と「砂漠の惑星」の2作品のみ。だからか、レムといえば生真面目な作家という印象が強かったのですが、どうやらそれは誤りのようです。読んでいて「バカSF」という言葉さえ頭を過ぎったぐらいですが、単なる「バカSF」あるいはユーモアでシュール溢れる作品に留めないのが流石のレムらしく、訳者あとがきで説明されるように、それら日記の全てにおいて深い考察の片鱗を感じられます。とりわけ、宗教がはらむ矛盾、クローンや人体改変の行き着く姿については(もちろんこれらに限らず)、バカらしい展開の裏で、鋭く不気味に見透かしているレムの影がみえるのが恐ろしい。 そんなユーモア溢れ、深い洞察を秘めた作品とはいえ、全14つの日記(約530頁)を一度に読むのは、なかなかしんどかった…ちょっとずつ読み進めるのが正解かもしれません。
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泰平ヨンという人物が時間的、空間的、思考的に旅をする文章をメタフィクション風にまとめたSF作品。元ネタとなっている知識が幅広い。さらに、本が書かれた当時の社会問題やそこへの批判の目が鋭い。初めはコメディSFのように読んでいたが、寓話的に示唆される倫理や哲学、道徳の問題に打ちのめさ...
泰平ヨンという人物が時間的、空間的、思考的に旅をする文章をメタフィクション風にまとめたSF作品。元ネタとなっている知識が幅広い。さらに、本が書かれた当時の社会問題やそこへの批判の目が鋭い。初めはコメディSFのように読んでいたが、寓話的に示唆される倫理や哲学、道徳の問題に打ちのめされてしまった。レムすごい。
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スタニスワフ・レムの作品の中では、『ソラリス』と並んで有名なのがこちらではないだろうか。 SFのありとあらゆる『お約束』的なテーマを用いつつ、コミカルなドタバタ劇を展開し、全体を俯瞰するとメタフィクション的な構造を持っている、良い意味で『何でもあり』な内容。一見するとハチャメチャ...
スタニスワフ・レムの作品の中では、『ソラリス』と並んで有名なのがこちらではないだろうか。 SFのありとあらゆる『お約束』的なテーマを用いつつ、コミカルなドタバタ劇を展開し、全体を俯瞰するとメタフィクション的な構造を持っている、良い意味で『何でもあり』な内容。一見するとハチャメチャになりそうなのに、纏まっているところが凄いw 一番有名なのは、冒頭の『第七回の旅』だろう。船内にひしめく無数の『自分』の姿は、想像するといっつも笑ってしまうw
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
伝説の宇宙飛行士、泰平ヨン。彼の航宙日誌に書き記されていたのは、何人もの「私」との遭遇に、ロボット国の顛末、空飛ぶジャガイモを巡る騒動に果ては宇宙創成までだった!? レムに初挑戦。大笑いしました。 お気に入りは空飛ぶジャガイモ騒動記。未確認ジャガイモ様物体の存在の有無を巡り、ああだこうだと様々な論点の論理・議論がこれでもかと出す人々と、それに実際のジャガイモを捕まえてくることで議論に蹴りをつける教授との対照がいい。机上の空論だけではいかな論理といえども無力だなあ、と思いました。
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宇宙を旅する泰平ヨンの奇想天外な冒険を集めた連作短篇集。 冒頭から「序文」でのお遊びにニヤニヤ。軽妙な語り口のホラ話のなかに詰め込まれた、哲学・宗教・歴史・科学に対する考察やアイロニーにも圧倒される。 「ドラえもんだらけ」風味の「第七回の旅」、水棲人の「第十三回の旅」、宗教ネタ...
宇宙を旅する泰平ヨンの奇想天外な冒険を集めた連作短篇集。 冒頭から「序文」でのお遊びにニヤニヤ。軽妙な語り口のホラ話のなかに詰め込まれた、哲学・宗教・歴史・科学に対する考察やアイロニーにも圧倒される。 「ドラえもんだらけ」風味の「第七回の旅」、水棲人の「第十三回の旅」、宗教ネタの「第二十一回の旅」と「第二十二回の旅」、じゃがいも論争の「第二十五回の旅」、メタフィクションぽい「第二十八回の旅」あたりがお気に入り。
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泰平ヨンの航星日誌という形でつづられた14篇の短篇集。序文以降はどこから読んでも読めるつくりになっているが、最後の「第二十八回の旅」で今までの日誌をひっくり返すような展開があるので、最初と最後は順番通りに読ん打ほうが良い。 解説で一篇一篇のテーマみたいな解説があって、それを読むと...
泰平ヨンの航星日誌という形でつづられた14篇の短篇集。序文以降はどこから読んでも読めるつくりになっているが、最後の「第二十八回の旅」で今までの日誌をひっくり返すような展開があるので、最初と最後は順番通りに読ん打ほうが良い。 解説で一篇一篇のテーマみたいな解説があって、それを読むとまあ、納得できるようなことばかりなんだけど、それはそれとしてやっぱりこの人は高度なレベルでふざけられるところがすごいんだな。読み終わると何か解説されているテーマみたいなものもみえてくるけれど、読んでいる間思うことは「ふざけてんなあ」だもの。圧倒的な知識や技術がなければこうは出来ない。
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前回の版では、ほら男爵の話というトーンが強く、「小生」、「我輩」といったわざと大時代的表現にしたところが多くて、少し鼻白んだのでしたが、今回の改訳版でクールな表現に抑えられ、なかなかいい感じに。訳だけでなく、新たな序文が付け加えられており、日記の抜粋という体裁から、タラントガ教授...
前回の版では、ほら男爵の話というトーンが強く、「小生」、「我輩」といったわざと大時代的表現にしたところが多くて、少し鼻白んだのでしたが、今回の改訳版でクールな表現に抑えられ、なかなかいい感じに。訳だけでなく、新たな序文が付け加えられており、日記の抜粋という体裁から、タラントガ教授による日記の研究報告書とい体裁に変わったのです。う〜ん、さすがレム。まったく別の印象になってしまうとは・・・ユーモラスな感じは残っているのですが、19世紀調馬鹿話というよりは、クールな「銀河ヒッチハイクガイド」に近い感じです。抑えたな文体になっているので、逆に途中で吹き出してしまうほどのおかしさが際立っています。中にはまったくおかしくない話もありますが、そこはレム。宗教の矛盾から機械知性、クローン、進化論といった様々なテーマを不気味ともいえる寓話で語っていく、その独特の視点がたまりません。
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