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通訳ダニエル・シュタイン(上) の商品レビュー

4.2

15件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2022/11/29

書法に慣れるまで,いくらか分かりにくかったが、にもかかわらずぐいぐい引き込まれる。 見事につながっていく。

Posted byブクログ

2021/01/02

イスラエルという社会と彼を取り巻く人物像を豊富な書簡で多彩に描き出している。 読みこなすには骨が折れ、かなりのメモを取りながら、「知的好奇心にあふれた」豊潤な時間を味わえた。 ゲットーからパレスチナ、そしてイスラエル・・彼を取り巻いてきたであろう差別と壁がどういうものだったか直...

イスラエルという社会と彼を取り巻く人物像を豊富な書簡で多彩に描き出している。 読みこなすには骨が折れ、かなりのメモを取りながら、「知的好奇心にあふれた」豊潤な時間を味わえた。 ゲットーからパレスチナ、そしてイスラエル・・彼を取り巻いてきたであろう差別と壁がどういうものだったか直截的に彼の言葉では伝わってこないが 彼を取り巻く女性たち、母娘、夫婦の言葉で浮かび上がってくる。時系列のばらつきは正直、しんどかったけど。 私の評価としてはこの作品はノーベル賞レベルの崇高なメッセージで網羅されている。ダニエルの人懐こくユーモアのある人間性は読んでいて楽しい。 欧州で宗教と生活・人生は切り離せないことがよく解る。その歴史をすべて理解することは膨大な時間と勉強が必要かと感じる。 聖職者としてのシュタインは時には差別も受けるが「他民族を理解できるのか。人間性を失わずにすむか」が常に手探りの場での指針。 二十一世紀の課題でもある問いを投げかけているこの本は今年の初頭を飾るには最高の読書だった。

Posted byブクログ

2020/12/20

ユダヤ、イスラム、キリスト教に関する込み入った問題が描かれる作品。舞台はポーランドやイスラエルであまりロシアに軸がある訳ではない。ユダヤ人でありながらゲシュタポの通訳として働くダニエル・シュタインが、事態が悪くなって命からがら逃げ去るシーンが印象的。「いったいどこに神の公正さがあ...

ユダヤ、イスラム、キリスト教に関する込み入った問題が描かれる作品。舞台はポーランドやイスラエルであまりロシアに軸がある訳ではない。ユダヤ人でありながらゲシュタポの通訳として働くダニエル・シュタインが、事態が悪くなって命からがら逃げ去るシーンが印象的。「いったいどこに神の公正さがあるのでしょうか?」という主人公の嘆きは大変ロシア文学的だと感じた。下巻が楽しみ。

Posted byブクログ

2020/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

実在の人物をモデルにした書簡体小説。 冒頭は母親がゲットーから脱走した後に 生まれたエヴァ・マヌキャンから始まる。 彼女の友人となったエステルの夫イサーク の手記にダニエル・シュタインの名が あり、そこから彼の物語が語られる。 イスラエルという土地の複雑さが詳しく 語られている小説を初めて読みました。 とりあえず下巻に進みます。 2020年11月27日再読 レビューは下巻に

Posted byブクログ

2015/10/11

ポーランドに生まれたユダヤ人、ダニエル・シュタインの半生を、本人やその周辺の人たちの手紙を通して描く。 そしてダニエルの半生から描き出されるのは、 『相互不理解とそれを認める努力』の物語。 ダニエルはユダヤ人でありながら、戦時中の体験がもとでカトリックの司祭となり、そしてイスラ...

