中流社会を捨てた国 の商品レビュー
よその国についてその社会に飛び込もせず本だけ読んで知ろうなんて我ながら虫がいい…と思いながら、斜め読みしていたが。 冒頭は『ファイナンシャル・タイムズ』紙の土曜版に付いてくるゴージャスな付録カタログについての記述。でも本当にお金持ちって、土曜の朝からこういうの見て「あら、コレいい...
よその国についてその社会に飛び込もせず本だけ読んで知ろうなんて我ながら虫がいい…と思いながら、斜め読みしていたが。 冒頭は『ファイナンシャル・タイムズ』紙の土曜版に付いてくるゴージャスな付録カタログについての記述。でも本当にお金持ちって、土曜の朝からこういうの見て「あら、コレいいわね」ってポチッとしたりするの??実際には購買力のない層か眺める用だったりはしないのかなあ。 「第5章 相続されていく貧困」が衝撃的だった。 世代を超えて引き継がれていく貧困。困窮家庭への公的支援って、少なくとも私は、小中学生が対象だと漫然と思っていた。ところが幼児教育の専門家による調査では、既に3歳の時点で一定ラインに到達していない場合、学校教育は「砂上の楼閣」になってしまうという。じっと座っている、ある程度の集中力を持つ、ルールを守る、人の話を聞く…確かに読み書きそろばん以前の話だ。「幼児教育」ってお受験のことじゃないの…と思う私は、平和日本の恩恵に知らず預かっているのだな。
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「プーチン最後の聖戦」でグリーンスパンの回顧録が出てきており、それで検索をかけたらイギリスの経済の本が関連本として出てきた(市場原理主義の害毒)。そこから、そう言えばイギリスってどうなんだっけ?と思って関連本をamazon検索してたら出てきた。
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第5章「相続されていく貧困」で示された内容が、特に興味深い。 アメリカの研究によれば、子どもがどんな社会階層に属することになるか、そしてどんな人生を歩むかは、幼少期にどんな言葉で話しかけられていたかと密接な関係があるという。 つまりこういうことだ。言葉は思考の基本ツールであり、複...
第5章「相続されていく貧困」で示された内容が、特に興味深い。 アメリカの研究によれば、子どもがどんな社会階層に属することになるか、そしてどんな人生を歩むかは、幼少期にどんな言葉で話しかけられていたかと密接な関係があるという。 つまりこういうことだ。言葉は思考の基本ツールであり、複雑な世界を理解するための基本的な道具である。そして人間は脳を成長させる生後2,3歳までの間に、言葉や、言葉の包含するあらゆる概念、感情、豊かな文化を吸収する。 なので(ここからが驚きだが)このわずか2,3年の間に親などから愛情を注がれ、きちんとほめられ、物事の理由を説明された子どもと、言葉を親からあまりかけられず、かけられても叱責など否定的な言葉が多くを占める子どもとの脳の成長を比較すると、明らかな差が見られたという。 さらに驚くべきなのは、追跡調査によると、その差はのちの学校教育では埋まることはなく、つまり学校に入ってからいくら挽回しようとしても手遅れであると考えられるということである。 これには自分の周りでも思い当たらないわけでもない。 ベビーカーの子どもと目も合わせず、ひたすら携帯電話の画面ばかり見ている親。公共の場所で子どもが泣きわめいても知らんふりを決め込み、視線を感じたら「周りの迷惑でしょ。やめなさい」とか勘違いしてキレてる親。経験上誰もがわかるはず。「親自身がたぶん愛情を受けないで成長した可哀想な人間なんだろうけど、その子どもの将来もロクなものにならないだろう・・」 子どもの生活能力は、親の所得や経済力によって、まるで相続されるように引き継がれる、という話自体はよく聞くが、だからって、例えば上記のバカ親に仮に1000万円を「子どもの成長のために」とポンと手渡しても、子の成長結果はおそらく変わらないと思う。 つまり、貧困相続の原因は親の所得にあるのではなく、親の人間としてのバックボーンにあると思う。実際、野口英世の親は貧しかったが、英世の業績は親の貧乏や無学に関係ない結果だったというのは誰もが知る通り。上記の「子どもの生活能力は親の経済力によって相続みたいに」云々ってのを鬼の首をとったかのように持ち出す人をよく見聞きするけど、野口英世の例で見ればわかるように、一慨に言えないってことがわかるでしょ? 私が言いたいのは、親の低い生活能力が子へ相続される原因が、親の所得などの経済的問題だけじゃなく、社会的文化的背景などもっと根が深くて複雑なものに起因するんじゃないかってこと。 この本はイギリス政権への政策提言的な色が濃いため、貧困層の固定化問題でも様々な制度改革案が書かれているが、それを読むと「子ども手当」みたいなバラマキ政策は、コストが十分な効果につながるとは限らず、一番してはいけないってことだけは、わかった。 (2011/7/16)
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英国における格差社会について書かれている。しかし、まるごと現代の日本にも当てはまる話で、どういった対策が効果があったかなど参考になる。教育、環境、仕事・・・貧困層に落とされる罠はそこかしこにあるのに、這い上がるのが難しいのはどこの国も一緒か。
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人々の間にある経済格差を隊列に喩えている。先頭はスーパーリッチ、末端は貧困層だ。末端からでも先頭が見える状態が一体感のある社会ということだ。 著者はブレアの第三の道を「富裕層にやさしい左派」と皮肉る。 この本が興味深いのは富裕層が社会に拡がる格差について無知で無関心である点...
人々の間にある経済格差を隊列に喩えている。先頭はスーパーリッチ、末端は貧困層だ。末端からでも先頭が見える状態が一体感のある社会ということだ。 著者はブレアの第三の道を「富裕層にやさしい左派」と皮肉る。 この本が興味深いのは富裕層が社会に拡がる格差について無知で無関心である点を明らかにしているところ。富裕層は自らを実際の水準より低い所得階層に位置づけ、低賃金労働者の生活水準を高く見積もりがちだそうだ。 日本ではどうだろうか。イギリスと同様の傾向があるなら、数は少なくとも政治力が大きい富裕層に事実を認識させる努力をすべきだ。それが社会保障費の充実に世論が合意する近道ではないだろうか。 貧困層やその子供たちが全うな生活を送れるように、手厚い支援を行う実験的なプログラムがいくつか紹介されている。 教育に関しては親と地域コミュニティを巻き込むことが成功の鍵なようだ。失業者や低賃金労働者が上位の仕事に就くためには、就業の「かかりつけ医」の様な、常に権限を持つ専門家が寄り添う体制が効果的らしい。 いずれも膨大な資金が必要で完全実施には程遠い。だが、手厚い支援は長期的には医療や治安、所得保障などの社会保障費の削減につながり、支援を受けた人はGDPの拡大に貢献するという。 長期的な視野での政府投資とモニタリングが課題だろう。 日本では財源が曖昧だがイギリスでは課税などにより財源をちゃんと確保してから実行されているようだ。 「具体的な政策」とは本書に書かれているような徴税と税金の使途だと思う。日本にもかなりの部分で当てはまるのではないだろうか。
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