ポーランドに生まれたユダヤ人、ダニエル・シュタインの半生を、本人やその周辺の人たちの手紙を通して描く。 そしてダニエルの半生から描き出されるのは、 『相互不理解とそれを認める努力』の物語。 ダニエルはユダヤ人でありながら、戦時中の体験がもとでカトリックの司祭となり、そしてイスラエルに移住し教区を持つという非常に複雑なアイデンティティを持った人物。 また、イスラエルという国自体もユダヤ人とアラブ人、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が入り交じる複雑なアイデンティティと、簡単に割り切れない歴史を持った国だ。 ダニエルの周囲には、その一生を通して、異質な価値観や文化をもった人間が多数ひしめき合ってきた。 宗教や国籍といった大きな話だけでない。 本書には、親子や夫婦間の相互不理解に苦しむ人たちもたくさん登場する。 彼らは社会の最小単位である家族内ですら、異なる価値観が原因で相手を理解できず、時に傷つけあう。 カトリックも正教もユダヤも関係なく、唯一の神に祈る、共通の祈りの場を作りたい。 その一心で活動を続けるダニエルの元に、そういった難しい生立ちの人たちが惹きつけられる。中にはダニエルの影響を受け身近な人との不和を乗り越える人もいれば、あるいはダニエルに反発を覚え離れていく人もいる。 ダニエルの活動の全てが報われるほど現実は甘くはない。 でも、相互理解の社会を目指すダニエルは、人々に対する希望と期待に満ちており、その明るくどこかユーモラスな性格が相俟って、軽やかな気分で読了できる。 本書のタイトルは「通訳ダニエル・シュタイン」である。 しかしダニエル本人が実際に「通訳」を生業としていたのはほんの一時期であり、人生の大半を「聖職者」として生きた。 にも関わらずタイトルを「通訳」としたところに、著者の万感の思いが込められているようだ。

Posted byブクログ

2012/10/24

上巻の印象から言えば、パウロ・コエーリョと同じ匂いがしてとても苦手。実在のユダヤ人の、ホロコーストを生き残って、他人に手を差し伸べ続けたカトリックの修道僧の話なので、神や宗教について、ユダヤの視点が書かれていてはっとする。私はパレスチナ問題について色々思うところがあるから。こうい...

上巻の印象から言えば、パウロ・コエーリョと同じ匂いがしてとても苦手。実在のユダヤ人の、ホロコーストを生き残って、他人に手を差し伸べ続けたカトリックの修道僧の話なので、神や宗教について、ユダヤの視点が書かれていてはっとする。私はパレスチナ問題について色々思うところがあるから。こういう本を好んで手に取っているわけでなくて、西欧では、宗教と生活は切り離して考えられない。それを肌で感じる。

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2012/03/05

<ナチズムの東欧からイスラエルへ渡ったユダヤ人カトリック神父。寛容と共存に生きた奇跡の生涯。> なぜ人は争いあうのか? 人種、性、政治信条・・・・この世界には数限りない人を分断するものが溢れています。 なかでも宗教は、たくさんの救いをもたらすと同時に、たくさんの血を求めてきた...

<ナチズムの東欧からイスラエルへ渡ったユダヤ人カトリック神父。寛容と共存に生きた奇跡の生涯。> なぜ人は争いあうのか? 人種、性、政治信条・・・・この世界には数限りない人を分断するものが溢れています。 なかでも宗教は、たくさんの救いをもたらすと同時に、たくさんの血を求めてきた。 同じ“唯一神”を崇めながら反目しあうイスラム、ユダヤ、キリスト。 (「ユダヤ人はアラブ人が滅ぶよう祈り、アラブ人はユダヤ人が滅ぶように祈ってるんだ。  しかも同じ神様に。神様はいったいどうしたらいいんだい?」 本文中より) そしてそのキリストの中でもカトリックがあり、プロテスタントがあり、東方正教等多くの諸派がある。 そんな不寛容と差別、無理解で満ちた世界に一筋の光を放ったのが神父ダニエル・シュタインです。 実在の人物(!)オスヴェルト・ルフェイセンをモデルに描かれ彼は、 ただただ誠実に、そして飄々と宗教や人種の垣根を越えていく。 彼は言います。 同じ人間だ。色々なものを削ぎ落としたその核が、同じならよいじゃないか、 神への道は一つではなく、多様にあり、各々が各々の道で神への道を歩めばよいじゃないか。 ホロコースト、コミュニズム、パレスチナ、イスラエル、そして教会権威・・・ たくさんの壁を乗り越え、自分の道を貫いたダニエル、 宗教・人種の橋渡しとなった彼はまさに「通訳」です。 作者自身が作中、こんなことを述べています。 「(この物語は)いつも通り、売れないものになるでしょう。 それはおそらく、この至上主義の時代に作家が出来る最高の贅沢です」 確かに手紙と資料で成り立ち、時系列や登場人物がバラバラなこの物語は多元的・重層的で難解。 (訳者あとがき曰く、「まさに世界の多様性を表現しているような」) しかしだからといって、この物語の読む価値を認めないことには決してならない。 ノーベル賞をあげててでも世界中の人に読んで欲しい。

Posted byブクログ

2011/09/07

東京新聞書評より [評者]稲葉 真弓(作家) ■ユダヤの混沌と哀しみの声  六百万人の犠牲者を出したナチスによるユダヤ人虐殺は、二十世紀最大の悲劇のひとつだ。しかし、奇跡がなかったわけではない。本書は、ゲシュタポの通訳をしつつゲットーから同胞ユダヤ人を脱出させ、戦後、カトリッ...

東京新聞書評より [評者]稲葉 真弓(作家) ■ユダヤの混沌と哀しみの声  六百万人の犠牲者を出したナチスによるユダヤ人虐殺は、二十世紀最大の悲劇のひとつだ。しかし、奇跡がなかったわけではない。本書は、ゲシュタポの通訳をしつつゲットーから同胞ユダヤ人を脱出させ、戦後、カトリック神父となってイスラエルに渡ったダニエル・シュタインの生涯を、モンタージュ形式で綴(つづ)った大作。実在の人物オスヴァルト・ルフェイセン=「ブラザー・ダニエル」がモデルだそうだ。  五部構成の本書は、彼の青春時代より、イスラエル時代に重きを置いているが、それは故郷イスラエルを追われたユダヤ人の混沌(こんとん)の歴史、かの地における民族宗教の複雑さを語るために必要な分量だったのだろう。  アラブ人キリスト教、ユダヤ人キリスト教、ロシア正教、その他小さな宗派がそれぞれの教義を擁し、反発しあう複雑な世界で、宗派・民族を超えた「理解と寛容」の手を差し伸べる彼は、ある人々には聖職者、ときには異端者とみなされる。「どうしたら他民族を理解できるのか。人間性を失わずにすむか」。二十一世紀の課題でもある問いを問い続けた彼のすべてを見逃すまいと、作者が選んだ本書の構成は、じつに緻密(ちみつ)で多層的だ。  なんと多くの「声」が満ち満ちていることか。ゲットーを脱出、後に抵抗運動の士となったユダヤ人女性リタ・コヴァチ、その娘のエヴァ・マヌキャン、同じくゲットーでの虐殺を免れた医師ハントマン夫妻、ドイツ人の犯した歴史的責任を贖罪(しょくざい)するためダニエルの教会で働くヒルダ・エンゲルなど。彼らが互いにやりとりする書簡や日記、手記、談話などから静かに力強くあぶり出されてくるダニエル像…。  語り部(声)である人々の「ユダヤ的個人史」が本書の魅力である。その無数の「個人史」が、差別・迫害を受け続けたユダヤ民族の哀(かな)しみと、いまも世界にはびこる民族紛争、排他主義の虚(むな)しさを伝えてくる。

Posted byブクログ

2010/07/19

[ 内容 ] ある土曜日の朝4時。 ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。 テロか? まさか? 弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちてい...

[ 内容 ] ある土曜日の朝4時。 ふと目が覚めた脳神経外科医ヘンリー・ペロウンは窓の外に、炎を上げながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。 テロか? まさか? 弁護士の妻、ミュージシャンの息子、詩人となった娘…充足しているかに見えるその生活は、だが一触即発の危機に満ちていた―。 名匠が優美かつ鮮やかに切り取るロンドンの一日、「あの日」を越えて生きるすべての人に贈る、静かなる手紙。 ブッカー賞候補作、ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞受賞。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

Posted byブクログ

2010/03/08

構成が新鮮。登場人物も魅力的。「脳の練磨を生きる意味とし、常に思考を発展させようと努力すること」をアイデンティティの核心として「外の世界の移り変わる法を受け入れつつ、自分の内に秘めた、揺るぐことのない掟に従って生きて」ゆきたい。

Posted byブクログ